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http://www.idcj.or.jp/1DS/11DS_ee_f.htm
■世界で最も高い中東地域の失業率〜ＩＬＯ報告書から（2004年2月2日更新）
今般、国際労働機構（ＩＬＯ）は「２００３年世界失業報告書」を発表したが、それによれば中東地域の失業率は世界最悪であることが明らかにされた。同報告書は、中東諸国に対して雇用と熟練労働の創出に向けた主要な経済改革の実施と教育改革の実行を迫ると共に、今直ちに対応を採らずこのまま人口爆発を放置すれば、２０年後には事態はさらに悪化し手がつけられなくなると警告を発している。
同報告書の主要点を整理すれば次のようになる。
過去数年中東諸国は、失業の解消に有効な手立てを打っていない。２００３年の中東地域の失業率は、12.２％と１０年前より僅かながら上昇しているのみならず、世界平均の6.２％のほぼ２倍となっている。
中東諸国の若年層の失業率は、さらに高く、例えば１５歳から２４歳の失業率は全体の失業率の２倍ほどであり、この年齢層の４人に１人が失業者となっている。
また中東の女性の失業率は、16.５％と世界のそれの6.４％と比べて際立って高く、また中東の若年層女性の失業率は31.７％と一層高いものである。
２００４年の中東地域の成長率は4.３％と高率を見込まれているが、同率程度の成長率では雇用の創出に何らインパクトはない。
中東地域の弱点は、経済が長年に亘る公的依存体質に染まり切っており、雇用を劇的に創出するような民間主導型となっていないことである。
また中東の人々の考え方にも問題がある。中東各国政府は最早自分達には何も出来ないと言っているのに、人々は政府の役割は職を与えるものであると考えている。こうした考え方は特にＧＣＣにおいて顕著である。但し、彼らを民間部門で雇用するにしても、彼らには求められる技量が備わっていない。
依然多くのアラブの人々は、公的部門が職を保証してくれるもので、威信のある部門であると見なしている一方、民間部門は不安定であると考えている。従って、技量の問題よりもこの考え方を変える問題の方がより厄介である。
中東諸国は、公的部門を整理・縮小すれば短期的には失業が増加するというジレンマも抱えている。
中東諸国の労働力の増加率は既に年率３％に達しているが、２０２５年には3.７％に上昇すると予測されている。今後毎年約４００万人が労働市場に出てくるので、２１世紀初頭の２０年間だけで８０００万人に雇用を与えねばならない。これは、どの途上国も経験したことのない規模の出来事である。
心配な現象が既に現れ始めている。それは既に述べた若年層での高失業率である。これが続けば政治的不安定性が懸念される。教育改革の実施と熟練技術の付与が必要だが、なかでも教育制度を労働市場のニーズに合致させることが不可欠である。多くの若者が、大学で文学や宗教哲学を学んで社会に巣立っている。
中東でも教育改革の動きは見られる。クウェイトでは、ダイナミックな企業家精神溢れる経済に対応した人材を育成すべく１９９９年から教育制度を改めつつある。サウジアラビアも２００３年１2月に教育の見なおしを発表しているし、ヨルダンも今後数年で教科書の見直しを行なう予定となっている。
このように中東諸国も事態の深刻さを認識しており変化の目も出始めてはいる。但し、中東は２０１０年までだけで約３０００万に職を与えねばならない。今の変革の速度では成功する確率は低いといわざるを得ない。
（エネルギー・環境室長／主任研究員 畑中美樹＜はたなか・よしき＞）
http://www.idcj.or.jp/1DS/11ee_josei040202.htm
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。