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(回答先: サプライヤーへの権限移管を強める欧州のモジュール開発 池田 正 PDF 投稿者 hou 日時 2004 年 7 月 18 日 08:35:06)
http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link84.html
部品メーカーの再編成とモジュール化
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部品メーカーの再編成
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部品メーカーは完成車メーカーの海外進出のあとを追うようにして世界各地に工場を建設し、現地生産をはじめており、国境を越え、系列を超えて、さまざまなメーカーに製品を納入しだしている。
GMの一部門として部品を生産してきた世界最大の部品メーカー、デルファイ・オートモーティブ・システムは、次々と世界各地に生産拠点を設立してきたが、1999年5月、GMからスピンオフして独立した。
1997年9月、部品事業部を切り離して、世界第二位の部品メーカー、ビステオン社を誕生させた。これに次ぐ部品メーカーであるドイツのボッシュ、日本のデンソーも、同様の動きを強めている。親会社の一部門では、他社に製品を売り込むさいに支障をきたすおそれがあり、部品メーカーとして独立することで、広く世界のメーカーに売り込み、生産を拡大していこうとしている。(51ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
デルファイのJ・T・バッテンバーグ社長は、全体の売上に占めるGM以外の比率を50パーセント以上に引き上げるとする目標を揚げているが、2001年上半期現在で32パーセントにとどまっている。
また、同社では、部品の市場シェアーが業界で1位か2位でない部門は次々と売却し、1988年に300あった製品グループを、9年間で167にまで絞り込んだ。バッテンバーグは、「付加価値の高い有望商品に集中させる」と言いきっている。(269ページトヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
GMは旧“ビッグ3”の中でも部品の内製率が最も高く、70パーセントにも達して、コスト高を招いていた。その改善策として、最適調達を積極的に進め、アウトソーシングの方針を大々的に打ち出した。このため、すでに非中核部門となる事業部門の売却総額は40億ドル以上にのぼっている。これと同時に、納入する部品メーカーの絞り込みも進めている。(245〜246ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
フォードでも部品メーカーを10分の1以下に絞り込んだ。クライスラーも従来は600社にのぼっていた部品メーカーを「ネオン」プロジェクトでは140社に絞り込んだ。
ちなみに最近の内製率はGMが約50パーセント、フォードが40パーセント、クライスラーが日本と同じく20パーセントといわれている。これらの数字はさらに低くなるだろう。(246ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
部品のモジュール化とともに、欧米の部品会社を中心にM&A(合併・買収)が進んでいる。同時に欧州と米国において部品会社のグローバル化が進んでいる。
1996年9月、イギリスのルーカス・インダストリーとアメリカのバリティという世界大手自動車部品メーカー同士が合併した。両者合わせた売上高は約9000億円となり、これまでにない国境を越えた歴史的な合併劇として大きな波紋を呼んだ。グローバル時代の最適調達、モジュール化が進む中で、集約と再編の時代を迎えた自動車部品業界を象徴する出来事だった。(256ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
つい4、5年前まで、日本の大手自動車部品メーカーは、外資系との大々的な合併を経験したことがなかった。
ところが、1997年7月、燃料噴射装置メーカーの大手である日本のゼクセルと、自動車部品メーカーとして世界ナンバー3の規模であるドイツのロバート・ボッシュが、次世代のディーゼルエンジン用噴射装置の開発で基本設計、図面を共通化することを決めたが、それは部品業界再編のはじまりだった。
これまでにも両者はアジア戦略などで提携していたが、デンソーの追い上げに危機感を抱いたゼクセルがボッシュにもちかけて実現したものである。(256〜257ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
