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JRはかつて国鉄と呼ばれた。1987年、国鉄の分割・民営化は、現代版リストラの原点とされる。国鉄労働組合(国労)組合員というだけで採用差別、解雇が襲った。その時生まれた幼子が、今、親の背丈を越す。職場復帰を求め続けて18年、北の大地に生きる鉄道員とその家族を支えるものとは。
(松井 学)
JR宗谷本線で旭川から北へ約二時間。人口千百人弱と北海道一少ない音威子府(おといねっぷ)村は、日本のスキー長距離界の次代を担うエース誕生の喜びと興奮がまだ冷めやらない。
今年二月の全国高校スキー大会で、おといねっぷ美術工芸高校の吉田圭伸(けいしん)選手(17)=現三年=が距離二冠、リレー、学校対抗も優勝と四冠に輝いた。小さな村の、生徒九十二人の小さな学校が達成した快挙は全国に伝わった。
圭伸君は「長所は持久力。気持ちで走るタイプだから」。練習では林の中のクロスカントリーコースを二時間近く走り続ける。上着のそでには自分で考えた「ねっぷ魂」の文字を縫いつけた。苦しいときのお守りだ。
身長一七五センチの二男を、母光代さん(46)は「小さいころから泣いて育った。一年の半分は、生活資金を得るために父親が闘争団の全国物販やアルバイトに出かけて家にいなかった。芯(しん)の強い子になってくれた」と見上げる。
父儀則さん(48)は国鉄職員として二十歳から音威子府駅のポイント切り替えや列車の連結作業を担ってきた。一緒に解雇された国労組合員らと闘争団をつくり、JRへの採用を求める。圭伸君は鉄道マンだった父の姿は知らない。
解雇当初、儀則さんは国鉄清算事業団で漢字の書き取り練習や草むしりを強要された。光代さんが「夫は悪いことをしていないのに。なぜ」と聞いても、事業団の管理職らは「答える立場にない」を繰り返すばかり。それを見た幼い子供たちは「立場のおじさん」と呼んだ。
いま圭伸君は二〇〇六年のイタリア・トリノ冬季五輪出場を狙う。「口に出して話したことはないけど、お父さんの願いがかなってほしい」
稚内につながる宗谷本線と天北線(一九八九年に廃線)が交差する音威子府は八十人もの国鉄職員が働く「国鉄の村」だった。民営化した際、国労組合員以外は、全国でほぼ百パーセントJRに採用されたが、北海道、九州の国労組合員は過半数が不採用になった。
現在、音威子府の闘争団員は四十四人。ようかんや木工品など独自の商品を開発し、全国の労組や生協などに販売する。アルバイトの土木作業で不足分を補うが、公共事業は減る一方でぎりぎりのやりくりだ。国労本部による生活援助金の凍結などによる全体の減収も年二千万円に達する。新たに自然製法のみそづくりをスタート、販路を広げるのが課題だ。
■村民の1割が闘争団と家族
村役場の企画広報係長、宗原均さんは「過疎と国からの交付税カット、迫られる市町村合併で村の現状は厳しい。その中で村の人口の一割を占める闘争団とその家族の頑張りが村民にも力を与えてくれている」と話す。
親の背を見て育った音威子府闘争団の子供たちのうち、今夏の甲子園出場を目指す選手らがいる。北北海道大会の有力校、旭川工業高校の杉山浩平君(18)、千葉慎平君(17)、石沢司君(17)、渋谷大輔君(16)の四人だ。
二年前は甲子園のスタンドで先輩らを応援した杉山君は「最後の年なので全力を出したい」と目を輝かせた。その後は受験や就職が控える。兄の公務員、哲平さん(20)は進路選択する際に「弟は大学に」と話したが、浩平君は「親には金銭的に負担をかけたくない」とも気遣う。
なぜ、国鉄改革はリストラの原点とされるのか。
中曽根康弘元首相は国鉄分割・民営化から十年後、雑誌「アエラ」のインタビュー記事で、その狙いを「赤字」「借金」だけではなく「国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやったわけです」と語った。その後、日本の労組は弱体化が一段と進んだ。
「国鉄改革方式」によるリストラは、商法改正で会社分割、別会社化の仕組みができ、民間企業でもより身近に迫っている。NTTの合理化では従業員の半数を超える十一万人を対象にした転籍があり、賃金も最大30%カットされた。
「まだ、やっているのか」。音威子府闘争団の高橋敏彦さん(47)は、全国物販で訪れた先で、こんな声をかけられることが増えた。国鉄時代は営業係として出改札業務などに就いた。高橋さんは「明日も続けるのかと聞かれれば無理だと答えたくなる。最初から十八年も闘い抜こうと考えた人はいない。でもね、おれも大変だが、おまえはもっと大変だよな、と言って買ってくれる人が多く、世の中も捨てたものじゃないと思う」と語る。
同じく営業係だった菅井啓之さん(48)は二十二歳を筆頭に三人の男の子の父親だ。「子供たちは父親の職業欄にずっと『無職』と書いてきた。来年はJRと書こうねと話しながら。結婚式では言えるかな」
〇二年一月、全国の闘争団員ら三百人が原告となり、国鉄清算事業団を引き継いだ鉄建公団(現鉄道建設・運輸施設整備支援機構)を相手取り、解雇無効と地位の確認、不払い賃金の支払いなどを求めて提訴した。音威子府闘争団のうち四十二人も加わっている。
家族の立場を、その一年半前の国労臨時大会で「年がいこうと、私たちは解雇されたあの時から時が止まっているんです。確かに顔を見たらしわも増えてる。だけど私たちの気持ちはあの時に止まっているんです」と訴えたのが藤保美年子さん(52)。パートに出ながら家計を十円単位でやりくりしてきた。「仕事もなく閉じこめられ、目の輝きを失っていった夫。悔しい、許されないという思いだけが毎日を支えてきた」と話す。
JRの不採用問題をめぐっては、最高裁が昨年末、労働委員会が国労や全動労の組合員らをJRに採用するよう命じた救済命令を取り消した。しかし、五人の裁判官のうち二人はJRの責任を認める判決だった。
音威子府闘争団長の金児順一さん(47)は「最高裁判決は国鉄時代の不当労働行為について、旧国鉄、つまり政府の責任を明確にした。これまで政府は一貫して行司役に徹していたが、今後は第三者的に振る舞うことができなくなったわけで、解決能力がある鉄建公団に解決を迫っていく」と話す。
前出の主婦藤保さんは言う。「今は、誰もがいつリストラされるか分からない時代で、不当なことにも口ごたえしたらダメという空気がある。でも、私たちが闘っている限り、おかしなことにはおかしいと言おうと伝えられるはずです」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040501/mng_____tokuho__000.shtml
内偵の道具としてのインターネット[No More Capitalism]
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/364.html