現在地 HOME > 掲示板 > 地域8 > 187.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
香川県の豊島(てしま)であれほど産業廃棄物の不法投棄が社会問題になったのに、いまも同じようなことが続いていた。
岐阜市で、「善商」という処理業者が廃棄物処理法違反の疑いで岐阜県警の捜索を受けた。97年ごろから建設廃材など約50万立方メートルを社有地の谷に無許可で捨てていた。産廃は土壌や地下水を汚染する心配があるため、社有地でも勝手に捨てることはできない。投棄量は豊島に並び、東京ドームを4割も埋めるほどだ。
不思議なのは、業者を監視する立場の岐阜市がなぜここまで放置してきたのかということだ。
「木くずが沢を汚している」といった住民からの苦情がしばしば市に寄せられていた。市はそのつど立ち入り調査をしたが、木くずの一部を撤去させただけだ。その間に産廃は谷を埋め、巨大な山を築いていた。
業者は産廃の山を「建設作業で出た残土」と弁明していた。たしかに表面は土で覆われていた。だが、少しでも土を掘ってみれば、残土か産廃かはすぐに分かるはずだ。市が見て見ぬふりをしていた、といわれても仕方があるまい。
不法投棄と言うと、家庭や事業所から出たごみをこっそり山中に捨てると思いがちだが、大がかりなのは処理業者が社有地で堂々と捨てることが多い。「残土」や「一時保管」という業者の言い分をうのみにせず、不法投棄かどうかはあくまで実態を見て判断する。それが豊島など過去の事件の教えるところだ。岐阜市が知らないはずはない。
一部の職員は不法投棄を疑っていたが、政治家の影を感じ、指導を尻込みしていたようだ。業者は自民党に政治献金をするなど政治家とのつながりが深いといわれていた。市議からは調査を牽制(けんせい)するような電話も担当課に入っていた。
職員の苦労はわからないわけではない。「業者の威圧的な態度が怖かった」と語る職員もいる。
だが、だからといって不正を見逃すことは許されない。不法投棄は犯罪である。警察に相談し、連携すべきだ。警察に告発する道もある。自治体は毅然(きぜん)とした姿勢で臨んでほしい。及び腰であたれば住民が被害に苦しむだけでなく、後始末に膨大な労力と費用を要する。
廃棄物を撤去するには、豊島では約500億円、そのあとに起きた岩手・青森県境の不法投棄では約650億円もかかる見通しだ。業者に負担能力が乏しく、大半は税金でまかなわざるをえない。
だが、いつまでも税金を投入するわけにはいかない。00年の法改正で廃棄物を出した側の責任を厳しく問うことができるようになった。今回、環境省は排出した企業を突き止め、費用を負担させる方針だ。当然である。
悪質な処理業者に頼めば、あとで高いつけを払うことになる。排出企業にそう自覚させることが、不法投棄をなくすことにつながる。