従来からエンジン・ミッション等の下回り部品は、サブアセンブリー部品として有名であった。最近では駆動系と制御系に分けた開発が行われつつある。制御系ではドイツの部品メーカーのボッシュがブレーキ・システムを含む部品でモジュール開発を行う目的で、日本の部品メーカー数社を買収した。 (株)ゼクセルの過半数の株式を買収した。そして、(株)ナブコのブレーキ部門と日本エービーエス(株)を自動車機器(株)に統合し、ボッシュ・ブレーキ・システムとした。
(株)ゼクセルはボッシュ・オートモーティブ・システムに名称を変更し、フランスの部品会社バレオとエアコン事業の提携を行っている。
乗用車ブレーキ分野での協業について(1999.4.23)
ゼクセル、ボッシュから一部事業を譲り受け、社名を変更(2000.5.25)
ゼクセルとヴァレオのエアコン合弁事業、新体制でスタート(2000.6.27)
同様に、スウェーデンのエアバックメーカーのオートリブは、ハンドル等を作っている泉自動車を買収し、エアバックに関するモジュール化に取り組んでいる。
日本企業でもタイヤメーカーのブリヂストンが、足回り部品を生産している曙ブレーキ、カヤバ工業等に出資して、将来のモジュール化への対応を進めている。
日産自動車のリバイバルプランにより日産自動車自身の資産や、日産自動車が保有する部品会社の株式が売りに出されている。これらの資産や株式を購入することによって、海外の部品会社の日本進出の足係りになっている。それだけでなく部品会社の系列の崩壊になり、グループ外企業の取引きが増えている。
ヴァレオは、ボッシュの子会社のゼクセルともエアコン事業で提携した。ゼクセルがアジアで展開するエアコン事業はヴァレオとの合弁に切り替え、ゼクセルの北米と欧州の同事業はヴァレオに売却した。ヴァレオは、ルノーと日産がそれぞれの小型車「クリオ(ルーテシア)」と「マーチ(マイクラ)」のプラットフォーム(車台)を共通化して生産する新型車のエアコンシステムを世界規模で一括受注することにも成功した。(78〜79ページ『ゴーンさんの下で働きたいですか』)
ジョンソン・コントロールはTOBで、池田物産の支配権のある株式を取得した。
GMの部品事業部から独立したデルフィ・オートモーティブ・システムは、世界一の自動車部品メーカーである。日本での活動を拡大させる予定で、日産自動車の持っているユニシアジェックスの株式を買取る予定である。同様にフォードの部品子会社のビステオンは、マツダの子会社のナルデックを買収した。フランスの部品会社バレオはルノー社の最大の部品供給メーカーであり、日産自動車の持っている市光工業の株式を買収するという。
日産自動車、エステックの全株式をMDI社に譲渡(2000.11.17)
日産自動車、日本プラストの株式をダルフィ・メタル社に譲渡
日産自動車、ヨロズの株式をタワーオートモーティブ社に譲渡
日産自動車、池田物産株式会社の保有株式を売却
日産自動車、等速ジョイントドライブシャフトをジーケーエヌにアウトソーシング
日産自動車、樹脂製燃料タンク生産をソルベイ社に譲渡(2000.8.2)
ジョンソンコントロールズによる池田物産の株式公開買い付けについて(2000.7.10)
一方これまで、完成車メーカーと部品メーカーとの結びつきが強い日本へはとても進出できなかった欧米の部品メーカーも、時代状況が変わり、最適調達などに対応するため、アジア地域に生産拠点をつくる動きが活発化したのである。
たとえば、プラットフォームの統合化によって部品の生産数量が1車種でこれまでの数倍の100万個規模になるため、それだけの量の部品を供給できる体制を急ぎ現地につくらねばならない。しかし、いままでの部品メーカーの生産体制ではとても対応しきれないので、巨額の投資をともなう大規模な工場の建設が急務になってくる。だが、そう簡単に現地に進出するわけにもいかず、現地の部品メーカーと提携や合併をすることで体制をととのえようとしたからである。ただちにそうしなければ、完成車メーカーの要求にこたえられず、受注競争から脱落する運命になるからだ。
それに輪をかけて、ヨーロッパの自動車メーカーは日本メーカーと比べて部品の内製率が倍以上にもなっており、50パーセントに近かった。もともと完成車メーカーは部品メーカーより賃金が高いので、内製する部品はどうしても高くなる。このため、どのメーカーも内製率を下げて外注化することでコストダウンを図ろうとした。
たとえばダイムラー・クライスラーの「スマート」は内製率がわずか6パーセントに過ぎず、外注化することで20パーセントのコストダウンに成功した。こうした部品の内製部門を売却する動きも加わって、なおさら、ヨーロッパにおける部品メーカーの再編が加速した。
