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http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04031901.htm
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームにより、プリオン蛋白質の折りたたみの型(立体構造)の変化が、種の壁を超えるプリオンの能力も含めたその感染特性を変えることを初めて実証した。この研究は最新のネイチャー誌に発表されたものである(*)。
新た発見はプリオンをめぐる一つの大きな謎を解決するものと考えられる。BSE、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病、ヒツジのスクレーピー等の海綿状脳症の病源体やその増殖・伝達のメカニズムは、科学的には未だに確定できていない。今のところ、病源体は正常なプリオン蛋白質が立体構造を変えた異常プリオン蛋白質だとする「プリオン仮説」が最も有力と見られているが、この仮説にも大きな弱点がある。
プリオン仮説では、プリオンは、他の蛋白質が異常型をとり、アミロイドと呼ばれるシートを形成するように誘導することで病気を引き起こすと考えられている。ところが、プリオン蛋白質は遺伝物質(DNA、RNA)をもたず、遺伝的に変異する能力はない。それならば、どうして様々な病気を引き起こすことのできるプリオンの様々な”株”があるのか。この疑問への明解な解答がないために、蛋白質だけがこれらの病気を引き起こすというこの仮設を疑わしいものにしてきた。
この仮説では困難な株の存在を説明するために、従来、単一の蛋白質が多数の異なる感染性構造に折りたたむことができるという仮説が提案されてきた。実際、株の表現型とプリオン分子の構造の関連性を認める研究もある。しかし、純粋の蛋白質から感染性物質を作り出すことには誰も成功していない。そのために、この関連性の因果関係はわかっていない。新たな発見は、構造変化が株の違いの原因であることを示し、上の仮説を支持するものである。それは、プリオンが形を変え、様々な病気を引き起こすことを可能にする物理的差違を決定する研究の基礎となり、これに対する答えは異常な構造への折りたたみや病気のルートを阻止する戦略にもつながり得るという。
この研究は、多様な型のアミロイドに折りたたむ蛋白質の能力が”株”現象の物理的基盤をなすという証拠を固めるもので、今後の課題は、プリオンの多様な株における様々な構造を特徴づけるのは何か、様々な構造が危険度も含めたプリオンの特性をどう変えるかを解明することだという。
研究は酵母を使って行われた。研究チームは、[PSI+]と呼ばれる酵母のプリオン蛋白質の異常型を正常な(プリオンをもたない)酵母に導入した。その結果、[PSI+]に”感染した”酵母が生産されるのを発見した。
酵母中のプリオンは、哺乳動物の病気を引き起こすプリオンと同様、いくつかの異なる型または株として自然に存在する。プリオンの株とアミロイドのシートの中の異常に折りたたまれた蛋白質の構造との関連を調べるために、先ず様々な温度でアミロイドを生み出した。プリオンの溶解温度とその酵素による分解への抵抗性の研究により、条件によって様々な物理的特性をもつプリオンが生み出されることが示された。また、プリオンのアミノ酸連鎖に規則的間隔で生物物理的検出指標物質を挿入した。これにより、様々な温度で生み出される蛋白質が異なる型をもつことが実証された。
これらを生きた酵母に感染させると、顕著な差が出た。低温で形成されたアミロイドへの感染は、強力で高度の感染性をもつ[PSI+」株を次から次へと生産したが、高温で形成されたアミロイドへの感染は別の、弱い[PSI+」株を次から次へと生産した。
これにより、単一の感染性蛋白質が様々な異なる自己増殖的な型を取ることができ、これらの構造的差違の基礎にはプリオンの株の差違があることが示されたわけだ。同じ研究所の以前の研究は、異なるプリオンの株が種の壁を超える異なる能力をもつことを示しており、新たな発見はプリオンの型の基礎にはこの能力があることを示す。
研究者は、今後、試験管の中で純粋の蛋白質からプリオンを創り出し、酵母に感染させるのに利用することが可能になる、これにより、試験管内の実験で、生きた生物の中でプリオンがどのように機能しているかの理解を前進させることができ、プリオンが何故種の壁を超えることができるのかを含め、どのように増殖し、拡散するのかという基本的問題の解明も可能になると言う。
同じネイチャー誌には、酵母の異なる株が正常な細胞に導入されると、その株に特殊な構造を伝達することを示すフロリダ州立大学のチームによる研究も発表された(**)。同時に掲載された「ニュースと見解」(***)は、二つの発見は、プリオンの様々な形態と様々な株の関連を最終的に確立するものと述べている。
難攻不落に見えたプリオン病の謎の解明に、ようやく光が見えてきたのだろうか。
*Motomasa Tanaka, Peter Chien, Nariman Naber, Roger Cooke & Jonathan S. Weissman;Conformational variations in an infectious protein determine prion strain differences,Nature 428, 323 - 328 (18 March 2004).
**Chih-Yen King and Ruben Diaz-Avalos;Protein-only transmission of three yeast prion strains, Nature 428, 319 - 323 (18 March 2004).
***MICK F. TUITE;Cell biology: The strain of being a prion,Nature 428, 265- 267(2004).
関連リリース
University of California - San Francisco,UCSF scientists show prion shape affects nature of infection(3.17)
農業情報研究所(WAPIC)http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/index.html