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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04052601.htm
04.5.26
英国企業のマイクロセンス(Microsens)が、BSEの人間版とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ(VCJD)の患者の血液に、初めて異常プリオン(蛋白質)を検出した。企業によると、供血者の日常的スクリーニングや病気診断のための血液検査に使うためには一層の資金と研究が必要だが、BSEその他の異常プリオン関連病(プリオン病)の信頼できる検査を開発できる希望が持てるという。企業は今日、このニュースをパリでの会議で発表すると「ガーディアン」紙が伝えている(British company close to reliable blood test for human form of BSE,Guardian,5.26)。
企業によれば、血液に異常プリオンが検出された患者は既にvCJDの症候を示していたが、vCJDが疑われる別の患者の検査では異常プリオンが検出されなかったことで、研究の信頼性が高まった。この女性は後に症状が改善、現在はこの病気に罹っていないことが分かっているという。現在、一層多くのサンプルに研究を拡大している。この技術は、異常プリオンには結合するが、正常プリオンには結合しない化合物を利用するもので、非常に低レベルの異常プリオンの集積も検出できる。羊のスクレイピーも血液で検出したという。
英国の一人のvCJD患者が輸血を通して感染した可能性が最近明らかにされ、先週はこの病気のキャリア(保菌者)は3,800人に達するかもしれないという研究も発表された(⇒英国:予想以上のvCJD感染者が潜伏―新研究(続報),04.5.22)。血液検査の開発は、輸血・手術・臓器移植などの医原性感染を防ぐ見地から非常に重要な意味を帯びてきた。企業は、この検査は米国の動物組織の死後検査の方法として許可を受けており、生きた患者や動物の血液検査のためのパートナーを求めている。
このような検査が実用化されれば、動物から人、人から人へのプリオン病感染のリスクは大きく減らすことができよう。だが、確実に死に至るこの病気には今のところ治療法がなく、症候はないが検査で異常プリオンが発見された人にどう情報を伝えるのかという倫理的問題が生じる。また、ガーディアン紙の記事は、検査の研究が政治的関心を治療法研究から逸らせることにならないかと懸念している。
さらに、この検査が実用化されれば見逃されるBSE感染牛はなくなり・人間の安全は確保されるということから、BSE根絶へ向けての対策がおろそかになるのではないかとも心配される。特にわが国では、検出限界のある現在の死後脳検査による「全頭検査」でさえ、そのような傾向を生んでいるだけに、この懸念は一層高まる。
少なくとも人為的原因で起こると見られるBSEに関していえば、どんなに敏感な検査が開発されたとしても、検査の必要をなくすことが究極目標であることを忘れてはならない。すなわち、肉骨粉の完全禁止とその有効な実施など、BSE「清浄国」を目指す努力・施策に最善を尽くさねばならない。BSEは、防護壁に針の一穴ほどの穴があっても、やがて洪水のごとく襲ってくるという欧州の経験を忘れてはならない。