ちなみに、部品メーカー同士による業界の再編や提携の件数は、ベンツとクライスラーによる完成車メーカー同士の大型合併を契機にはじまった資本提携の動きに連動して、1年おくれで急進展し、驚くほど急増した。
1998年における部品メーカーの主な再編や提携の件数は18件だったが、1999年、2000年、2001年の前半までの2年半の合計はその20倍近い350件近くにものぼったのである。(259〜260ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
A.T.カニーとミシガン州立大学の共同調査によると、今後の自動車産業の業態は次のようになると言われている。(『サプライチェン経営革命』より)
自動車メーカーは安くて売れる車を目指し、市場に向けてパワーを集中する。
市場に向けた商品企画、マーケッティング世界戦略を強める。
モノ作りは簡素化し、外部依存を高め、固定費を削減する。
この結果、システム・インテグレーターの役割が増大し、企業数も増大する。
1985年20社だったシステム・インテグレーターは、2005年には150社になる。上位25社の割合は高まる。
上位のシステム・インテグレーターは、強大な存在になり、世界中の自動車メーカーへのアプローチを強化する。
システム・インテグレーターは開発力、サプライチェーン・マネジメントなどの分野での能力拡大が求められる。
独立サプライヤーは自らの存在の再定義が必要になる。
独立サプライヤーは、強力な差別化技術により独自の分野で生き残るか、下請け・マゴ請けの立場へ格下げとなる。独立サプライヤーとして残れるのは、1985年の1120社のうち半分以下の450社であろう。
サプライチェーンの中のどの位置付けになるか、戦略的ポジショニングが重要となる。
製品および製造プロセスの高度化による差別化が生き残りの鍵となる。
システム・インテグレーターとは部品単体ではなく、機能のシステムレベルから開発・製造能力を持つ部品会社である。
1990年代初めには、部品のキャリーオーバーによるコスト低減策が主であった。しかし、新次元の原価低減は、主に部品の共通化、モジュール化、システム化を指している。この方法によって、いっきに部品単価を30%のコストダウンを進めるというものである。
「差がつく競争の最後のカギは価格」と考えるトヨタの張社長は、アライアンス戦略と、サプライヤーと一体になって、設計から販売まですべてを巻き込んで原価を低減させる「CCC(コンストラクション・オブ・コスト・コンペティティブネス)21」活動によって、価格競争を乗り切る考え。コンピュータ画面で新車の開発を進め、ネジの1つ1つまで徹底的に調べて原価を削減。 2000年7月から3年間で合計1兆円のコスト削減を目指している。(218ページ『ホンダのDNA継承術』)
また、海外からの部品輸入も増えつつある。
フォードの傘下に入ったマツダでは、最適調達の方針のもとに、海外部品の購買拡大を進めており、マツダの企業城下町では、関連企業の倒産や自動車離れが相次いでいる。(265ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
完成車メーカーのフォードなどでは、全車種に共通して使われる、たとえばシールやベアリングなどは、全社(米フォード、欧州フォード、マツダ等)一括して1社の部品メーカーに発注するグローバル・シングル・ソーシングを進めている。これによって、発注量がまとまって1品あたりの数が多くなって、数百万個の単位となり、量産効果からその分だけコストダウンができて安く購入できるので、このような発注形態は他メーカーでも進んでいる。(266ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
独立系で北米最大手のデーナ社のウッディ・モーコット会長は、「部品業界は世界全体で5−10社程度の大企業と規模の小さいメーカー群に収斂されるだろう」(日経産業新聞・1998年8月3日付)とまでいいきっている。(272ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
例えば、本田技研が中国からフィットの部品を輸入した例がある。
フィットがトヨタに与えた衝撃は、単に売れているということだけではない。トヨタはフィットが発売されると、10数台買い込み、すぐに「ゼンバラ」(解体)したという。
その結果、彼らが目を見張った点がいくつかある。まず部品の中に、いくつかの中国製があったこと。(37ページ『トヨタとホンダ』)
