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(回答先: なるほど揉めるわけですね 投稿者 ネオファイト 日時 2004 年 6 月 06 日 20:40:16)
青色発光ダイオード―日亜化学と若い技術者たちが創った
テーミス編集部 (編集)ISBN: 4901331086 ; (2004/03)
アマゾンのカスタマーレビューから1つ転載します。裁判の結果については私の考えはこれに近いです。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4901331086/customer-reviews/ref=cm_cr_dp_2_1/249-6084881-9471551
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青色LED東京地裁判決、200億円という巨額な金額に誰もがびっくりした判決ですが、青色LED「発明者」中村氏が発明の「相当の対価」(特許法35条)の支払いを求めてかつての勤務先・日亜化学に起こした訴訟でした。
中村氏または中村氏サイドの本は数多く出ていますが、かつての勤務先であった日亜化学サイドからの初めての「反論」本です。
「中村氏のブレイクスルー」はブレイクスルーでも何でもない、という主張がなされています。この「ブレイクスルー部分」こそ、上の訴訟で争われている特許発明2628404なのですが、これは、やはりどうみてもブレイクスルーでしょう。まあ、物理屋や電子・電気系のエンジニアで、この本のこの記述にうなずく人は皆無だと断言できます。
一方で「青色LEDが青色LEDを産んだ」という訳で、改良にあたった(かつて中村氏につけられたであろう部下達の)技術者群像が描かれています。日亜の青色LEDですが、日本での特許取得件数は200件以上、その数々の発明の中で、中村氏一人による発明者の特許は、ごく初期の、「海のものとも山のものとも分からない」段階の5,6件だけです(上の「ブレイクスルー特許」は、この中の一つです)。これら200件以上の特許の中には、6人もの研究者による共同発明というものも数多くあります。ですので、本書のこの部分に限っては、青色LED発明の一側面をきちんとあぶりだしています。
判決に触れた箇所は…。
判決文(最高裁サイトで入手できます)を読めば分かりますが、日亜側は、「中村氏の発明貢献度はゼロだ」などという「何考えてんだ」みたいなことを主張しています。このような主張をしていては、当然に裁判官の心証を悪くするばかりで、大負けするのも当然、この本で書かれていることも、判決文をごく少々の民事訴訟の知識を持って読むと、説得力ゼロです。難しい言葉を使ってしまいますが、自由心証主義を採用する民事訴訟では、いったん裁判官に悪く思われたら、極端な話、100人中99人の人を説得できる論理を法廷で展開しても、負けちゃうんです(殺人とかの刑事事件を扱う刑事訴訟は、全く違いますよ)。
なお、この東京地裁判決は、発明の発明者への「相当な対価」の金額の算定にあたり、被告日亜側の金額算定手法を採用せず、かといって原告中村氏側が主張する金額算定手法も何故か採用せず、「どこからでてきたんだ?」というような全く独自の仮定をファーストステップに置いて、更に仮定に仮定を重ねた上で、600億円という金額を最終的にはじき出しています。判決を2,3度読んだのですが、この金額算定の部分は、どうにも理解に苦しみます。この判決の金額算定方法は、日亜側がきちんとスタンスを改めれば、今後、東京高裁で金額がはるかに小さくなる方向に、大きく修正されることでしょう。
この事件にまつわる色々な情報(ニュース、本等)、そして問題となった特許そのものや判決文を俯瞰すると、中村氏も、日亜も、そして、東京地裁も、もう、なんだかなあ…、という感じです(中村氏のそもそもの主張は、「この発明の特許権はオレのものだ」というものです。当然にこの部分は認められませんでした。中村氏は、だから、勝ってはいないんです)。
最近、私の住む地域で、青色LEDの信号機が急増しました。従来のものよりも飛躍的に見やすく(特に「矢印の青」)、クルマの運転をしていて青色LEDの恩恵にあずかっているなあ、と思わされます。しかし、この信号機で使われている青色LEDは日亜化学の200以上もの特許発明が有機的に結合して僕の眼前を灯しているわけで(実際は50くらいか?)、たった1つの特許発明がもたらしたものでもなく…。
そして今、「200億」という数字の魔術というのか、マスコミが中村氏を時代の寵児みたいに持ち上げてみたり(ブレークスルーの功績自体は素晴らしいと思いますけど)、経済団体がケシカランと発言してみたり…、訳分からない事態になっちゃってるわけでしょう?
そう考えると、青色LED関連の本(中村氏サイドの方も含めて)は、どれを読んでも複雑な気分になってしまい、この50年に1度というくらいの素晴らしい大発明(群)の価値を自分たちの手でいたずらに貶めているようで残念でなりません。
この本の星2つは、日亜の技術者達の群像を書き出したところを評価したもので、この部分は東京地裁裁判官も含めて世の誰も認めていない部分です(ここを裁判官が完全に見落としたために(日亜も主張しなかったが)、600億円なんていうとんでもない金額の算定をしてしまった)。ですので、この部分だけはは読む価値があり、また、この「大事件」を知るためのバランス感覚を培う上でも、一読なさることをお勧めします。