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◇荷揚げ時や搬送中、こぼれた種子発芽
全国各地の港湾の周辺で、ナタネなど輸入した遺伝子組み換え(GM)作物の自生が相次いで見つかっている。荷揚げ時や搬送中にこぼれた種子が発芽したらしい。農水省などは「生態系への影響はない」と言うが、96年に輸入が始まったGM作物が人の管理を離れて拡散している実態が浮かび上がった。環境省や市民団体はGM作物の自生の広がりを探る全国調査に乗り出した。【西川拓】
▼ナタネや大豆が…
国内でGM作物の自生を初めて確認したのは、昨年6月にまとまった農水省の調査だった。
茨城県・鹿島港の周辺を調べた結果、荷揚げ地点の半径5キロ以内で収集したナタネ7本のうち2本、種子20個のうち6個がGMだった。除草剤でも枯れないようにするため人為的に組み込んだ遺伝子が検出された。
農水省の発表後に名古屋市の市民団体が四日市港(三重県)でGMナタネの自生を確認した。その後も千葉港や名古屋港、清水港(静岡県)、博多港(福岡県)などで地元の市民団体がGMナタネを相次いで見つけた。
清水港では、除草剤や殺虫剤への耐性遺伝子を組み込んだGM大豆やGMトウモロコシの自生も見つかった。国立環境研究所が昨年7〜8月に実施した調査では、鹿島港から約30キロ離れた千葉県内の国道沿いでも、GMナタネが自生していた。
GM作物が国内で本格的に商業栽培されたことはない。輸入時には、生態系への影響について、農水省と環境省が非組み換え作物と生育や繁殖の能力に差がないことを確認している。両省は「こぼれた種子が発芽して在来種と交雑しても、繁殖能力は低い。在来種を駆逐したり、交雑種が広がる可能性はない」との立場を崩さない。
▼市民初の全国調査
一方、市民団体「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」の天笠啓祐代表は「試験データを取得した実験場は、自然界に比べると規模が小さい。GM作物が自然界にどんな影響を及ぼすかは、よく分かっていない」と反論する。
同団体はナタネの開花期にあたる今年3〜5月に、全国に10カ所ある除草剤耐性ナタネの輸入港でGMナタネの自生状況を調べる。GM作物の自生の全国調査は初めてだ。ナタネ油の製造工場周辺や輸送経路の道路なども調べる。
環境省も03年度から、関東地方の輸入港と河川敷でナタネや近縁種の調査をしている。03年度は鹿島港と茨城県や埼玉県内の河川敷計77カ所を調べたが、組み換え遺伝子は検出されなかった。
鹿島港でGMナタネが見つからなかったことについて、環境省野生生物課は「農水省とは調査した時期や場所が異なるためだろう」と言う。今年度以降、2〜3年おきに10カ所の輸入港周辺を調べ、GMナタネの広がりを監視するという。
▼雑種は見つからず
現在、利用が認められているGM作物はトウモロコシ、綿、イネ、芝、カーネーション、大豆、ナタネ、パパイアの8品種計52種類。中でもナタネは近縁種が多く、交雑しやすいとされる。
国立環境研究所生物多様性研究プロジェクトの中嶋信美総合研究官は、GM大豆が野生種のツルマメと交雑することを実験で02年に確認した。では、自然界ではどうか。
中嶋さんは昨年、鹿島港近くで自生するGMナタネから約3メートル離れた場所に近縁種のカラシナが群生しているのを見つけた。その種子約3600粒を調べたが、除草剤耐性遺伝子は検出されなかった。
関東地方の河川敷や観光用に菜の花を栽培している道路など49地点のナタネも調べたが、除草剤耐性を持つ個体は確認されなかった。
中嶋さんは「開花前に刈り取るなどしっかり管理すれば、雑種が広がることは考えにくい。しかし、確率は低くてもゼロではない。ナタネや大豆は輸入に頼らざるを得ない以上、GM作物が日本の生態系でどういう挙動をするのか研究しておくべきだ」と指摘する。
◇独自規制の自治体も
GM作物の栽培を独自に規制したり栽培指導指針を定める自治体も出てきた。GM作物に対する消費者の不安が根強く、風評被害を防ぎたい自治体の意向が根底にある。
北海道は2月の道議会に、GM作物の屋外栽培を規制する条例案を提出する。専門家による独自の委員会で栽培計画を審査し、必要に応じて知事が計画の変更を命令できる。無届け栽培には懲役や罰金を科す内容だ。
滋賀県は消費者に直接届く「商業用栽培」に限り、生産者にGM作物の栽培自粛を求める指針を策定した。茨城県も栽培前に県への情報提供や近隣の耕作者らの理解を得ることなどを盛り込んだ指導方針をまとめた。
食品安全委員会が昨年5月、468人の食品安全モニターを対象に実施した意識調査(有効回答率97・4%)によると、74・7%の人がGM食品に対して「非常に不安」「ある程度不安」と答えた。不安の理由は「科学的根拠に疑問」が47・2%と最も多く、「安全性に対する情報不足」が14・4%、「規格基準や表示の規制が不十分」が12・3%と続いた。
毎日新聞 2005年1月17日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20050117ddm016040076000c.html