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米国で利益と社会貢献の二つを同時に追う地域社会(コミュニティー)投資が急成長している。雇用問題や貧困地域の再生など社会問題の解決につなげようというもので、社会的責任投資(SRI)の一つとして注目されている。
ニューヨークから北へ電車で四十分。少し寂れた工場・倉庫群の中に急成長している新興企業がある。HDSコスメティックス・ラボ社。「DDF」ブランドで、有力百貨店も取り扱う人気スキンケア商品の会社だ。配送拠点を兼ねる本社ビルでは、地元で採用した二十歳前後の若い社員が出荷作業に忙しく働く。
地元採用が条件
「地域社会開発ベンチャーキャピタル(VC)に出会わなければこううまくはいかなかっただろう」。ジョセフ・コントルノ社長は振り返る。
プロ向け商品から一般消費者向け商品に手を広げようと出資者を探したが、答えはことごとく「ノー」。ハイテクでもバイオでもないからだ。VC五十社、銀行十行に断られ途方に暮れていたとき、人づてで訪れたのが地域社会開発VCだ。
担当者の第一の質問は「雇用をどれだけ生みますか」。工場は国内。地元で採用すると訴えた。「出資しましょう」。二〇〇〇―〇二年に三つのVCから総額二百十万ドルを得た。拡大策は成功。昨年の売上高は千五百万ドルと増資前の七倍に増えた。社員も五倍の百四十人に膨らんだ。今秋から地元高校と組んだ職業訓練プログラムも始める。
「地域の開発と企業の利益追求は両立する」。米地域社会開発VC協会のカーウィン・テスデル会長は言い切る。資本と経営知識を少し補えば成長のきっかけをつかめる中小企業は多い。公的な支援制度と違い、利益を上げるためにVCから役員も入るし、競争力を高めようと必死だ。
年金が貸し手に
民間の基金や年金なども着目し、新たな資金の出し手になってきた。二〇〇三年の民間調査では地域社会投資の資産残高は百四十億ドル。二年前に比べ八四%伸びた。
低所得者地域として知られるシカゴ市南部。ショアバンクは地元に特化して成功した草分け的な存在だ。かつて荒れ放題だった集合住宅に再投資して改修、価値を高めて地域に供給し直す。
ケガで消防士をやめ、住宅事業を興したアンドリュー・ブラウン氏も同行を頼った一人。「あまりに親身なのに驚いた」。仕入れた中古住宅を、腕のいい業者に委託して改修、値ごろな売値にして事業を広げている。
「低所得だから借金を返さないというのはウソ。大切なのは我々が顧客を知ること」と、ショアバンクのロナルド・グルジンスキ会長。貸倒率は年〇・二%と低い。貸付金利も他行より〇・五ポイント高い程度だ。資本効率は米系銀行でトップ二十に入る。
資金調達もユニーク。地元住民の小口預金を集めるほか、最近取り組んでいるのが「一%キャンペーン」。年金基金などに、資産の一%を預けてほしいと全米を行脚する。有力SRIファンドのドミニ・インベストメンツも「社会貢献になり、利回りも見劣りしない」と資金を預けた。ショアバンクにはアジアやアフリカなどから多くの研修者が訪れ、学んでいる。
(ニューヨーク
=藤田和明)
【図・写真】低所得地域に特化したショアバンクの成功は世界が注目する(シカゴ)