【コラムニスト：Willie Pesek】　　３月８日（ブルームバーグ）：「核兵器問題はどうなるのか」。韓国で事業展開する外国企業向けのコンサルティング業務を手掛けるマーケット・フォースのジェームズ・ルーニー社長は最近、頻繁にこんな質問を受ける。同社長の答えはこうだ。「北朝鮮問題が持ち上がってくるだろう。それが大前提だ」。

　　アジアの多くの国が諸問題を抱えている。核による全滅の脅威が常にあるなかで事業展開する企業はほとんどない。リスクはわずかだが、完全には排除できないリスクだ。孤立した北朝鮮の指導部がどう振る舞うのか、誰も本当のところは分からない。

　　極端な事例ではあるが、朝鮮半島情勢は、アジアでことし最大の予想外の出来事が経済ではなく、政治となり得ることを示しており、そのことに留意すべきだ。バンク・オブ・アメリカ（香港）のチーフストラテジスト、フランク・ゴン氏は、「われわれの見方では、市場は政治リスクを十分に反映していない」と言う。

　　今後数カ月、香港、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、韓国、台湾では選挙が話題となるだろう。予想外の結果となれば、市場は動揺しかねない。北朝鮮の核問題をめぐる交渉は引き続き重大な関心事だし、香港で広がりつつある民主化運動や、それを押さえ込もうとする中国政府当局の強硬策からも目が離せない。中国と台湾の関係も市場に徐々に影響してくるだろうし、もちろん、大規模なテロ攻撃のリスクも排除できない。

　　　　　　　　　　　　　　経済に焦点

　　地政学的懸念はまだ表面化していない。むしろ今の関心は、域内の株式・為替相場を押し上げている好景気に集まっている。ここ数年アジアを避けていた投資家が先を争って舞い戻っているなか、現在の最大の懸念材料は、アジアへの大量の資金流入により、1997年のような資産バブルの不安が高まるのかどうかという問題だ。

　　ただ、現在は、金融システムが健全化され、対外債務も減少、透明性が改善されているだけに、それほど大きな心配ではない。アジアは新たな危機への免疫力は弱いものの、金融インフラは1990年代の後半よりもはるかに整備されている。

　　むしろ、ぼんやりと大きく現れてきている政治のリスクの方が心配だ。フィリピンは先週、国債入札をまたも中止した。元映画俳優と現職大統領が戦うことしの大統領選挙について警戒する投資家は、高い利回りを要求したし、弱腰の政府当局は償還期間の短縮を検討中だ。短期債の大量発行が1997年のアジア危機を招いた一因であることを考えると、これは良くない前兆だ。

　　インドネシアの不安定さに加え、中国政治の影響も、徐々にアジア市場に浸透するだろう。３月20日の台湾総統選を前に、中台当局者による舌戦が予想される。陳水扁総統が再選され、台湾独立を宣言する気になったとしたら、市場は歓迎しないだろう。投資銀行の間では、人民元の早期切り上げが予想されているが、「不愉快な政治展開となれば、人民元相場制度の見直しはさらに遅れるという副作用も出る可能性もある」とゴン氏は指摘する。

　　　　　　　　　　　　米国発の政治的不確実性

　　政治的な不確実性は米国発の可能性もある。韓国では一般に、朝鮮半島情勢の緊迫化はブッシュ米政権の強硬な北朝鮮政策が原因だと批判されている。米民主党候補がことしの大統領選挙で勝利すれば、北朝鮮問題に対する世界のアプローチも異なってくるかもしれない。

　　アジアは確かに、経済的課題に直面している。株高で大量の資本が流入し、債券市場も投資妙味が比較的高い。信用格付けは改善され、為替相場は通貨高是正措置にもかかわらず上昇している。新興市場は全般に再び人気が出ている。タイ株式相場は昨年117％の急騰を演じ、インドネシア株も63％上昇した。04 年に入っても、これまでのところ、アジア関連ファンドには1996年のような力強い資本流入が見られるだけに、投資家はバブルの疑いをぬぐい切れないでいる。

　　だが、政治的な失敗はもっと大きな問題を招きかねない。なぜかといえば、アジア市場がそのことを十分考慮していないからだ。（ウィリアム・ペセック・ジュニア）

（ウィリアム・ペセック・ジュニア氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です）

原題：It's Not Asia's Bubbles, It's the Politics: William Pesek Jr. （抜粋）

更新日時　: 2004/03/08 15:08 JST

http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=a8uOVjmiWnLY&refer=jp_regions

　次へ 　前へ

国家破産34掲示板へ

フォローアップ:

　

　

　

拍手はせず、拍手一覧を見る

---

★登録無しでコメント可能。今すぐ反映　通常 ｜動画・ツイッター等 ｜htmltag可（熟練者向）
（タグCheck ｜タグに'だけを使っている場合のcheck ｜checkしない）（各説明）

（←ペンネーム新規登録ならチェック）
↓ペンネーム（2023/11/26から必須）

↓パスワード（ペンネームに必須）

（ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。）
↓画像認証
（ 上画像文字を入力）
ルール確認＆失敗対策
画像の URL (任意):

投稿コメント全ログ 　コメント即時配信 　スレ建て依頼 　削除コメント確認方法

---

★阿修羅♪　http://www.asyura2.com/ 　since 1995
　題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,ＭＬを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。