ほぼ同じ時期、赤字が続くヨーロッパで生産「シビック」に、インドで生産した安価な部品を供給することでより一層のコストダウンを図ることを決めた。本田は、アジアで生産された部品の「品質は日本と大差がなくなった」と判断した結果だと述べている。トヨタもフィリピン工場で生産された変速機を日本に逆輸入しており、こうした動きはますます増えようとしている。(290ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
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部品のモジュール化
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モジュール化の背景には、世界的な自動車生産能力の過剰があると言われている。このことは下記のページで述べているので、参考にしてください。
自動車会社のM&Aについて
『優秀な人材は事業機会の確保に振り向け、問題解決を行わせない』の言葉どおりに、自動車会社は今後コア・コンピタンスをより消費者に近いところに求めなければならない。言い換えれば、社内の経営資源を消費者対応により多く向けなければ生き残れなくなっている。
中・長期的課題として、自動車メーカーは次世代技術と呼ばれている環境と安全の技術に対応したクルマを開発しなければ生き残っていくことができない。環境と安全の技術開発には、多大な資金を必要としている。
短期的課題として、低価格競争の中で消費者の嗜好の変化に、短期間で対応しなくてはならなくなっている。つまり、新しい消費者の嗜好を反映したクルマを迅速に開発するという、開発期間の短縮化する必要がある。プラットフォームの統合によって、同じ部品を100万から200万個生産する量産効果によるコスト削減と、同じプラットフォームを使用したクルマが多くなる多様性のコスト増を回避する仕組みがモジュール化である。部品のモジュール化によって部品の開発時間を短縮し、部品単価を下げることができる。工場をスリム化し、生産効率を上げることができる。
最近ソニー等の電子機器産業では、全てのソニー製品を自前の生産拠点で作る必要はないと考えている。競争力の高い高付加価値製品やソニーの独自製品は中で作るが、それ以外の製品はどんどん外部に生産委託する考えになってきた。 自動車会社も同様の考えで、開発・生産活動の一部のアウトソーシングが、部品のモジュール化の本質である。つまり、部品会社の現場力と開発力を活用することである。
自動車メーカーは、次世代技術の開発と消費者対応に社内資源を集中させる。その結果、十分な社内資源を確保できない生産部門に、部品会社の経営資源を投入し、穴を埋めるのである。アウトソーシングを受ける部品メーカーにとっては、川下へ向かった前進的事業統合戦略の強化であり、フルサービス・サプライヤーと名付ける自動車会社もある。フルサービス・サプライヤーは部品会社の負担を増加させるが、自動車会社と部品会社の全体としてのコスト低減と経営基盤の強化につながる。
モジュール化には発展段階によって、組立てを主にしたモジュール化と、開発を主にしたモジュール化の2つの段階がある。
組立てを主としたモジュール化は、車体に直接取り付けていた部品を、サブアセンブリーしてから車体に取り付ける方法である。自動車工場内もしくは、近郊の工場で部品会社によるサブアセンブリーを行う。副次的効果として、生産工程の短縮、仕掛品を削減する効果がある。これによって難作業を簡素化して生産効率を上げることが主な目的である。この方法はもともとは日本の自動車会社が行って、生産性に効果のあることがわかり、欧米企業でも行われ、現在では、欧米自動車会社のほうが進んでいると言われている。このモジュール化は、相対的に安い部品会社の賃金水準を利用して、クルマの生産コストを軽減させている。
最近では、部品メーカーが、2つ以上のコンポーネントをユニットにしたシステムのかたちで完成車メーカーに納入するモジュール化が一般的になっている。部品メーカーがかなりまとまりをもったサブ・アセンブリー状況まで設計し、きちんと組み立てて検査をすませてから納入するので、完成車メーカーの手をわずらわせることが少なくなった。
このモジュール化による組み立ては、自動化率が高い、ヨーロッパの新鋭工場で最近、とくに盛んになっており、中でもフォルクスワーゲンは90年代半ばごろにはすでに実現しており、コストダウンの有力な武器となっている。もはや個々の部品レベルでのコストダウンは出尽くしているため、それらを統合化し、まとまったシステムとして外注化(アウトソーシング)することで、組み立て作業の軽減や物流、工場のレイアウトまで簡素化している。(220〜221ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
