現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産34 > 702.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://www.ecology.or.jp/member/susbiz/0312.html
信頼が必須条件―バングラディッシュ発のグラミン銀行 (GRAMEEN BANK*1)
この「サステナブルビジネス最前線」では、サステナブルな社会の中でサステナブルに存在するビジネスの形をサポートしていきたいと考えている。サステナブルな社会の定義はまだ確定していないが、生きとし生けるもの全てが幸せに生活できる、そんな社会であることは間違いないだろう。何度も書いてきたことだが、より多くの利益をより少ない人数で分け合うのではなく、より多くの人で分け合うことがサステナブルビジネスの基本であることは徐々にご理解いただけているのではないだろうか。今月は従来の銀行のあり方を覆すシステムを持つ最も貧しい人たちの自立を助けるバングラディッシュのグラミン銀行を紹介する。
グラミン銀行―Bank For the Poorest People (最も貧しい人々のための銀行)
<創設ストーリー>
グラミン銀行の創設者はチッタゴン大学経済学部の学部長を務めるムハメド・ユヌス教授である。最初はユヌス氏の故郷でもあるバングラディッシュの最も貧しい人たちに小額のお金を貸すことからスタートした。大学で経済学を教授していたユヌス氏がたった2セントの資金がないために、貧困から抜け出すことのできない人々に自分のポケットマネーを貸したことがきっかけだった。このような境遇の人は40人以上もおり、彼らが必要としていた総額はなんとたった27セントだった。
このような小額で人々を貧困から救えるのであればもっと多くの人を救えるはずだ、と考えたユヌス氏は最も貧しい人のために、担保なしに小額の利子で小額のローンを組む(マイクロクレジット*2)グラミン銀行を立ち上げた。
その後、予想をはるかに超えて利用者は増え続け、現在では200万人以上、利用総額は10億ドルを超える。さらに驚異的なことには返済率が98%、踏み倒しはたったの2%であるという。
<悪循環を打ち破るシステム>
この社会では、まだ「貧しい人々が貧しいがゆえに、資金調達ができず、最低限の生活を強いられる」というおそろしい悪循環がまかり通っている。
融資の仕組みは「借り手の返済能力」を土地ではなく「仲間からの信頼」で測るというもので、借り手は5人で1組のグループを作る。それぞれが自分の仕事を持っていて、自分の仕事に必要なお金や収益性について計画を立て、それをグループ内でチェックする。文字の読み書きができないものは融資を受けることができないので、融資資格を得るための識字教育も行っている。これは文字の読み書きは資金を有益に利用するために必要な能力だと考えるからである。現在、バングラディッシュ国内4万の村に1,175の支店を持ち、12,000人のスタッフが借り手に返済を促すだけでなく、生活水準を向上させるために活動している。貸付はいくつかの種類に分けられ、使途によって利子が異なる。事業資金のためのローンは20%、住宅ローンは8%、高等教育のためのローンは5%となっている。2003年度の累積貸付金は40億ドルにも上った。銀行の利用者の90%は今まで自由になるお金を持たなかった女性である。
<サステナブルビジネスのキーポイント>
2003年10月号のサステナブルビジネスで取り上げた”The Big Issue”の創設者、ジョン・バード氏が「ビッグイシューはチャリティではない」と強調していたように、ユヌス教授も、「これは慈善事業ではなく、きちんとしたビジネス。利子を取って収益を上げています」と言う。実際に設立以来、約20年間で赤字は3期のみだ。企業が社会に貢献することで利益を上げる。あくまでもビジネスであり、慈善事業ではない。これがこれからのサステナブルビジネスのキーポイントとなるだろう。
<社会における「信頼」の回復を目指して>
ユヌス氏が来日した際の講演の記録で最も印象的だった言葉をここで紹介する。
*3『クレジットという言葉はもともと「信用」とか「信頼」という意味なんですね。今の銀行制度と言いますのは、いわば「信用」。このクレジットという言葉を使いながらも実際は人を信用しない上に銀行制度自体が成り立ってきたと考えていいと言えますが、グラミン銀行の場合はそうではなくてそのクレジットの本来の字句のままに「信頼」の上にクレジットを推進していくと考えています。ですからたとえば借り手と貸し手との間でも法的なややこしい契約というのはグラミン銀行では存在しません。握手を交わしてお金を貸すだけです。それで何十億ドルものお金を実際に動かしております。』
信頼関係の基に成り立つはずのビジネスが現在ではまず疑うことから始まってしまっている。CSR(企業の社会的責任――これは最近では企業の社会的信頼度とも訳されている)が注目されていることからも分かるように、企業の信頼を取り戻そうとする動きが起こっている。グラミン銀行の成功は、貧困から人々を救うだけでなく、先進国の腐敗に満ちた社会において、人と人との信頼関係に希望を与えるという大きな役割も担っているのではないだろうか。
--用語解説--
*1 GRAMEENとははベンガル語で「村」という意味。すなはちGRMEEN BANKは「村の銀行」を意味する。
*2マイクロクレジット
マイクロクレジットは小額無担保融資という意味。最も持続的で効果的な貧困削減の手段とされ、いま世界中から注目が集まっている。グラミン銀行が始めたマイクロクレジット(少額無担保融資)は、ヒラリー・クリントン米上院議員が注目し、80年代、夫がアーカンソー州知事だった頃から、ユヌス氏と親交を持っていた。州内の貧困層の経済的自立のため、アーカンソー州内にマイクロクレジット機関を作る手助けをしたこともある。現在マイクロクレジットを手がける機関は、アジア、アフリカ、中南米に広がり2,186にも上る。
* 3「リザルツ・ジャパン―飢餓と貧困の解決に向けて政治的意志を創る国際市民グループ」のサイトから引用。ユヌス教授が来日した際の議事録があるので、是非ご覧いただきたい。http://www.results.jp/
GRAMEEN BANK(グラミンバンク)についてはこちら
http://www.grameen.com
(文責:編集部 西岡)(エコロジーシンフォニー2003年12月号)
--------------------------------------------------------------------------------