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(回答先: 米ゴールドマン:米経常赤字支えるにはドルの31%下落が必要 (ブルームバーグ) 投稿者 たくげん 日時 2004 年 6 月 22 日 20:36:29)
オニール氏は、「経常収支改善のためには、貿易収支が大幅に好転する必要がある」、そのためには、「当然ながら、対外収支のそのような調整には、通貨の大幅な下落が必要だ」と考えている。
しかし、ドル安が貿易収支の改善につながるというのは妄想でしかない。
それは、85年の「プラザ合意」が米国の貿易収支赤字をさらに拡大させたことでもわかることだ。
まず、米国は、ドル高のせいで国際競争力を失っために膨大な貿易収支に陥っているわけではない。
ここ20年の家電・自動車・半導体をめぐる日本との競争関係推移を顧みればわかるが、1ドル=80円でも価格競争力を回復できなかったほど、産業基盤が崩壊したことが最大の原因である。
そして、国際競争力を持つ企業も、軍需関連を除けば、より多くの利益を稼ぐためにより安い人件費で生産できる外国に製造拠点を移している。
これは、企業にとってはベターだが、貿易収支の面でも、米国民の生活の面でも大きなデメリットである。
ドル安になったとしても、日本以上に国民生活を考慮することなく利益を追求する米国企業は、よりコスト条件がいいところをめざし続けるはずだ。(それが終わるのは、米国の労働者が中国やインドネシアなどと同程度の賃金水準になったときだ(笑))
85年当時と較べて大きく違う条件として、自国通貨人民元をドルにぺックさせている中国に対する貿易赤字が大きいことを指摘できる。
この条件は、それだけを単純に考えると、ドルが下落しても中国からの輸入品価格が上がらないので、貿易赤字を拡大することはないと言える。(しかし、対中貿易赤字を縮小するわけでもない)
日本やEUとの貿易に関しては、日欧の企業が自国通貨換算で同じ手取額が得られる対米輸出価格を設定すると、同じ量の財を輸入したときでも、米国の日欧に対する貿易赤字はドル安比率分だけ増大することになる。
米国内価格が高くなることで売れにくくなるのを恐れてドル建て価格の上昇は抑えられることにはなるだろうが、それは日欧の企業の利益が減少することを意味し、日欧の景気が悪化することで米国企業の対日欧輸出も減少する可能性もある。
最後に、ドル安は、必ずしも国際価格競争力の強化につながるわけではない。
米国が原材料から機械類までをすべて自国内で生産しているのなら、ドル安がコスト上昇につながることはなく、輸出条件だけが良くなり貿易収支も改善する。(戦前の米国に近いかたち。輸入は特産品や奢侈品だけでいい状態)
しかし、現在の米国は、原油・電子部品・機械類などを大量に輸入しているのだから、ドル安は、それらの輸入価格を上昇させ輸出財の生産コストも増加させる。(それが輸出競争力に対するル安効果を大きく減じる)
原油など国際商品はドル建てがほとんどだから、ドル安が米国のそれらの輸入価格上昇に無関係のようにも思えるが、それらの輸出国は米国以外からも様々な財を輸入しているのだから、それらの価格が上昇することドル建て価格を引き上げようとする。(そうでなければ、産油国などは、それまでの物質的経済条件を維持できなくなる)
工業製品までの国際水平分業構造が定着している現状では、自国通貨を下落させたからといって、自動的に輸出競争力が高まり貿易収支も改善するというわけにはいかないのである。
米国がドル安で得られるメリットを上げるとしたら、過去の「ドル建て債務」の履行が楽になることだけである。
しかし、国際金融活動で利益を追求している企業や外国に直接投資する企業は、ベースにしている通貨ドルの下落により、新規投資で不利になる。
国際金融活動については、過去の投資分から大きな利益を上げることができる。
新規の投資はどちらも、90万ドルで買えた1億円のものを120万ドルで買わなければならなくなるのだから不利である。
この不利を解消するためには、定期的にドル安に繰り返し、過去の分でドル建て利益を増大するしかない。(しかし、実質は増加するわけではない)