効率性と品質をキープするうえからも国内生産にこだわってきたドイツの自動車産業の人件費は世界一だけに、その分、日本よりも生産ラインのハイテク化を進めており、自動化率が高く、モジュール化を徹底させた工場、フォルクスワーゲンのホール54やホール8、ベンツの「スマート」を生産する工場などがある。また、他のヨーロッパ諸国では、フィアットのカッシーノ工場も自動化が進んでいる。(348ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
現在のモジュール化の考え方は、モジュール化を開発に適用した考えである。これは部品会社の提案力を利用して、モジュール部品を開発するものである。従来の部品会社のVE提案では、部品会社が扱っている部品に限られるため、効果も限定されていた。部品の大括化により、大きな部品の単位として考えることによって、VE提案等のコストダウンを行いやすくしたものである。
それ以上にトヨタがフィットを解体して驚いたのは、設計自体のスリム化とシームレス化だった。松本に言わせると、1つの部品で2つ、3つといった複数の機能を担わせている。これが今回のコスト削減の、究極のアイデアでもあったようだ。(38ページ『トヨタとホンダ』)
従来自動車会社の内部で行なっていた部品相互の適合性の調整を、部品会社に移すことにもなる。その場合、数社で担当していた部品を1社で取りまとめるコーディネーター企業が必要になる。
最終的には、開発から組立てまで行うものと考えられる。組立て時に不良品が出ても、生産のみならず設計まで溯って不良品対策ができ、コストパフォーマンスの良い対策を打つことができる。逆に、組立てを行うことによって、組立てやすい設計を作るのに役立つ。モジュール化の最終的な目的は、艤装部品の機械(ロボット)による自動組立てとなろう。
部品点数の削減は、バブル期に膨れ上がった部品点数を下げる目的で始められた。当時は、似た部品を共通化することに主眼が行われていた。その結果として、(魅力的)品質の低下という問題も発生した。
1990年代後半になると、計画的部品点数の削減が行われた。まず、プラットフォームを共通化するクルマを、クラス別に設定した。部品のモジュール化は同じプラットフォーム、言い換えればクルマのセグメント別に部品が作られることになる。車種によって「変化するところ」と、車種によって「変化しないところ」をきちっと分け、量産によるコスト削減をきちっと実現させ、多様性によるコスト増を回避する。設備についても同様に、車種によって「変化するところ」と、車種によって「変化しないところ」をきちっと分ける。
最近、ホンダ技研工業が新しい生産ライン構築について発表した。艤装ラインの項目では、モジュール生産を前提にした改善を行うように読むことができる。
ホンダ鈴鹿製作所 生産体質改革ラインの概要について(2000.9.26)
現在、モジュール化はドア、コックピット、フロントエンドが対象となっている。
日本企業では現在コックピットがモジュール化の対象として行われつつある。コックピットのモジュール化は欧米メーカーが進んでいると言われている。運転席前のインストラメント・パネルにメーターを始め、ステアリング・シャフト、ヒーターユニット、エアコンユニット等を組み込んでいる。
米Lear社、コックピットとルーフモジュールを展示(1999.10.22)(日経メカニカル)
カルソニックカンセイのコックピットモジュール・フロントエンドモジュール
ドアはレギュレーター等の小さな部品を多く取り付けなければならない、この取り付けを簡略化に向けた開発が行われている。ドア内側のトリムにウィンドレギュレーターとキーオープナーを取り付ける。ドアの外側のドアノブ、キーシリンダー、ドアロックを一体化させる。そして、キーオープナーとドアノブの間はワイヤーハーネスで結んでいる。これでドアの艤装の大きな省力化になっている。
大井製作所のドアモジュール
テイ・エステック、ルーフとドアのモジュールを提案(1998.5.21)(日経メカニカル)
ティエステック(旧東京シート)の天井のモジュール化では、ヘッドライニングにサンバイザー、ルームランプ等を組み込んだものである。
デンソーのフロントエンドモジュールでは、ラジエータ、電動ファン、エアコン用コンデンサ、インタークーラをフロント部の骨組み(キャリア)といっしょに一体化したものです。バンパー、へッドライトは車両組み立て工場で、デンソー製フロントエンドモジュールの上に取り付けられます。
デンソー、世界で始めてクーリングモジュルを商品化(2000.8.29)
