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【記者:日高正裕、乙馬真由美】 3月16日(ブルームバーグ):前日本銀行審議委員の中原伸之氏はこのほどブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、就任後1年が経つ福井俊彦総裁の金融政策運営について、その積極的な姿勢に一定の評価をしながらも、「政府との距離がなくなり、中央銀行の独立性に疑問符が付いている」と指摘。そのうえで「外国で福井総裁の評判が良いのは政府と一体になって動いているからだが、次に景気が下降局面に入ったとき、今の政策がもう1度テストされる」と述べた。
中原氏は1998年4月、新日銀法施行と同時に審議委員に就任し、4年間の任期を務めた。常に政策委員会の大勢に先んじて一段の金融緩和を主張し、日銀が 2001年3月に現在の量的緩和策に踏み切ったときも大きな原動力になった。その中原氏は福井総裁の金融政策運営について、まず「日銀の独立性という議論が、すっかり影をひそめたように見える」と語る。
「私が日銀にいた4年間、日銀は独立性に非常にこだわり、政府・財務省との距離をいかに取るかで腐心してきた。今は時代が変わり、役者も変わり、政府との距離が取りにくくなった。極端に言えば、政府との距離が消滅したと言っても良いだろう。政府と一体となって機動的に金融政策を行うようになった点で、かつての速水優前総裁の時代のようにギクシャクした関係はなくなった」。
中央銀行の独立性には疑問符
中原氏は一方で、中央銀行の独立性に疑問符が付くことによる副作用にも言及する。「政府と中央銀行の政策はどこかで必ずギャップが出る。両者はいずれ違ってこざるを得ないし、違ってくるだろう。そのとき日銀は、毅然として独立した政策を取れるのか」。日銀が今年初め、外国為替特別会計が保有する米国債を一時的に買い入れた措置についても、中原氏は「非常に問題含みだ」と指摘する。
「日銀は99年4月、それまで続けてきた政府短期証券(FB)の直接引受を停止した。せっかく独立性を得てやめたのに、元に戻ってしまった。しかも、為替介入の原資が足りないとは言っても、日銀に引き受けさせて資金を調達するのでは、予算制度のあり方に疑問を投げかけることになる。そういう便法が通用すれば、予算制度はいらなくなる。どうしても必要であれば、財務省は権限争いから反対しているが、日銀自身が市場から外債を買う方がずっとすっきりしている」。
中原氏はリスクを先取りする福井総裁の前向きな姿勢を評価したうえで、次のように語る。「速水前総裁は量的緩和を『やっても効かない。やるけれど効かない』と主張した。今は逆に、本当は効果が疑わしいことでも効いているように見せかけている。外国で福井総裁の評判が良いのは政府と一体になって動いているからだが、次に景気が下降局面に入ったとき、今の政策がもう1度テストされる」。
景気下降局面でどうするか
力強い中国経済やデジタル革命の恩恵もあって、日本経済は緩やかに回復しているが、それも「ほぼピークに来ている」と中原氏は見る。「私は審議委員時代から、日本の景気を判断するうえで米国株に注目してきたが、その動きがおかしくなっている。日銀は2000年夏にゼロ金利政策を解除したが、米国株はその年の初めにはピークを付けて下落していた。その後、2002年10月に底を打って戻ってきたが、既に戻り高値を付けて、中期的な下げ方向に入ったと見ている」。
中原氏がもう1つ注目するのが、景気動向指数の一致指数CIの動向だ。DIが景気の方向を示すのに対し、CIは景気の水準、いわゆる量感を示す。「一致CIは現在、過去2回の景気回復局面のピークと同じ水準に来ている。私が2000年夏のゼロ金利解除に反対したのも、一致CIが97年のピークに近づいていたからだ。私が指摘した通り、1999?2000年の景気回復局面は短命で終わった」。
中原氏は続ける。「中国も不動産市場にバブルの気配があり、財政、金融の引き締めで遅くとも今年後半に減速するだろう。国内の設備投資は回復しているが、これは主に輸出関連であり、輸出は目先ピークを打つだろう。消費は大企業製造業以外でリストラが続いており、大きく改善する見通しはない。これから循環的な下降局面に入ったときどうするのか、出口政策の前に考えなければならない」。
ストップ・アンド・ゴー
日銀が行うべき政策は何か。「福井総裁は就任早々、銀行株の買取額を増やし、資産担保証券を買い入れたが、企業金融に手を出したり、新しい市場を作ったりするのは、日銀の仕事ではない。福井総裁は『どんどんリスクを取る』と言っている。それが本来の金融政策に付き物のリスクなら良いが、日銀は本来の金融政策以外でリスクを取るべきではない」と中原氏は言う。本来の金融政策とは何か。
「中央銀行の仕事はマネタリーベース(日銀券と日銀当座預金と貨幣)をどう動かすかに尽きる。これを四半期ベースで前期比5、6%伸ばし、年率20数%伸ばすというのが私の提案だ」。ただ、当座預金残高は30?35兆円に膨らんでおり、中原氏の主張は結果としてほぼ実現しているようにも見える。「現在のマネタリーベースの伸びは振幅が大き過ぎる。このようにストップ・アンド・ゴーを続ければ、膨大な国債残高だけが残った公共投資と同じ羽目に陥ってしまう」。
中原氏は「期待への効果という点で、残高をいたずらに膨らませるよりも、加速度を持って着実に増やしていく方が影響が大きい。しかも、銀行貸し出しは 1997年3月のピークからここ数年は年5%ペースで減っており、過剰貸し出しはあと2年程度でほぼ完全に解消する。過剰貸し出しが解消する過程で起こる悪影響を量的緩和で和らげ、景気の底割れを防ぐのが日銀の役割だ」と主張する。
インフレ目標と国債買入増額
日銀は、資金需要がないのに当座預金残高目標を引き上げても、落札額が入札額を下回る札割れが起こり、目標を達成するのは難しいと主張してきた。「量的緩和に移行した2001年3月時点では、5兆円しか出せないという声が強かったが、実際は30兆円以上出せている。マネタリーベースは現在、前年比16%前後伸びているが、ここから落ちないよう量をさらに拡大する必要が出てくるだろう」。
中原氏はそのうえで「たとえば、3年後に消費者物価指数の前年比伸び率を2%にするという目標を掲げたうえで、必要があれば、日銀は現金から遠いものを順に買っていくべきだ。今みたいに1年以内の短期国債を買っていても効果は限られる。マネタリーベースを増やすのに最も適している長期国債だ。買入額は現在月1兆2000億円なので、少なくとも2兆円に引き上げるべきだ」と主張する。
「福井総裁は10日の参院予算委員会で『早めに金利が上向きに動き始めることをわれわれは最も恐れており、そこにしっかりフタをする』と述べた。これは、長期金利の抑制は日銀の仕事ではないという従来の主張から180度の転換だ。長期金利にフタをしようと思えば、いろいろなやり方があるかもしれないが、結局は長期国債を買わなければならなくなるだろう。少なくとも実質で2%、名目で4、5%の成長が2、3年続くまで、量的緩和を続けるべきだ」。
更新日時 : 2004/03/16 10:06 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html