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『宮大工先年の知恵』(松浦昭次著、祥伝社)は現場の宮大工さんが書いた本であり、内容も大変平易であるが、大きな感銘を受けた。近年、江戸文化の見直しが行われているが、著者によると中世の社寺建築は江戸時代のそれよりはるかに優れているという。新しい発見であった。
本書は様々な視点を提供してくれるが、中でも印象に残っているのは、筋交を使わない土壁の方が耐震性があるのではないかという著者の指摘であった。筋交い建築とは、がっちりと動かないように補強してゆく「固定する思想」のようである。浅はかな知恵で何もかも固定しても、大地震の前にはもろくも崩れ去る。
私たちの生活空間も固定され尽くされてしまった観がある。街路を見よ。町並みを見よ。都会のビル群を見よ。私たちの生活空間を見よ。言論の世界ではしなやかな思考、等々、さかんに言われるが、私たちの祖先が知恵の限りを尽くして築きあげた木の文化、固定しない空間の文化ははすっかり失われてしまった。
国宝級木造建築の保存も大切ではあるが、「固定しない木の文化」を私たちの生活空間に取り戻すべきではないか。著者はこのようには書いてはいないが、私はこのようなメメッセージを本書から受け取った。