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日本政府・日銀官僚と財界人は未だにバブルの発生と崩壊の原因が理解出来ていないらしい。
2004年3月11日 木曜日
◆「貨幣数量説と通貨レート」について。 ニュースと感想 2月27日
前項では、「富の先食い」と「富の流入」について述べた。このうち、前者は、普通の景気回復にともなって現れる当然の現象であり、特に注意する必要はないだろう。問題は、後者だ。「富の流入」には、注意するべきだ。
「富の流入」すなわち「貿易赤字を出す輸入増大」というのは、貨幣数量説が成立しない。つまり、「生産しないで商品を得る」ということが可能だ。これは一見、「打ち出の小槌」があるように思える。非常に幸福な生活を送れる。しかし、その本質は、「借金」(外国への借金)なのである。幸福なように見えるのは、借金をして蕩尽しているだけのことなのだ。
さて。前項では、こういう「借金」の問題を指摘した。しかし、「借金」とは別の問題がある。それは、「通貨レート」の問題だ。
「富の流入」すなわち「貿易赤字を出す輸入増大」があるときには、通貨レートが正常ではないのが普通だ。通貨レートが正常であれば、貿易赤字を出さないように、通貨レートはうまく調整されているはずだ。ところが、何らかの為替介入がなされていると、資本市場を通じて、通貨レートが歪む。たとえば、日銀が円売り介入をすると、円安・ドル高になる。かくて、ドルが過度にドル高となり、通貨レートが歪み、その結果、米国に貿易赤字が発生する。
さて。こういう為替介入がなされると、貨幣数量説にも影響が出てくる。そのことを示そう。
バブル期には、日銀が円安介入をした。そのせいで、国内には、大量の円があふれた。こうして貨幣供給量が増大したのだから、当然、物価は上昇していいはずだった。ところが、現実には、物価はほとんど上昇しなかった。つまり、貨幣数量説は、成立しなかった。
では、なぜか? それは、次の二通りで説明が可能だ。
(a) 輸入品価格が大幅に下落したので、それが物価下落圧力となった。
(b) 円表示では物価は上昇しなかったが、ドル表示では円高の分だけ物価は上昇した。
この二つのうち、どちらの解釈を取っても、本質的にはあまり変わらないだろう。ともあれ、この二つの考え方を取れば、次のように説明できる。
レーガノミックスの反動として、大幅な円高が発生した。
日本には貿易黒字が出ていたのだから、円高は当然であったが、産業界の意見を受け入れて、日銀が過度に円安介入をした。
同時に、円高不況を避けるためという名分で、低金利・量的緩和が過剰になされた。
これらは、円高不況の発生した初期には意味があったが、円高不況が解決して景気が拡大したあとでも、なおも継続された。
このころ、物価上昇率は、低率だった。そのことから、「インフレではない。まだまだ景気期は加熱していない」と見なされた。これが、量的緩和が継続した理由となった。
円安介入と量的緩和の結果として、貨幣供給量は非常に増えた。
貨幣供給量は非常に増えれば、本来ならば、物価が上昇するはずだった。ところが、円安のせいで、円表示の物価は上昇していなかった。(貨幣数量説の不成立。)
なのに、日本銀行は貨幣数量説を信じた。そして、「(円表示の)物価は上昇していないから、物価上昇を抑制する必要はない」と判断して、量的緩和を継続した。
このとき、増えた貨幣が投資と消費の双方に平等に行けば、単純なインフレが発生して、日銀の判断は誤らなかったかもしれない。ところが、現実には、そうではなかった。「輸入品価格の下落に対抗して、コストダウする必要がある。国際競争力を高めるには、賃金水準を下げる必要がある」という経団連の方針のもとで、労働分配率が抑制された。その結果、消費が抑制された。結果的に、行き場をなくした大量の資金は、消費のかわりに、投資に向かった。
大蔵省は、「財政再建」の名の下で、借金返済を続けた。そのことで、(民間の)投資資金がどんどん増えていった。
投資資金のうちの一部は、設備投資に向かった。しかし、しょせん、消費が抑制されているだから、設備投資ばかりをするわけには行かない。また、人手不足になっていて、設備投資をしても、人間を雇えなくて、生産を拡大できない。これらの理由により、投資資金は、設備投資よりも資産投資に向かった。
資産市場に大量の資金が流入した。資産インフレの発生。バブルの発生。
それでも日銀は量的緩和を継続し続けた。
バブルの膨張。
やがてついに、日銀は量的緩和の方針を撤回して、「総量規制」に踏み切った。
バブルの破裂。
景気の急降下。デフレへ向かう。
ここでは、7番目の「貨幣数量説の不成立」ということが重要だ。通貨レートの変動により、貨幣数量説は「不成立」になっていたにもかかわらず、「成立」と信じた日銀は、「物価水準が低いから、貨幣供給量は過大ではない」と判断した。ここに、根本的な問題があったわけだ。(これ以外の諸点については、以前も同じようなことを述べたことがある。)
では、正しくは、どうするべきだったか?
