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石油に代わるエネルギー流通の主役候補として、水素が脚光を浴びている。水素を燃料とし有害廃棄物の少ない燃料電池の開発が進んできたからだ。地球温暖化問題への関心の高まりを背景に、産業界は一斉に水素ビジネスに動き始めた。
アイスランドの首都レイキャビクの街中で四月下旬、燃料電池車に水素を供給する水素ステーションが誕生した。秋に燃料電池バスが運行を始める。同国では地熱発電など豊かな自然エネルギーを活用した電力により、低コストで水から水素を生産できる。政府は石油輸入をゼロにし水素を輸出する構想を掲げる。
その第一歩である水素ステーションを設置したのは、欧州最大級のメジャー(国際石油資本)、ロイヤル・ダッチ・シェル。シェルグループは六月十二日に東京都内、十月には米ワシントンとルクセンブルク、オランダのアムステルダムでも、水素ステーションをオープンする予定だ。
コストの問題から、日本や米国では水素ステーションの普及に時間がかかるとみられている。現在、日本での工業用水素の販売価格は一立方メートル当たり百円程度。水素ステーションでの販売価格は百三十―百五十円になる。自動車の燃料としては、ガソリンの三倍強の費用がかかる。
それでもシェルが世界展開を急ぐのは、いずれ水素ステーションがガソリンスタンドに取って代わるとの読みがあるからだ。各国事情に応じたノウハウの蓄積や有力企業との提携など、今から布石を打つ戦略。フィリップ・ワッツ会長は「水素ビジネスは長期的視点から取り組む」と語る。
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自動車の燃料として水素を利用すれば、硫黄酸化物や二酸化炭素を排出しない。エネルギー変換効率も高い。燃料電池が普及すると環境への影響が和らぐのは間違いない。同時に、自動車用に限らずエネルギーの流通が大きく変わる。
家庭や工場では、電力を送電線を通じて調達する代わりに水素を燃料として自家発電できる。送電線の敷設が困難な洋上や砂漠から風力や太陽光で発電した電力を水素に変換して送ることも考えられ、エネルギー源の多様化も期待できる。
エネルギービジネスのすそ野が広がるとみて参入企業が相次いでいる。
三菱商事は最近、水素ビジネスに的を絞った北米の投資ファンド「クリサリクス・エナジー」に出資した。「世界的な企業と関係を深め、共同事業を模索する」(エネルギー事業開発ユニットの戸嶋健介氏)狙い。
同ファンドにはすでに、シェルや燃料電池で世界の先端を走るカナダのバラード・パワー・システムズ、ドイツの化学大手BASF、英国の工業用ガス大手BOCなどが約三十億円を出資している。三菱の参加もあり、規模はさらに膨らむ見通し。「水素メジャー」の座を目指し、世界の有力企業は早くも合従連衡に動き出した。
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ここにきて産業界の熱気をあおっているのが、各国政府・当局の積極姿勢だ。今年一月、ブッシュ米大統領は水素関連の研究に巨額の資金を投じる方針を発表した。欧州連合(EU)も六月十六日、水素経済に関する報告書を発表する。
米欧ともに二〇二〇年には広く普及するとの展望を描く。「ビジョンを打ち出し、取り組みを加速させたい」。欧州委員会のパブロ・フェルナンデスルイーズ・エネルギー担当局長は、こう語っている。
【図・写真】レイキャビクに完成したシェルの水素ステーション