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月刊日経サイエンス 2004年10月号
表紙を飾るカメラ目線の牛たちが感染しているわけではないのですが,食の安全を大きく揺るがしたBSE(いわゆる狂牛病)が今月号のトップ記事です。プリオンの発見者であるプルシナー本人が,全頭検査の必要性を説きます。
プリオン研究の第一人者である著者は,食肉への信頼を取り戻すには全頭検査の意義を改めて認識すべきだと主張する。生きた牛でのプリオン検出を目指す最新検査法についても紹介。
http://www.nikkei-science.com/
BSE阻止の決め手 発病前にプリオンをつかめ S. B. プルシナー
昨年12月,米国で初めて牛海綿状脳症(BSE,狂牛病)の感染牛が見つかった。その後,世界58カ国が米国産牛肉の輸入禁止措置を取り,米国の食肉産業は危機に陥っている。万一BSE感染牛を食べた場合,異常プリオンタンパク質が人の体内でどのように振る舞うのか,そのメカニズムはわかっていない。しかし,感染牛が原因とみられる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は英国を中心に約150例が確認されており,食肉の安全確保は政府にとって最優先すべき課題になっている。
BSEを食肉に持ち込まないようにするには,感染牛の早期発見が何より重要だ。現在,BSEの検査法として,免疫組織化学法や免疫測定法(ウエスタン・ブロット法など)が使われているが,検査にかかる時間やコスト,検出可能なプリオンタンパク質の量など,改良すべき点も多い。これに対し,著者らは構造依存性免疫検査法(CDI)という新しい検査法を開発した。CDIは従来の方法よりも感度が高く,判定までの時間も短縮できるという。さらに将来は尿や血液からも診断できるようになる見込みだ。
異常プリオンタンパク質が原因となるプリオン病には,感染や遺伝するもの以外に自然発生するものがある。こうした孤発例はある一定の割合で集団内に生じるため,感染対策だけではBSEを排除することはできない。現在のところ,プリオン病の死亡率は100%だ。著者は,この致死性病原体から市民を守るには,食肉となるすべてのウシを検査する方法が最も有効と説く。
キーワード:エライザ法/迅速検査/バイオアッセイ/感染型プリオン/SRM
著者 Stanley B. Prusiner
カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の神経学・生化学の教授。米科学アカデミー,米国医学協会,米国哲学協会の会員。1997年にはプリオン研究でノーベル生理学・医学賞を受賞。本文はScientific American誌に掲載された3度目の論文である。情報開示の精神からプルシナーはインプロ・バイオテクノロジー社(InPro Biotechnology)という企業の設立に言及している。この会社は数種類のプリオン検査法を提供しており,いくつかはベックマン・コールター社(Beckman Coulter)にライセンスを供与している。