デンソー、軽量で高性能なフロントエンドモジュールを開発(2002.6.19)
カルソニックのフロントエンドモジュール
また、世界最大のシートメーカーと言われるLear社では、シートのみならず室内の内装も一括して開発を行うことを目論んでいる。このことにより、インテリアのデザイナーの意向を直接部品メーカーが受けることになり、デザイナーの意図が直接反映でき、樹脂の微妙な色合いや艶を合わせることもできる。
リアー社のトータル・インテリア・デモカー
なお、最近ではエンジンの吸気モジュールがある。
アイシン精機、3段階可変吸気モジュールを展示(1999.10.21)(日経メカニカル)
米デルファイ、吸気・燃料統合モジュールを展示(1999.10.21)(日経メカニカル)
テネックス、実用域に近い吸気モジュールを展示(1999.10.21)(日経メカニカル)
日産自動車では2001年にも、欧米型で行われているモジュール生産方式を採用した中型セダンを日米で開始する。アメリカで生産する次期アルティマと追浜工場のブルーバード級セダンに導入する。来年4月に合併予定のカルソニックカンセイなどの部品会社を核として、工場内に数種類のサブラインを設置する予定と言われている。現在開発段階にある両車種で採用するのは、コックピット、フロントエンド、ドアなどが対象となっている模様。グローバルシングルソーシングの一環として、モジュール部品でも大半を同一サプライヤーから調達し、1ユニット当たりの量産効果を追求する予定。
日産自動車とルノーの提携で、ルノーの部品購買政策である『オプティマ計画』が有名になった。部品メーカーにとって、オプティマサプライヤーと呼ばれる中核取引きメーカーに指定されるものの、取引量拡大や長期安定受注のメリットを享受できる。つまり、部品メーカーの知恵を最大限生かし、設計・開発の段階からコストを削減する開発提案能力が重視される。しかも、コスト削減提案でメリットが出た場合、その半分は部品メーカーに還元される。
コスト削減につながる新アイディアや新アクションを実行に移しやすく、部品メーカーが開発する新技術をいち早く搭載できる。このような取引きをする場合は、系列部品メーカーとの固定的な取引きを行わず、どの部品会社でも取引きする政策を取っている。
一方、トヨタ自動車とデンソーの間で始まったと言われるゲストエンジニアの制度が、ルノー社等に広がっている。ゲスト・エンジニア制度は、部品会社の社員が自動車会社に派遣されて、いっしょになって自動車を開発するものである。
マツダはエンジン、ミッション、ボディ(ホワイトボディ)以外の全ての部品を外注化する方針を定めた。同時に2008年までに部品の企画から生産・品質保証までを一貫して行えるフルサービスサプライヤー(FSS)制度をとると発表した。これによりモジュール生産に参加できる部品メーカーのみ、一次部品メーカーとして生き残れるものと考えられる。価格についてはTA(ターゲット・アグリーメント)制度を採用するという。
GMは部品のモジュール化に対応した自動車生産のプロジェクトをイエローストン・プロジェクト(Yellowstone Project)と呼んでいる。2002年初めから生産するという。現行の10のモジュールを使った生産から、100のモジュールを使った生産になるという。モジュール生産に部品会社に任せることによって、高い賃金のUAWの労働者から、より賃金の部品会社への労働者の作業に移ることによりコスト削減メリットが多いと言われている。
最近、日産自動車はルノー社と提携後、無理な販売を行わないために販売台数が減少している。日産系の自動車部品会社は経営的に苦しいはずなのに、利益が増えているという。これは日産自動車が系列部品会社の提案をよく受け入れているためと言われている。将来、モジュール生産に移行しても、自動車部品会社にはそれを支えるだけの技術的蓄積ができつつあると考えられる。
参考ホームページ
コスト削減の切り札として期待される自動車部品のモジュール化
日経新聞の『部品会社、組立て担う』
スズキ、新規格軽自動車にモジュール設計採用
Major Auto Mergers Drive Sweeping Charge in the Parts Industry, According to PricewaterhouseCoopers Survey(1999.3.23)
"Merge right" converging industry drives new moves by automotive supliers(Ernest & Young)
Is global overcapacity hurting the Industry
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部品供給の試み
