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http://www.japan-retail.or.jp/retail/vol60/eu_2.htm
欧州小売業の世界戦略(1,2)
昨年10月13日(金)東京商工会議所ビルで開催された経営実務セミナーは、世界に進出を続ける欧州小売業の脅威的な強さの秘訣はどこにあるのか、その戦略とグローバル企業の今後の展望について、二神康郎氏に講演していただいた。以下、その講演内容を掲載。
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国際流通研究所代表
二神康郎 氏
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商業強国・弱小国
世界には、小売業の強い国と弱い国があります。つまり進出する国と、進出される国があるのです。ヨーロッパの三十数カ国をそういう立場で分類すると、五つのグループに分かれるでしょう。
第1が「先進商業大国」です。流通機構がシンプルであり、かつ大手の小売業が育っている国です。ドイツとフランスとイギリスなどです。
次が「先進商業小国」です。この小というのは単に面積が小さいというだけの話で、オランダ、ベルギー、スイスです。小さいけれども世界をまたにかけるような大型の小売業が育っている国です。
それから「北欧型先進国」。これはノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマークです。これらの国の商業は非常に発達して、流通は非常にシンプルで、注目すべき流通業が育っています。
次が「南欧型商業国」です。これはイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャです。これらの国の特徴は、商業は盛んですが、流通経路が非常に複雑で、大手の流通業が育っていないということです。したがって、もっぱら先進商業大国の大手チェーンの草刈り場になっています。
もう一つは「東欧型商業国」です。これは、ロシア、ウクライナ、ウズベキスタン、ブルガリアなど、大型の小売業も発達していませんが、先進大手商業国が進出する意欲を持たないところです。
そこで、世界を見回してみると、アメリカは、押しも押されもしない先進商業大国だと思います。しかし、アメリカはヨーロッパの大手小売業にとって非常に魅力のある国でもあり、欧州小売業者はアメリカに進出して大成功をおさめています。むしろアメリカは受け入れ側になっているのが実情です。アメリカで元気があるのが総合小売業ではウォルマートとコストコ、専門小売業ではオフィスデポやトイザらスなどです。
では日本はというと、日本は世界第2の消費国、商業国ですが、中小小売業、中小流通業が非常に多く、流通経路が複雑です。しかし大手小売業は育っています。後進国であるのか先進国であるのか、非常に判断が難しいところですが、今の大手小売業がちょっと羽振りがよくないことから、イタリアのような後進国に入るかもしれません。
これからが日本の正念場です。グローバルチェーンが日本に上陸してきて、日本の大手が彼らを海岸から追い落とすことができるのかどうか、非常に注目されるでしょう。
ウォルマートの危機
世界の大手の小売業がどういうふうに動いているのか、まずウォルマートについて見てみましょう。ウォルマートは世界最大の小売業であり、2000年1月の年間売上高は、1650億ドル、約18兆円で、世界第2位の小売業・カルフールの約3倍に当たります。売上高の伸び率は20%、粗利益はコンスタンに21%上げ、純利益率が3.3%です。
実はウォルマートは今、苦境に立っています。今年度、ウォルマートの第4 四半期の売上高は前年度を下回るのではないかという予測が出ています。理由は、去年までウォルマートのトップだったデビッド・グラスが、一つはガソリンの高騰で、自社配送システムを採用しているウォルマートでは配送経費がかさんだと言っています。さらに、新商品の開発が遅れたことを挙げています。
ウォルマートにとって、致命的な足枷になりそうなのが、ドイツのウォルマートです。ドイツのウォルマートは、1997年にベルトカウフの21店舗を買収し、その後スーパーも買収して、店舗は95店になったのですが、1年経って、このドイツで2億〜3億ドルもの損失を出していることが表面化しました。
この損失の理由には、大きく分けて五つぐらいあります。
第1はドイツという小売市場を甘く見すぎたこと。イギリスやフランスでは、純利益率を3%ぐらい上げている企業もあるのですが、ドイツでは1%を上げられるような企業がありません。それだけ競争が激しいのです。ドイツのアルディというハードディスカウントのチェーンは、品質もいいし、安い。ウォルマートは「エブリデーロープライス」を出すために商品を15%ディスカウントしました。つまりアルディとウォルマートは価格競争、値下げ合戦をやったわけです。ところがドイツでは、原価以下では販売してはいけないという法律があり、それにひっかかりました。このロープライス政策の失敗が二つ目です。
3番目に商慣行を無視したということです。ドイツには問屋が全くなく、メーカーから直接仕入れをしています。そこでメーカーの配送網が非常に発達しており、それに依存しているのですが、ウォルマートはそれを無視してセンターをつくり、センター一本方式を採用しました。そのために予定した商品が入ってこず、欠品率が20%を超えたというのです。これでは営業に影響が出るのも不思議ではありません。
4番目に人事政策を誤りました。ドイツはユニオンが発達しており、全国組織、地方組織があるのですが、その地方組織にもちゃんと加盟しなければいけないのに、ウォルマートは加盟しなかった。そのため店でストライキが起こりました。
5番目がやはり人事の問題で、ウォルマートはマネージャークラスに、全部アメリカ人を登用したというのです。その指揮がドイツ人の労働意欲を損いました。
撤退と進出繰り返すカルフール
次にカルフールですが、カルフールの歴史は撤退の歴史です。カルフールの国外進出には2段階ありました。第1段階は、第1店を出した1963年から69年で、カルフールはベルギーとイギリスとスイスに進出しました。ところがこれらの国では10年を経ずして撤退しています。
なぜうまくいかなかったのか。カルフールは、それらの国では全部資本のマジョリティは現地資本に値切られていました。つまりカルフールは50%以下の株式しか保有していませんでした。だからうまくいかなかったのだということで、それ以降、カルフールは100%の株式取得を目指すようになりました。
1989年のアメリカ進出では、5年を経ずして撤退しています。フィラデルフィアの郊外のショッピングセンターに1万7000平方メートルの大型ハイパーマーケットをオープンしたのですが、当時それほど大きな食品店はアメリカにもなく、客もどこに何が置いてあるのやらわからないと、集客に失敗しました。1992年に、アメリカのロングアイランドに第2号店を開いたのですが、1年もしないうちに二つの店を閉め、撤退したという歴史があります。
香港でも4店舗撤退します。香港の撤退理由は、一つは香港の店舗開設規制は日本以上に厳しく、新しい店舗を開設することが不可能で、発展の見込みがないということ。第2にカルフールのディスカウント商法に地元の業者が大反対した。つまり納入業者がカルフールのやり方についていけなかったということです。その二つが大きな理由になり、カルフールは香港の4店を放棄することを決めたようです。
日本でどうなるかはわかりませんが、洗練された店ができるでしょう。カルフールの新しい店は、ディスカウント系の店というよりは百貨店に近く、店内の飾りつけ、雰囲気、特殊な採光、光線の当て方、これが非常にうまいです。ですからカルフールの店に入ると、百貨店に来たのではないかというような錯覚を与えるだろうと思います。
しかし、店内の商品がどの程度競争力があるかが、勝敗を分けるかぎになるでしょう。問題はノンフードです。テレビ・CD関連商品、カメラショップ、家具、DIY 関係、要するにカルフールの内部は、カテゴリーキラーを一堂に集めたようなイメージです。ある意味では中途半端かもしれません。日本のカテゴリーキラーは非常に強い。だからカルフールがそういうカテゴリーキラーの商品でどの程度値段的に強みを発揮できるかが、勝敗を分けるカギになるのではないかと、私は見ています。