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【記者: John M. Berry 】 4月7日(ブルームバーグ):昨年、欧州中央銀行(ECB)総裁に就任したジャンクロード・トリシェ氏は、金融政策の羅針盤において「磁北」は物価安定だと述べている。
先週の定例政策委員会後の記者会見でも、利下げを見送った理由説明で、この表現を繰り返し使った。政策委前後のトリシェ総裁の発言には、物価安定に主眼を置きながらも、ECBの目標の拡充を目指す可能性が暗示されているようだ。
磁極というのは、北極の位置とは一致しない。ベルリンにある磁針は、ダブリンにあるものと全く同じ方向を指しはしないし、磁極の位置は年々わずかずつ移動している。つまり、トリシェ総裁もこの表現を使って、ECBの羅針盤の読み方について極めて微妙なシグナルを送ろうとしたのかもしれない。
発言に注目する専門家のなかには、同総裁のレトリックに隠された新たな重大目標は失業者数の減少だとみる人もいる。また、政策アプローチの最大の変化は、これまでのような後手に回るやり方から、先手を打つやり方に変えることだとみる人もいる。
欧州の失業問題
欧州で高失業率が続いていることを考えると、ECBはインフレと同時に雇用にも注意を払うべきだ。ただ、ECBの法律上の任務は物価安定の維持だけで、インフレ率を「中期的に」2%を「若干」下回る水準に維持すると定義されている。ECBは発足後わずか5年で、インフレ・ファイターとしての信頼を築き上げ、雇用対策にまで踏み込める余力が出てきたのだろうか?
米国では、金融当局がインフレ率を約1%に抑制すると同時に、雇用に相当の注意を払っている。ECBとは異なり、米金融当局は物価安定と最大限の雇用を目指すことの両方が責務だからだ。悪化するユーロ圏の景気見通しを考慮すると、雇用をより重視していれば先週の政策委での利下げの引き金になっていたかもしれない。
憶測
こんな憶測が広がったのは、トリシェ総裁がドイツ紙ハンデルスブラットとのインタビューで述べた発言がきっかけだ。総裁はこのなかで、家計消費が回復しない場合はECBは景気見通しの修正を余儀なくされかねないと述べ、消費マインドは経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)で妥当とされる水準を下回っていると指摘。さらに同総裁は、ハーバード大学で開催された会合では、「失業対策で適切な方策を見い出すことが急務だ」と述べた。
トラディション・セキュリティーズ・アンド・フューチャーズ(パリ)のアレサンドロ・ジロード氏は一連の発言について、「考え方の大きな変化であり、ECBの全般的な戦略」の変化につながる可能性があるとみる。
トリシェ総裁は、ECB発足当時からフランス中銀総裁として政策委メンバーを務めるなど多くの経験を積んだ人物であるだけに、市場が中銀当局者の発言にどれほど敏感に反応するかについては熟知している。先週の政策委後の記者会見も、注意深く言葉を選んだ結果だ。
先月の会見では「現在の金融政策スタンスは引き続き適切だ」としていたが、今月の会見では「現在の金融政策スタンスは引き続き物価安定の維持に沿っている」に表現を変えた。「適切」という言葉を一部の市場参加者が「ECBの意向に反して、金融政策は向こう数カ月は変更されない」と受け止めるからだと同総裁は説明している。これは、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明が低金利政策を「相当の期間」維持するから、緩和策の解除まで「辛抱強くなれる」に修正したのとよく似ている。
ECBが5月か6月に利下げするかどうかは、今後発表される経済統計の内容次第だ。トリシェ総裁が利下げを押し進めていきたいのであれば、既に総裁発言を使って布石を打ったことになる。(ジョン・ベリー)
(ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Trichet Points ECB Policy to `Magnetic North': John M. Berry(抜粋)
更新日時 : 2004/04/07 15:25 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html