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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05020901.htm
イギリス食品基準庁(FSA)が8日、1990年に死んだスコットランドの山羊がBSEに罹っていたかもしれないと環境・食糧・農村省(DEFRA)から通報を受けたことを発表した(FSA Press release:Possible finding of BSE in a 1990 UK goathttp://www.food.gov.uk/news/pressreleases/2005/feb/1990goatpress)。この山羊の保管されていた組織を最近検査したものだが、BSEと確認するためにはさらに検査が必要で、確定までには2年かかるという(この山羊の組織のマウスへの投与の結果を見るため)。もしBSEと確認されれば、先月確認されたフランスの山羊に次ぐ2例目の山羊のBSEということになる。今回の発見はフランスにおける発見を受けた検査拡充の結果と見られ、今後も山羊のBSEのケースが増える可能性がある。
その食品安全上の意味について、FSAは、1990年からなお生き残っている山羊はほとんどいないだろうし、現在の英国の山羊群にBSEは発見されていないが、山羊のBSEは何世代も伝えられてきた可能性があり(つまり、現在も低レベルながら存在する可能性があり)、現在の予防的コントロールによってもあり得る感染性が完全に排除されることはないだろうと言う。
それでも、乳や乳製品については、健康な動物からの乳ならばいかなるTSEのリスクもありそうにないという欧州食品安全庁(EFSA)の最新の見解に従う。牛肉と異なり、感染性が否定できない山羊肉については、EFSAがリスク評価を行っている最中で、海綿状脳症委員会(SEAC)にも意見を求めており、その結果が出るまでは食べないように勧告するつもりはないと言う。当面は、特定危険部位を除去し、BSEを含む伝達性海綿状脳症(TSEs)の症候が目に見える動物を食料チェーンから排除するという現在のリスク管理措置を変えるつもりはないということだ。フランスの対応とほぼ変わらない(⇒フランスの山羊、BSEと正式確認,05.1.31http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05013101.htm)。
ただ、人のvCJD感染リスク評価において、山羊から来るリスクを全く無視するわけにはいかなくなったのは確かだ。欧州委員会は、既に山羊の肉と肉製品の定量的リスク評価をEFSAに諮問している。
日本では、専門家や「この問題に詳しい」人が一人も出ないだろうと保証していたvCJD死者が確認されたばかりだ。この確認で、vCJDリスクの定量的評価には測り知れない不確定要因があることがはっきりした。この時代、それ自体が不確実な国内の牛からくるリスクだけを取り出してvCJD発生数を予測するなど、まったくもって無意味であることを現実が立証した。
英国で感染した例外的事例だと言い逃れることができるかもしれない。だが、たった1ヵ月の滞在での感染だとすると、人は、どこで何から感染するか分からないという現実的脅威に常に曝されることになる。発症率がいかに小さいと言われても、「ユースホステルを利用した貧乏旅行だったから、町の食肉店でつるされた牛肉を買ってはホステルで料理していたし、牛肉は毎日食べていた。後で、ミンチだけでなく、そうした牛肉にも『肉が甘くなる』という理由で脳みそを振りかけていたと聞いたが…。不安にはなりますよ」という、89年夏の2ヵ月間、自転車で英国を旅行した会社員男性(特報:英短期滞在で変異型ヤコブ病 東京新聞 2月8日 朝刊)の不安は消えない。
そのうえ、BSEは、今や世界中のどこの国にも広がっている可能性がある。さらに、山羊からのリスクもあるかもしれない。ということは羊からも、はたまた別の動物からも。まったく、感染源はどこに転がっているか分からない、どこにでもあり得る、vCJDリスクの定量評価など誰にもできないだろう。人間、とんでもないものを生み出してしまったものだ。もはや、適切なリスク管理も不可能なのかもしれない。
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