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(回答先: 全米食肉輸出連合会、朝日新聞一面ぶち抜きの米国牛肉安全広告(農業情報研究所) ― BSEクイズに解答してみて下さい。 投稿者 シジミ 日時 2004 年 7 月 21 日 20:00:14)
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04072101.htm
04.7.21
昨年末の米国におけるBSE発見を受けた日本の米国牛肉禁輸以来、日本の全頭検査症候群が米国に伝播、米国農務省(USDA)の沈静の努力にもかかわらず、相変わらず処々に蔓延しているようだ。7月21日付の『日本農業新聞』によると、都内で同紙のインタビューに応じた食肉加工最大手であるタイソン・フーズ社・パスコ工場(ワシントン州)労働組合代表メルキアデス・ペレイラらが、「早期の輸入再開に向け、日本の消費者が望む全頭検査に米国政府は応じるべきだとの考えを強調した」という。日本へ輸出したいあまりの感染だろう。症候群発生源の日本の罪は重い。しかも、それは重症化し、根治不能の状態にまで立ち至っているようだ。
現在の検査ですべての感染牛が発見できないことは、世界中のBSE専門家が認めている。検査される延髄閂部に検出可能なレベルの異常プリオン蛋白質が貯まる以前の潜伏期の感染牛は、この検査では発見できない(また、検査標本採取の際にこの小さな部位が的確に切り取られないという人為的ミスもあり得る)。これは、日本の食品安全委員会・プリオン専門調査会も認めたところだ(食品安全委員会BSE対策見直し、結論を先延ばし、リスク評価は支離滅裂,04.7.19http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04071901.htm)。従って、現在の検査は、発症間際(一般的に発症の3-6ヵ月前と推測されている)にまで病気が進展した感染牛を発見できるかぎりではリスク軽減に役立つが、安全を「保証」するものではない。
ところが、現実には、多くの国民は、事実上、全頭検査があれば感染牛は市場に出ることはないという固定観念にとらわれてしまった。これは政治家、役人、消費者に対して指導的な立場にある人々、すべての責任だ。だが、米国牛肉輸入再開問題で苦慮する政府や役人は、自らが播いた全頭検査症候群を沈静しようと躍起になり始めた。役人たちは検査に限界があることは最初から知っていたが、最近ではそれを公然と言い放つ。そして、見逃される感染牛があったとしても、特定危険部位(SRM)を除去すれば大丈夫と盛んに強調している。昨日伝えた全米食肉輸出連合会の主張と瓜二つだ。プリオン専門調査会の報告案が出ると、坂口厚生労働大臣は、「私は全頭検査を決めた張本人。急いでやることには反対」と言いながら、全頭検査導入には牛の生後月齢特定の困難という事情が関連していたが、今はトレーサビリティーの導入で事情が変わったと検査緩和に含みをもたせ、亀井農相も「農水省としては委員会の議論を注視したい」と食品安全委員会に下駄を預けた格好だ(日本農業新聞、7.17)。
しかし、消費者団体等の指導者は、依然として全頭検査を高く評価、調査会報告が検査の限界を認めたことに猛反発しているようだ(同上)。ひょっとすると、この症候群は命取りになるかもしれない。全頭検査をしても感染牛が見逃されて市場に出回る可能性があるという否定できない事実を認めないかぎり、専門家や役人、そして米国政府・業界が強調するような特定危険部位の除去で、あるいはそれだけで真に安全が確保できるのかといった問題に本格的に踏み込むことができないからだ。いまは、検査の限界を認めた上で、現在の諸施策(検査以外の)に問題はないのか、何が必要なのか、緊急の検討が必要なときだ。そうしなければ、多くの国民が納得できないままに、米国牛肉輸入再開の流れに押し切られてしまうだろう。
彼らは、また政治家も、一部マスコミも、全頭検査は「安全」だけでなく、消費者の「安心」も提供してきたと言う。だが、「安全」の根拠を欠いた「安心」の売り込みは、消費者を欺く行為だ。「BSE検査合格」というラベルは、本来は「BSE検査をしたけれども感染が発見されなかった」という意味しかないのに、あたかも感染がないかのように誤認させるものであることは明らかだ。
特定危険部位(SRM)については、プリオン専門調査会も、現在のSRMは、極めて僅かで、検査の感度にも限界のある試験で感染性が認められたものに限られており、現在SRMとされている部位の除去だけでは安全が保証できない可能性があると指摘している。その上、と畜・食肉処理の工程でSRMが完全に除去されず、また食肉部分がSRMに汚染される場合があることも指摘している。全頭検査症候群は、このような問題への注意さえ逸らしてきた。SRM除去は制度化されていても、決して安心できるようなものではない。
WHOもいうように、最善の安全策は、感染牛すべての組織を食物連鎖から排除することだ。だが、その完全な実行のためには、感染牛すべてが発見されねばならない。現在の検査をもってしてもこれが不可能なことは上に述べたとおりだ。だとすれば、疑わしい牛(いわゆる感染牛発見の際に処分される擬似患畜、原因不明の死亡牛・病牛等)は徹底的に排除し(そのためには、個体識別システム・トレーサビリティーの確立が不可欠だ)、新たなBSE発生を可能なかぎり抑える(肉骨粉禁止)しかない。BSEは未解明な部分の多い病気であり、これらによっても安全が「保証」されるわけではない。だが、これらが徹底されれば、考えられるかぎりでの最大のリスク軽減が可能というのが現在までの知見・経験が示すところである。こうした措置があるのか、どこまで徹底しているのか、それが早急に検証されねばならない。日本にも多くの問題が残っているだろうが、米国については問題が多すぎる。
最初の感染牛の出自の特定にも苦労したように、義務的な個体識別システム・トレーサビリティーの確立がいつになるか分からない米国では、疑わしい牛が徹底して排除できる保証はなく、検査対象とする死亡牛やダウナーカウでさえ、レンダリング工場で待ち構え、あるいはゴミ捨て場をあさって探し出している始末だ(米国農務省監査局、省のBSE検査を批判 省専門家は過去のことと一蹴,07.7.15http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04071501.htm)。肉骨粉禁止の徹底は不透明、欠陥だらけの交叉汚染防止措置でさえ、業界の反対で実現の見通しが未だに立たない(米国FDA、BSE感染防止ルール強化を発表、なお抜け穴、実施も何時のことか,04.7.10http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04071001.htm)。全米食肉輸出連合会は、「アメリカでは食肉加工の過程で、政府の検査官の立ち合いのもと、全頭について決められた特定部位が確実に除去されています。また、食肉加工の作業中に特定部位が牛肉に混入しないように、混入の可能性が少しでもある作業手順は一切禁止されています」と言うが(全米食肉輸出連合会、朝日新聞一面ぶち抜きの米国牛肉安全広告,04.7.20http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04072001.htm)、冒頭で紹介したタイソン社工場で6年間、と畜解体業務に携わってきたラファエル・アギラー氏は、「生産ラインが速すぎて解体に使うナイフを一頭ごとに消毒する時間がない。肉が床に落ちて BSE感染の原因になる恐れもある」と現場の問題点を指摘したという。検査官は何を見ているのか。
プリオン専門調査会は、検査してもBSEが発見できない牛の月齢については結論を先送りした。これは、全頭検査の当面の継続の根拠となろう(政府はそうするかどうかは別として)。だが、特定はできないが一定の月齢以下の感染牛が発見できないという事実は事実である。これを認め、上記のような問題に焦点を当てた議論を早急に始めるべきである。こうした議論が欠落しているかぎり、遅かれ早かれ、危険性が否定できない米国牛肉が日本の店頭に現われることになるだろう。