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年金改革法案の採決をめぐる国会のドタバタ劇に隠れ、あまり論議されない問題がある。年金の積立金を原資にした年金住宅融資だ。この融資制度は改革で、年金資金運用基金から別の独立行政法人に引き継がれるが、多額の不良債権を抱えたままだ。金融機関であれば責任問題となるところだが、ここでも「年金官僚」らの責任は不問に付される形だ。 (星野恵一)
■貸し倒れ懸念、1117億円にも
「ババを引いたのは金融機関か、保証会社か、という感じですよ」。あきらめ顔で話すのは、保証会社・年金福祉信用保証(本社・東京)の担当者だ。
同社は、年金資金運用基金が年金加入者に対して行っている住宅ローン・年金住宅融資の事業で、加入者が融資を受ける際の保証業務を行っている。経営は火の車で、担当者は「実質的な破綻(はたん)会社」と言い切る。
年金住宅融資は、旧年金福祉事業団(現年金資金運用基金)時代に始まった。大規模保養基地(グリーンピア)建設事業や、株式などによる運用失敗と並び称される赤字事業の一つだ。厚生労働省によると、実質的な融資残高は、一昨年度末で約四兆六千億円。このうち貸し倒れ懸念のあるリスク管理債権は千百十七億円に上る。
融資の仕組みはこうだ。
国民、厚生両年金の積立金は、国の資金運用部に預けられる。年金資金の運用を行う同基金が、資金運用部から住宅融資の資金を借り入れて、より低利で年金加入者に住宅資金を融資する。実際の融資窓口は、全国にある年金福祉協会など、厚労省関連の五十近い公益法人だ。各法人は同基金から資金を借り入れ、加入者に転貸しする方式だ。
「保証会社は、年金加入者が転貸し法人から借り入れる際に、返済能力があるかなどを調査して保証を行う。転貸し法人が同基金から資金を借り入れる際に保証を行うのは金融機関だ」と先の担当者が説明する。
保証会社や金融機関は、保証によって「保証料」などの手数料収入を得る。その代わり、借り手や転貸し法人が返済できなくなった時には、保証会社や金融機関がその額を弁済する。そんな仕組みだ。
保証会社の場合、借り手が返済を六カ月以上延滞すると、不良債権となり、借り手の受けた融資額全額について、転貸し法人に返済する義務が生じる。
■バブル崩壊後延滞者が急増
ところが「バブル経済の崩壊後、延滞者は急激に増加した」(同担当者)。保証件数の増大で、同社は五期連続で赤字決算が続く。「三年前から債務超過の状態」と同社担当者は目を伏せる。「今行っているのは回収業務だけ」という。
担当者が続ける。「延滞が始まった人は、まとまったお金をつくれないから、担保とした家を売却したりして資金を回収している」「借り手で、自己破産した人も多い」。現在、保証会社は、同社を含め全国で約三十社あるが、決して経営は楽ではない。
「年金加入者の福利厚生に資するため」(厚労省)に始まった融資制度だが、自己破産者まで出る事態だ。「思わぬ誤算」と同社担当者ははき捨てた。
だが、果たして「誤算」だけなのだろうか。
■緩い審査基準赤字招く一因
実は、この保証会社の赤字が増えたきっかけは、審査基準を緩く運用した結果だった。「六カ月以上の延滞が起きても、保証の履行を待ってもらう。その代わりに、うち(保証会社)が、転貸し法人が同基金に返済する分の資金を無利子で融資する」(担当者)。
そんな「つなぎ融資」によって、焦げ付いた融資を形式上は正常債権として先送りする。いわば“不良債権隠し”だ。
同社担当者は弁明する。「融資全額の保証となると額は大きく、延滞分にとどめた方が負担は小さい。借り手にとっても、延滞事故となれば、全額弁済が必要となる。融資を受けた人のためでもある」
では融資申し込み時の審査は適正に行われたのか。先の担当者は「審査を甘くしては、自らの首を絞めることになる」。
ただ、別の保証会社関係者は「担当者レベルでは、転貸し法人側との話し合いの中で、基準を弾力的に運用したことはあったのかもしれない」と明かす。
「実質破綻状態」の保証会社が現実に破綻したり、不良債権の回収が進まなければ、転貸し法人に保証を行っている金融機関にも多大な影響を及ぼし、融資の原資である年金資金にも大きな穴があきそうだ。だが実は別のカラクリもある。
■つなぎ融資“不良債権隠し”
同省担当者が説明する。「保証会社が破綻すると、融資制度そのものが崩れてしまう。だから、金融機関による(二重の)保証がある。一昨年、同基金や転貸し法人、保証会社、金融機関が協議し、つなぎ融資の問題でも、金融機関が、保証会社に代わって(債務を)弁済することになった。同基金の債権は100%保証されている」
ある保証会社関係者は「十三の転貸し法人の行った融資二十万件以上で、総額一兆数千億円に対する保証が残っている。今後も延滞は出ると思う。損失は膨らむ」と本音を話す。
年金問題を追及している元衆院議員の保坂展人氏は指摘する。「融資制度を破綻させない代わりに、不良債権の保証に伴う痛みだけは民間が負う仕組み。だが要は、国と同基金、転貸し法人、そして保証会社を含めた金融機関のもたれ合いが、問題を先延ばししてきた」。同省関係者は「国とすれば年金資金を毀損(きそん)するわけにいかない。金融機関は痛みを押しつけられたというかもしれないが、収益の見込みがあって契約した責任もある」と弁明する。
■天下り転貸し法人に80人
制度が存続してきた背景には別の事情も見え隠れする。転貸し法人は、融資制度が始まった一九七三年以降に設立された法人がほとんどで、そこには厚労省OBが約八十人(一昨年十月現在)天下っている…。
「もう一つ、年金住宅融資で以前から指摘されているのは、同基金が資金運用部から借り入れる金利より、転貸し法人が貸し出す金利が低い、金利の“逆ざや”問題だ」と保坂氏は話す。
■独立行政法人回収業務のみ
一昨年度末で、逆ざやで生じた損失額は約四千七百億円で、穴を埋めるのは国民の年金積立金だ。年金改革関連法案では、住宅融資制度は、同基金から別の独立行政法人に業務が移管される。新規融資は来年度でうち切られ、独立行政法人は、回収業務のみ行う。
保坂氏が指摘する。「改革に伴い、いったん同基金が借り入れてきた資金は資金運用部に償還される。その際、将来発生する逆ざや分も償還される。逆ざやで、総額約九千三百億円の年金資金が泡と消える。損失の中身が論議されず、官側の責任も問われない。けじめが必要だ」
厚労省関係者はいう。「融資は福祉還元事業で、逆ざやによる損失は、織り込み済みだった面もある。が、制度は、年金受給者が少なく、資金が累積していた時代に始まったことも確か。営利企業であれば株主代表訴訟とか、責任追及はあったかもしれない。でも誰も止めることなく続けてきて、今、誰が責任を…」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040605/mng_____tokuho__000.shtml
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