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http://money.msn.co.jp/investor/column/columncon.asp?nt=8&ac=fp2004070515&cc=21
2004年7月5日
7月1日、日米の金融市場の先行きを占う上で最重要と呼べる発表がありました。日本における最重要発表「日銀短観」では好結果とともに大手術を要する病巣が残っていることが露見しました。
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■ 日米で「最重要イベント」が相次ぐ
先週は日米で金融市場にとっての「最重要イベント」が相次ぎました。日本時間7月1日(木)、米国ではFOMC(連邦準備制度理事会)の利上げ決定、日本では日銀短観の発表がありました。この二つは日米の金融市場の先行きを占う上で、文字通り最重要と呼べるものです。特に今回は中長期的に見ても大きな変化がありましたので、重要度がさらに増しています。
■ FOMCは0.25%の利上げを決定
グリーンスパン議長率いるFOMCは今回政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートを0.25%引き上げ、1.25%とすることを全会一致で決定しました。これにより2000年のITバブル崩壊以降続いてきた利下げサイクルは2001年の年初以来ちょうど3年半で終了したことになります。
今回少なくとも0.25%の利上げがあることは既に5月の上旬から市場では確実視されていたため、とくに混乱はありませんでした。3月下旬以来、米国ではそれまでなかなか盛り上がらなかった雇用回復の兆候が現れてきたため、市場が利下げ局面の終了を急ピッチで織り込み長期金利は既に1%以上上昇していたためです。グリーンスパン議長も市場と歩調を合わせて「デフレ終息宣言」を行ったり、「今後の利上げペースは計算できる程度行う」と表明したりするなど、「市場との対話」をうまく行ってきました。
ただ、市場の一部では「景気が急速に改善しているにもかかわらず利上げのスピードが遅すぎるためインフレが起きてしまう」という見方から、今回0.5%の利上げを見込んでいた人もいたため利上げにより長期金利は返って低下しました。株式市場は利上げペースが予想通り緩やかになることを好感し小幅上昇しています。
■ 日銀短観は予想以上の好結果だが、中小・非製造業の弱さも確認
一方の日本の最重要統計である日銀短観(短期経済観測)は予想以上の好結果でした。この統計は企業のアンケートを基に作成されるものですが、株式市場以上に景気先行性があることで知られています。GDP統計と同じく3ヶ月に一度しか発表されないため速報性には欠けますが、その分市場へのインパクトが非常に大きい統計となっています。この統計が便利なのは、大企業・中小企業、製造業・非製造業、電機・小売などの各業種毎といった細かい分類に分かれているところです。これにより、日本経済全体のうちどの部分の景況感がどうなっているのかを知ることができます。
毎回最も注目される「大企業製造業」は予想以上の好結果で、90年のバブルのピーク時に迫る水準となりました。特に好調だったのが、鉄鋼・機械といった中国関連とIT業種である電機です。また「非製造業」と「中小企業」は概ね予想通りでした。市場の事前予想では、今回は、最近の中小企業の設備投資意欲を見る限り「中小企業・製造業」の景況感はかなり改善すると見られていましたが、こちらもバブル期並みまで回復していることが明らかになりました。
ただ、「中小企業・非製造業」は予想を下回る結果でした。日本の不良債権の半分以上はこの「中小企業・非製造業」と言われています。これには中小の建設・不動産・小売といったところが含まれていますので、なんとなくイメージが涌かれるかと思いますが、日本経済の中でもこうした部分はまだまだ厳しく「最後の構造改革」が必要な部分と言えそうです。
■ 今後の先行きを読むと・・・
以上の結果を踏まえると今後の経済・市場動向はどう読めるでしょうか?
まず米国から行くと、今回0.25%の利上幅となりFOMCの声明の内容も「計算されたペースで金利を引き上げていく」と変わらなかったことから、一部にある「利上げペースが遅すぎてインフレを招いてしまう」と懸念する人たちが意見を変えるような状況の変化とはならなかったと考えられます。そのため今後も、もっと早い利上げが必要なのか、あるいは市場が織り込んでいる程度でよいのかという論争が続くと見られますが、この状況は市場にとっては市場全体が一方向に傾くことなく安定的に推移する要因となります。米国市場は今後、景気変動を素直に織り込んだ安定的な推移をたどるであろうということはいえると思います。ただ、利上げにより景気がピークを打つのか、それともしばらく安定的に成長が続くのかは、まだ現時点では見えません。
日本の方は、経済全体としてはデフレ脱却に向けて順調に経済が拡大していることが分かりましたが、最も根深い病巣である「中小・非製造業」はまだまだ処置が必要であることも確認されました。今後は竹中金融担当相が言っている通り、地銀・中小企業を中心とした再編と処理が行われるであろうことは明白です。そのインパクトが今後のどこかで現れざるを得ないことが外国人にもはっきりと伝わったと思われます。今後、どこかの時点で地銀再編が行われるでしょう。
また、中国・IT関連が「良すぎる」ことも気がかりです。このコラムでもお伝えしたとおり、IT業種の好調さには少々の行き過ぎが感じられます。また、中国もこれから本格的な金融引き締めが行われることが予想されており、それがどの程度のインパクトをもたらすのか読めないところが不安です。
以上を考えると、世界経済全体がどうなるのかを見極めるにはもうしばらく時間が必要ですが、日本経済には少々リスクがあるという結論になります。ただし、日本のここ数年の構造改革は着実に結果を出していることから、地銀・中小企業に対する圧力は一時的には不安視されるでしょうが、長期的には大きなプラス要因としてみなされると思います。今月の参院選、もう数ヶ月すると本格化する米国大統領選挙の行方も市場に大きく影響すると思います。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木英寿
提供:株式会社FP総研