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［東京 ９日 ロイター］ 福井日銀総裁は衆議院財務金融委員会の「通貨および金融の調節に関する報告書」に関する質疑の中で、ここ数日の長期金利上昇は、世界的に物価の情勢が変わりつつことを反映したものだと位置付けた。日本は次第に景気回復の基盤を整えつつあるが、デフレ脱却には距離を残しているとした。
福井総裁は、現在の量的緩和のコミットメントは非常に明確なものであり、この路線の上で政策を推進していくとしたうえで、将来的に、インフレ参照値やインフレターゲットは、大きな検討の対象に入ってくるとの見解を示した。
＜ここ数日の長期金利上昇、世界の物価動向の変化を反映したもの＞
福井日銀総裁は、「日本でここ数日、長期金利が若干上昇の動きをみせている」としたうえで、「世界経済全体として、人々の期待を上回る強さで高めの成長を続けている。日本経済も、けさ発表された１─３月ＧＤＰ成長率が若干上方修正され、日本経済自身も回復の方向性がさらに明確に確認されつつある」と述べた。
こうした状況のもとで、「世界的に物価動向の方向性が徐々に変わりつつあるのではないか。金融資本市場のなかでも、そうした微妙な変化を市場自身が織り込み始めているという空気が支配的だ。日本の長期金利の最近の上昇は、こうした市場全体の空気がいくばくか反映されている」と述べ、世界的な物価動向の変化を反映したものだとした。
＜日本は景気回復の基盤整えつつあるが、デフレ脱却には距離残す＞
福井総裁は、こうした世界経済の変化に伴う各国の政策変化は、「いかなる政策が取られようと、市場を通じて日本に影響が及んでくる」とした。そのため、「そこは十分、注意して眺めながら、日本経済そのものは、景気は次第に回復の基盤を整えつつあるが、デフレ脱却や持続的回復軌道の到達という点では、まだ距離を残している」と述べた。
日銀としては、「今後とも経済主体の努力を背後から強く支援していく趣旨を込めて、現在の緩和政策を粘り強く続けていきたいという方針には、何ら揺らぎはない」と語り、量的緩和を堅持する姿勢をあらためて示した。
＜現在の路線の上に政策を推進、インフレ参照値は大きな検討対象の中に入る＞
インフレ参照値やインフレターゲットについて、福井総裁は、「望ましいインフレ率がどのようなものか、物価安定を数字で表すとどうなるか。それを金融政策の運営上、どの程度強く念頭に置いて、金融政策の枠組みを作ることが、金融政策全体の透明性向上に資するものになるかは、今後とも絶えず環境の変化を織り込みながら、真剣に考えていかなければならない日銀として重要な課題だと考えている」として、将来の課題だとした。
さらに、「いわゆるインフレーションターゲティング、インフレ参照値と言われているものは、そうした大きな検討対象の中には当然入ってくる事柄だろうと考えている」とした。
しかし、「現在の状況を出発点に考えると、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ％以上になるまで、今の緩和を続けるというコミットメントは非常に明確なものであり、市場関係者および広く経済主体にその趣旨が浸透している状況だ。現在は、この路線の上に政策を推進していくことが一番政策効果が上がりやすいと考えている」として、現状の路線に沿って政策を進めていくとした。
消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ％以上になるという、現在の目標が達成された後の金融政策については、「金融政策の全体の方式は、また、いろいろと考えていかなければならない。この中で、インフレ参照値的なものを取り上げるかどうかは、この先の課題として考えさせて頂きたい。現状においては、その可能性について、特にこの点に意識を置いて前向きに取り上げているということではない。あらゆる他の要因と一緒に、今後、並行的に考えていきたい」と述べた。（ロイター）
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