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【コラムニスト：Chet Currier】
４月12日（ブルームバーグ）：米株式市場の長期的な健全性を脅かすとされる、いわゆる｢ベビーブーム爆弾｣がわれわれの目の前から消えようとしている。米国で1946年から1964年の間に生まれた7500万人ものベビーブーマーが定年に達し、株式の売りが膨らむとの懸念だ。
ベビーブーマーが年を重ねるにつれ、株式や退職金として積み立てていた投資信託が売られ現金化されるというのがその理論だが、大半のベビーブーマーの定年が62歳とするならば、それに絡む株式売却は2008年前後から始まり、それから20年間続くと言われてきた。こうした嘆きに対して、わたしはいつも少し違和感を覚える。その時期が近づくにつれ、そうした話はあまり聞かれなくなり、信ぴょう性が薄れてくる。
ベビーブーマーが62歳か65歳になった時、全員が一度に株式や投資信託を売り、債券や定期預金などの金利の決まった金融商品に乗り換えるわけではない。そうした準備をしていない人もいれば、必要のない人もいる。そうしたくない人もいるだろう。固定金利に乗り換えたいと思っている人も、その魅力のなさに気付けば、恐らく株式の売却はしないだろう。
ウォール街でエコノミストの経験があり、現在は自らコンサルタント会社ホケンソン（ニュージャージー州）を経営しているリチャード・ホケンソン氏は、｢ベビーブーマーが老後に静かな生活を送るとは思えない｣と言う。ベビーブーマーの老後が落ち着いた規則正しい生活になるとはだれも考えていないし、彼らはそんな柄では全くない。ベビーブーマーの高齢化が社会保障などの制度に与える圧力と負担はどの点から見ても、圧倒的なものがある。
ひねった見方をすれば、これは株式にとって良いニュースなのかもしれない。財政面での心もとなさを考慮すれば、株式市場から資金を引き揚げる代わりに、より安全な資産に向かっていたかもしれない資金を株式市場にとどめておくことにもなる。加えて、平均寿命が延びていることや予想を下回る金利水準、退職後の生活に向けた蓄えの不足といったことは、株式市場に投資を続けるより強力な要因となろう。
低金利の衝撃
デフレ傾向のある経済では、金利は数年にわたり低水準にとどまる可能性がある。つまり債券の高利回りは期待できないということだ。固定利回りの年金や債券、それに定期預金といった最も伝統的な退職者向けの資産運用からの運用益は、低金利であれば小さなものとなる。これは、増配やキャピタルゲインなどによりかなりの運用益が期待できる株式市場に投資を続ける動機の１つともなる。
医療関連経費の増加や平均寿命の延びについてはどうだろうか。両方ともすでに問題となっており、今後も間違いなく大きな問題となる。多くのベビーブーマーは、年齢に上限を定めずに退職後の計画を立てる必要があるだろう。インフレ率がわずか２％だとしても、生活費は36年間で倍増しているのだ。
62歳や65歳になったからといって、資産計画を利回りが確定したものにすぐに変える必要が出てくるわけではない。仕事を通して収入を増やすという選択肢のない退職者は、その必要性はさらに薄いのかもしれない。
ホケンソン氏によれば、平均寿命が延びたことで、ベビーブーマーが両親の遺産を相続する時期は早まるよりも遅れることになる。両親に必要な老後の費用を考えると、両親の資産を消費に回すことは全くできなくなるかもしれない。介護は高額だ。ホケンソン氏は、｢歴史上初めて、いくつもの世代が同時に退職後の生活を送ることになる。これは、遺産相続に大きな影響を与える｣と述べている。
こうした環境下では、社会全体の幸福を考慮すれば、株式市場の健全性は今以上に重要となる。結局、株式市場の健全性を維持するのに必要なことは経済成長だ。政権を担当する政治家らの考え方にかかわらず、こうした事実は常に政策の選択に影響を与えことになる。これは、ベビーブーマーも今や頭に白髪が目立ついう事実と同様、不可避なことだ。（チェット・カリアー）
（カリアー氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。同氏の見解は彼自身のものです）
原題：The Stock Market Can Escape a Baby-Boom Time Bomb: Chet Currier （抜粋）
更新日時 : 2004/04/12 11:39 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。