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スマート
ベンツはAクラスに続いて1998年7月には、おもちゃのような2座席の超コンパクト・カー「スマート」を発売して、滑り出しは順調な売れ行きを示した。未来のシティ・カーと位置づけられたこの車は、スイスの時計メーカーSMH社と合弁で設立したミニカー製造会社マイクロ・コンパクト・カー(MCC、本社はスイスのビール)のフランス、アンバッハ工場で生産され、年産20万台が見込まれていたが、2001年の実績は10万2000台にとどまっている。
(中略)
開発の初期段階から下請けのユニット会社10社が参画して、デザイン・インが進められた。生産面では日本的生産方式を積極的に取り入れ、下請け企業はこれまでの10分の1に絞り込んで約60社とし、外注率も当初予定していた50パーセントから94パーセントまで引き上げた。
生産は、のちに紹介するスペインにあるフォードのバレンシア工場やドイツにあるベンツのラシュタット工場と同じように、モジュール生産方式を導入している。この工場の周辺に4つの建屋が付随していて、システム・パートナーと呼ばれる7社の部品メーカーが、そこで部品を組み立ててモジュールとしてから、車のアセンブリーラインの流すべき箇所へコンベアでジャスト・イン・システムで搬送する。
この7社がモジュール化したものを組み合わせるだけで、車の組み立ての90パーセントが完成する。このため、1台の総組み立て時間が、通常の15時間から3分の1の5時間に短縮されるという。こうした開発形態や生産方式には、もはや往年のベンツの面影はない。(338〜340ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
フォードのバレンシア工場
自動化といえば、フォードが地中海を望むスペイン第三の都市、バレンシアに建設している、小型乗用車「Ka」(1300cc)を量産するための“未来工場プロジェクト”が大きな注目を集めている。
300億円かけたバレンシア工場の敷地面積は270万平方メートルもあり、隣接(併設)するインダストリアル・パークと呼ばれる工業団地に、30社の部品メーカーが整然と並んでいるのが特徴である。
この工場団地のほぼ中央に巨大なロジスティック・センターが建てられ、各部品メーカーで生産された部品はすべてこの施設を中継基地にして、巨大なコンベアーによって自動的にフォードのバレンシア工場に運ばれることになる。ただし、その中間段階で、部品メーカー同士でモジュール化していく工程もある。
このベルトコンベアによって完成車メーカーの工場と部品メーカー群の工場を結ぶ搬送方式は独特で、空中トンネルと呼ばれる地上5メートル、幅約15メートル、高さ約5メートルもある渡り廊下のような空間を、スキー場のリフトに似た搬送機にシートやバンパー、ラジエターなどを吊り下げて流れていく。完成すると、この空中トンネルの総延長は2キロメートル以上にもなる。
組立ての指令は、バレンシア工場と30社の部品メーカー群をネットワーク化したホスト・コンピュータによって流される。たとえば、シート・メーカーの場合には、30秒単位で指令が届き、それに応じてシートが生産されて、バレンシア工場へと流れていく。そのため、日本のジャスト・イン・タイム方式のように、部品工場から遠く離れた完成車メーカーの組立て工場まで、大型トラックで搬送して指定された時間に納入する必要はなくなる。搬送費と輸送時間が節約でき、しかも限りなく在庫ゼロに近づけることができるダイレクト・オートマチック、デリバリー(DAD)と呼ばれる生産システムである。注文を受けてからコンベアで出荷するまで最短45分しかかからないという。
(中略)
ブラジルにあるGMのグラバタイ工場でも、同じような生産システムが導入されており、やはり、1000ccクラスで低価格のコンパクト・カー「セルタ」が生産されている。
ただ、このバレンシア工場などの弱点は、すべてが一体になっているため、生産量の変動が少なく、つねに大量生産を維持することが前提となる点だ。そうしなければ、全体の効率が下がってしまうからだ。(349〜350ページ『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』)
参考文献
『ホンダのDNA継承術』 長谷川 洋三著 2002年9月1日
『トヨタvs.ベンツvs.ホンダ』(世界自動車戦争の構図) 前間 孝則著 2002年1月20日
『トヨタとホンダ』 塚本 潔著 2001年12月20日
『ゴーンさんの下で働きたいですか』 長谷川洋三著 2001年6月1日