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【記者:William Pesek Jr.】
3月23日(ブルームバーグ):債券が魅力的だと考える向きは少ない。ただ、日本絡みの話となると事情はちょっと違ってくる。国債発行という無味乾燥な出来事に味付けをしようとしているからだ。
財務省は女優でモデルの小雪さんを起用し、個人向け国債投資の販売拡大を図っている。海外ではトム・クルーズ主演の映画「ラスト・サムライ」への出演で知られる小雪さんは、テレビやインターネット、街中の看板などに登場。市場関係者は冗談めかして、小雪さんを「ボンドガール」と呼ぶ。女性顧客向けには、ちゃんと「ボンドボーイ」を務める色男も用意されており、人気歌舞伎俳優の松本幸四郎丈が個人投資家に購入を勧誘する。
日興コーディアルグループは今月、主婦向けのテレビショッピング番組で国債の販売を開始した。ブレスレットやストッキングが紹介されるテレビショッピングで、金融商品が販売されたのはこれが初めて。今月行われる個人向け国債第6回の発行をにらんだものだ。日本の国債発行残高はすでに482兆円と経済規模の1.5倍近くに膨れ上がっており、借り入れはさらに拡大の方向にある。
売って売って売りまくる
政府当局は有名人を使って、日本が巨大な国債発行国であると世界に知らしめている。国債発行額を減らすことが必要だが、その方法の検討についてはあまり得意ではない。大量の国債発行を背景に、日本はチリやスロベニアを下回る信用格付けに甘んじている。
日本の景気回復が本物なら、デフレがインフレに変わるのは時間の問題だろうが、成長ペースがぜい弱とみる理由は無数にあり、日本経済を注視している大多数は回復を本物ではないとみる。債券利回りの上昇により、国債の発行が制限される可能性がある。日本政府は消費者物価の上昇を確信しているが、まだ現実とはなっていない。日本政府が今月初め、発行手段の多様化の1つとして、物価連動債を発行したのも、そうなっていない証拠だ。
多くの国でインフレが視野に入りつつあるのに対して、13年にわたるマイナス成長が続いた日本の物価動向は心配ないそうだ。問題は急激な利回り上昇が債券市場を崩壊させることだ。また恐らく、初期段階にある日本の景気回復にとって資金調達コストの上昇は最も避けたいはずだ。
それでも、日本は債務削減の態勢とはなってはいない。理由の1つとして、債券市場の特質が挙げられる。日本の国債市場は「需要と供給」という規則を離れたところにある。円建て国債は年金基金や保険会社などからの安定した需要に恵まれている。さらに日銀という献身的な顧客もいる。日銀は市場に資金を供給するために国債買い入れを増やしている。この結果、日本の10年物国債利回り1.34%に対し、米国3.76%となっている。
もう1つの理由として、ぜい弱なセクターを支援して雇用を創出する方法として、日本政府は国債発行を好むことが挙げられる。減っているとはいえ、日本では依然、多くの公共工事が続いており、その大半は国債で賄われている。政治家は借り入れを減らすことで景気が減速することを恐れている。
安全で簡単、でも賢明な投資先?
だから、日本政府は個人向け国債の販売拡大を目指す。幸四郎丈や小雪さん、日興のテレビショッピングは、個人向け国債投資は安全で簡単と説明する。変動利付き債が1万円から投資可能だ。だが、賢明な投資だろうか。投資家は郵便貯金や銀行預金を引き出して、国債を購入する可能性が高いとみられる。いずれにせよ郵貯は集めた資金を国債に投資しているから、郵貯から国債に流れる資金は金融でいう仮装売買に過ぎない。銀行についても同様だ。いわば、この売買はほとんど実のないものだ。
日本政府が大量の国債を発行し続けることによって、民間企業の社債発行の機会が狭められる「クラウディングアウト」は目新しいものではないが、長期的にみれば経済の活力を削ぐことにつながる。
アジア最大の経済力を使って、日本はいくらでも有名人を「ボンドガール」「ボンドボーイ」として起用し、個人に国債購入を訴える華やかな宣伝を打つことができる。しかし、日本が本当にすべきことは、債務削減の態勢に入ることだ。現実はそうなっていない。だから、心配なのだ。(ウィリアム・ペセック・ジュニア)
(ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Bond Girls and Bond Boys Plug Japan's Debt: William Pesek Jr. (抜粋)
更新日時 : 2004/03/23 15:30 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html