円高があれば、物価下落が起こるのが当然だ。とはいえ、物価下落を起こすことは、現実には困難だ。輸入品価格の下落に応じて、国内品まで下落するようになると、国内産業も困る。これは「デフレ」と呼んでもいいだろう。(物価下落があるから。)
だから、ここでは、物価下落を阻止するために、貨幣供給量を増加させてもいいのだ。つまり、「円高不況を阻止するために、貨幣供給量を増やす」という金融政策それ自体は、間違いではない。ただし、その方法が問題だった。
第1に、「円安介入」などは過度にするべきではなかった。「1ドル=80円」というのは急激すぎるから介入してもいいが、「1ドル=100円」程度で、日本がまだまだ貿易黒字を出していたのであれば、さらに「円安介入」を続けるべきではなかった。
第2に、「量的緩和」を過度にするべきではなかった。そうすれば、「投資」のための資金供給が増えるが、「投資」ばかりを増やしても、意味がない。ここでは、「消費」のために資金供給を増やすべきだった。すなわち、「タンク法の減税」をするべきだった。このことによって、「単純な物価上昇」を起こすべきだった。
第3に、政府は「財政赤字の縮小」などをやたらと実行するべきではなかった。「借金返済」というのは「投資拡大政策」のことである。それは、「投資不足」のときにはなすべきことだが、すでに「投資過剰」であるときには、輪をかけて「投資拡大」を促進する必要などはなかったのだ。「増税によって財政赤字の縮小」をめざすよりは、「減税によって消費の拡大」をめざすべきだった。(ただし、減税のための資金は、民間引き受けの国債ではなく、日銀引き受けの国債。つまり、タンク法。)
現実には、この三つとは正反対の政策がなされた。つまり、「円安介入」は過度になされ、「量的緩和」も過度になされ、「財政の健全化(借金返済)」も過度になされた。そのあげく、「投資」ばかりに金が大量に流入した。その結果が、「資産インフレ」つまり「バブル」である。
結局、間違った信念に基づいて、大失敗に至る道をあえて選んだからこそ、見事に大失敗を演じたのである。それがバブル期の日本であるわけだ。そして、その根本には、「貨幣数量説を盲目的に信じる」という、マネタリズム流の単細胞な思考があったわけだ。
そして、こういう間違いを犯さないために真実を見抜く学問分野が、ミドル経済学である。
◆ここ数日の円安、この傾向が続くとは思わない=日本経団連会長
[東京 23日 ロイター] 日本経団連の奥田会長は定例会見で、ここ数日の円安について、この傾向が続くとは思っていない、と述べた。
奥田会長は、23日午前にドル/円が一時109.39円まで買い進まれ、約3カ月ぶりにドル高/円安水準を更新するなど、急激に円安に振れていることに関して、「為替の需給要因とトレーダーの心理が動いている」と指摘。その上で、今後の見通しについて、「この傾向がどんどん続くとは思っていない」と語った。
また、同会長は、もともと「(輸出企業にとっては)1ドル110円から120円の間で安定的に動いて欲しい」との考えを繰り返し述べており、現在のドル/円水準も、「(1ドル=)110円に達していないので、まだ円高だ」との認識を示した。(ロイター)
[2月23日17時45分更新]
(私のコメント)
