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不良債権問題と”おぜん立て”(ビル・トッテン)
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投稿者 エンセン 日時 2004 年 3 月 18 日 12:28:25:ieVyGVASbNhvI
 

 
不良債権問題と”おぜん立て”
H16/03/18

 今から二年前、私は「銀行は強盗、外資はハイエナ」(小学館文庫)という本を上梓(し)した。過激なタイトルは出版社がつけたものだが、アメリカが他の国に金融規制緩和を強いることによって(日本の金融ビッグバンもその一つ)、アメリカより金利の低い国の国民の預金をアメリカに還流させていること、日本企業が自動車や工作機械などさまざまなものをアメリカに輸出すると日本政府はその貿易黒字分のドルを使って米国債を買っていること、さらに政府が銀行の不良債権を早く処理することを重要政策として掲げているがそれは結果的にアメリカの金融機関をもうけさせることで、日本の納税者にとっては破滅になる、といった内容だった。


再上場で大もうけ
 さらにアメリカでは一九八〇年代初頭に貯蓄貸付組合(S&L)が破たんし、その破たん処理の過程で政府の競売に参加した投機家が投げ売り価格で不良債権を手に入れ、価値が上がってから転売して大もうけをする一方で、アメリカ国民は巨額の負担を強いられたという事例がある。

 今年二月、これと同じことが日本で起きた。新生銀行が東京証券取引所第1部に上場したのである。新生銀行とは旧日本長期信用銀行であり、戦後日本の産業金融を担ってきた旧長銀は一九九八年十月、債務超過のために金融再生法に基づき一時国有化され、政府が取得した長銀株はすべて紙クズとなった。

 売却先が決まったのは二〇〇〇年三月で、アメリカの投資会社リップルウッド・ホールディングスが率いる投資ファンドへわずか十億円で譲渡され、同投資ファンドは千二百億円を出して資本を増強した。旧長銀へは日本政府が不良債権処理に七兆八千六百億円を投じている。

 投資ファンドは再上場により、今回の売り出しだけで約千億円の利益を上げた。残る約三分の二の保有株を含めた上場益は初値で約一兆円にのぼった。こうして新生銀は、初値の時価総額で約一兆二千億円という、りそなホールディングスに次ぐ日本で六番目の銀行になった。


外資系が巨額利益
 新生銀の財務内容は連結自己資本比率20%程度と国内大手行と比べてずば抜けて高い。当初一兆八千六百億円あった不良債権残高は昨年末で千三百二十三億円に減った。しかしこれをもたらしたものは、国有化されていた長銀を売却するときに結ばれた「瑕疵(かし)担保条項」という、買い手が譲渡後三年以内に引き継いだ貸出債権の価値が二割以上目減りした場合は資産査定に傷があったとみなして政府に簿価で買い戻しを請求できるという契約から三百二十一社の額面一兆七百二億円の債権について新生銀がこの契約を行使したこと、貸倒引当金を除く八千五百三十億円を公的資金で買い取らせていたこと、旧長銀時代の融資を他行に肩代わりさせる「貸しはがし」を行い二〇〇一年には金融庁から中小企業向け融資が減少する「貸しはがし」で業務改善命令を受けたこと、そしてなによりも日本政府が巨額の公的資金を注入していたことである。さらにこれらすべてをルールに従って行うことができるよう政府がお膳立てをしたことで、旧長銀破たん処理でアメリカのS&Lと同様、投機家、それも外資系ファンドが巨額の利益を得たのである。

 それだけではない。今回の上場で手にした株式売却益は課税もされない。長銀買収のために作られた投資ファンドはオランダ国籍で、日本とオランダの租税条約では株式の譲渡益への課税権は源泉地国(日本)ではなく居住地国(オランダ)にあるという。そしてオランダの国内法は自国籍の法人が外国で得た投資収益は非課税としているため、投資ファンドは日本からもオランダからも課税されないのだ。今回、投資ファンドは保有する新生銀株の三分の一の株式を上場し、買収と増資に投じた千二百十億円を上回る二千二百億円の収益を手にした。最終的には約七千億円の上場益を出すことになる。


米政府の言うまま
 私が今回のことで問題にしたいのは「外資はハイエナ」ということではない。不良債権問題をアメリカ政府のいうままに行っている日本政府の姿勢である。有利な条件で格安に買い取り再上場で大もうけができるようおぜん立てをし、一方で日本国民は八兆円近い税金を負担し中小企業は融資の貸しはがしに合う。旧長銀を外資に売却する時点でこうなることはわかっていた。日本国民のための政府であれば、税法を改定して外資系が日本企業を買収するうまみをなくすなど早急に着手することは簡単にできたはずである。

 今回の新生銀の上場は、小泉総督とその代理人の竹中金融相、そしてその仲間たちが、アメリカがアジアの主要な植民地“日本”を略奪するのをいかに助けているかを示す一つの例にすぎない。しかし政府与党はどんな政策をとっても国民が無関心であることを知っている。この勢いづいた彼らの成功を打ち倒すことは難しいだろう。(アシスト代表取締役)

http://www.nnn.co.jp/essay/tisin/tisin0403.html#18

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