政府・日銀は相変わらずバブル前の誤った政策を続けているとしか思えない。「円安介入」は過度になされ、「量的緩和」も過度になされ、「財政再建」も過度になされている。ただバブル前と違って、物価は安定しているというより値下がりしてデフレであり、土地や株は大暴落の真っ最中である。しかし円高ということで企業のトップの言うことが優先されて、労働者への賃上げに結びつかず消費は低迷した。
現在の政府・日銀の政策も当時のそのままの政策であり、労働者の賃金はむしろ低下している。だから物価も低迷している。もしバブル前も現在も円高に伴って労働者の賃金も、上げていたらバブルの崩壊も防げていただろう。輸出企業にとっては円高で競争力が落ちて賃上げなんてとんでもないというところだ。
しかし輸入企業にとって見れば円高は儲かってしょうがなかったはずだから賃上げも行われるべきだったが、輸出企業にならって賃上げは行われなかった。もし為替が固定レート時代だったならば海外からの資本の流入は賃上げにつながり、物価の値上がりで不良債権の発生も自然解消された。昭和47年のミニバブルの時がそうだった。
当時の儲かって仕方がない輸入企業は労働者の賃上げをせず、企業の利益はどこへ行ったのかというと株や土地への投機に流れた。それがバブルの正体だ。当時の企業は競って土地や株を買い漁り財テクブームに沸いた。しかしサラリーマンはたいして給料が上がらなかったから消費はさほど伸びず物価の値上がりは低かった。
現代も円高で儲かって笑いの止まらない企業はあるはずだ。しかしそのようなところは目立たないようにしているから気がつかないだけで、大手の輸出企業も生産をアジアや中国に移して円高でも利益が上がるようになっている。ところが表向きには円高で大変だと誤魔化しているのだ。
それでも未だに企業が不振なのはバブルの時の清算がまだ済んでいないためで、政府・日銀が適切な手を打っていれば、バブルの清算はもっと早くできたはずだ。ところが政府・日銀は相変わらずの財政政策でバブルの火種をまた作り出している。円安介入により金融の量的緩和(非不胎化介入ならば)となる。どうせなら円安介入に使う金があるのならケインズ政策を行うべきだろう。経済コラムマガジンでは次のように指摘している。
為替介入資金は、外為政府短期証券(FB)の日銀引受けで調達されている。しかしこれは国債の日銀引受けとなんら変らない。そしてこれはまさに筆者達がずっと主張してきた通貨増発政策(セイニア−リッジ政策)そのものである。セイニア−リッジ政策を行なうなら、何故、その資金を財政政策に使わないのかが誰でも持つ疑問である。
これは「構造改革で経済成長する(つまり景気回復に財政出動は不要)」といった明らかな「嘘」をなんとしても守りたい人々がいるからと考える。財政出動を行ない、効果が現われたならば、自分達のウソがバレるのである。それを誤魔化すために、効果の薄い為替介入を常軌を逸した規模で行なっているのである。彼等も必死である。しかし円資金を海外に流出させて、その時には円高を阻止できても、流出した資金がさらに収益を生み、これがまた次ぎの円高圧力となる。このようなことをいつまでも続けるのではなく、内需を拡大させ、長期的な円安を図るべきである。
(私のコメント)
国内の財政政策に使えばGDPも増えるし、税収も伸びることで財政の再建にもつながり、金融の量的緩和は失業の減少と所得の増大によって、消費の増大に繋がる。消費の増大は物価の値上がりとなって不良債権は解消してゆく。このような循環が起きて景気は回復してゆくはずであるが、財務省と日銀のバカ官僚達は自分達がバカであることがばれるのが恐ろしくて、狂気の円安介入を行っているのだ。