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欧米は原発から撤退
六ヶ所再処理工場は日本を救わない
http://www.bund.org/opinion/20050225-3.htm
谷沢健二
昨年12月21日、六ヶ所村にある使用済み核燃料再処理工場で、設備や機器の性能を確認する「ウラン試験」がはじまった。再処理工場は2001年から試験運転を行なっている。第1段階の水や空気でチェックする「通水作動試験」と、第2段階である硝酸など化学薬品を使って機器の調整や耐酸性を確認する「化学試験」は終了した。「ウラン試験」は第3段階目になり、「劣化ウラン」約51トンを使って燃料集合体のせん断を確認する作業が行なわれる。この後、わざと機器故障や停電などトラブル状態にして安全装置が機能するかを調べる「外乱試験」。実際の使用済み核燃料を使って最終確認する「アクティブ試験」が予定されている。実際の操業は2006年7月の予定だ。
再処理工場では使用済み核燃料を数センチに切断し、硝酸で溶解して化学処理しプルトニウムを取り出す。その過程でトリチウム、クリプトン、ヨウ素などの放射性物資が、高さ100メートルある排気塔を通って周囲にばら撒かれる。「ウラン試験後には青森の米は買わない」という消費者も多い。消費者の不安は当然である。
イギリスにセラフィールド再処理工場があるが、ここで今日本の核燃料が再処理されている。1952年から操業しているこの工場では、57年、83年と2度にわたって大規模な放射能漏れ事故を起こしている。再処理することで取り出されるプルトニウムは1グラムで数万人の致死量を持つ。半減期は2・4万年である。これまでに200キログラムから500キログラムのプルトニウムがアイリッシュ海に流れでたといわれる。北東大西洋を汚染させた放射能の80パーセントは、セラフィールドとフランスのラ・アーグにある再処理工場によるものと推定されるのだ。セラフィールド再処理工場から3キロ離れている村では、子どもの白血病の発生率は全国平均の10倍にもなっている。同じくフランスにあるラ・アーグ再処理工場周辺でも、子どもの白血病が多発している。97年には環境大臣が排水の停止を命じた。再処理工場は多量の放射能を排出し、大規模な環境破壊を引き起こす施設なのだ。
日本はなぜかくも危険な再処理工場を稼動させようとしているのか。日本の原子力政策の基本が核燃料サイクルだからである。核燃料サイクルとは、原発で燃やした使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを回収し、高速増殖炉の燃料として使用することだが、その中核が再処理工場だ。
原子力開発利用長期計画が策定されたのは1957年。その計画の中に高速増殖炉建設が記載されている。天然資源が少なくエネルギー自給率が低い日本が、外国からの供給の影響を受けないで、自力でエネルギーを賄うことが日本の安全保障にとって必要であるとの考えからだ。
しかし現在ではアメリカでさえも、高速増殖炉や再処理工場での事故などにより、1977年には商業用再処理を断念している。日本と並びイギリス、フランスにおける再処理工場の最大の顧客であったドイツは、99年に使用済み核燃料の再処理禁止を政府が決定した。再処理を行なっているイギリスでも、2005年7月に原子力利用の減速を進めるエネルギー法が正式決定される。高速増殖炉の事故が続き、放射能による環境破壊がすすんだからだ。
日本でも95年に高速増殖炉「もんじゅ」がナトリウム漏れ事故を起こし、今なお運転再開のめどはたっていない。 それで今や政府や官僚内部からも再処理反対の声も出ている。昨年の6月から原子力長期計画の見直しのための論議が続けられた。長期計画は5年ごとに見直しを行なうことになっているが、今回の見直し作業の争点は核燃サイクルだった。
再処理にかかる費用が現在の試算でおよそ18兆8000億円。六ヶ所村の再処理工場で、全国にある52基の原発から出る使用済み核燃料を再処理するための費用だ。内訳は10兆8000億円が再処理工場の操業費用。海外から日本に帰される放射性廃棄物の処理費用が3兆1300億円、再処理工場は30年後に閉鎖するが、その費用が5兆5900億円だ。再処理工場の建設費用は、当初の計画では7000億円だったが、実際には3倍の2兆円以上になった。ここからいっても18兆8000億円は最低必要な金額で、それ以上になる可能性が高い。コストの面からいえば再処理した場合と、再処理せず一定期間地上で冷やしそのまま地中に埋める直接処分の費用を比較した場合、直接処分した方が再処理よりも一般家庭の電気料金が年間600円〜840円安くなるとの試算がだされている。家電製品リサイクル料金と比較しても受け入れられる費用だが、しかしエネルギー安全保障や環境適合性などを考え再処理が得策だと、結局原子力委員会は従来通りの核燃サイクル政策の維持を決めてしまった。
海外から放射性廃棄物が帰ってくる
国としては何としても再処理工場を稼動しなければいけない理由があったのだ。第1にイギリス・フランスとの再処理委託契約によって、取り出されたプルトニウムと高レベル放射性廃棄物が日本に返還される約束になっていて、高レベル放射性廃棄物は、数年前から六ヶ所の貯蔵庫に搬入されている。第2に、日本各地で運転している原発の使用済み核燃料プールが満杯に近づきつつある。六ヶ所の再処理工場に搬入するしかないのである。
そもそも核燃サイクルは、プルトニウムを取り出し高速増殖炉の燃料として利用するためのものだった。しかし海外でも高速増殖炉は事故続きで撤退している。プルトニウム燃料はウランに比べて核分裂しやすく、そのため核暴走が起こりやすい。しかも核暴走に対しては制御棒しか対策はなく、軽水炉に備えられている緊急炉心冷却装置さえ持たない。それで日本でも「もんじゅ」が95年にナトリウム漏れ事故を起こして以来、運転は停止している。
そこで今計画されているのが、通常の軽水炉型原子炉の燃料として、ウランにプルトニウムを混ぜたMOX燃料を使うプルサーマル発電である。原子力委員会でも高速増殖炉の実用化は当面断念し、通常の原発で使うプルサーマル発電を主軸にすることを検討している。四国電力の伊方原発や九州電力の玄海原発でプルサーマル導入が計画されている。
しかしプルサーマル計画にも問題がある。そもそもウランを燃料とするためにつくられた原子炉で、予定になかったMOX燃料を使うのである。これまでと比較にならない高濃度のプルトニウムを使用するために、暴走の危険性が一段と高まるのだ。プルサーマル計画も国際的には総て撤退している。
高速増殖炉は消費するプルトニウムより新しくプルトニウムが生み出され、発電と資源増加で一石二鳥とされた。高速増殖炉が成功すればウラン資源を100倍以上に使うことができ、天然資源の乏しい日本にとって必要なエネルギー政策だと思われてきた。
しかし最近の研究によれば、高速増殖炉を無事に運転できたとしても、プルトニウムが100倍になるのではなく、90年後に2倍になる可能性があるにすぎないことがわかったのだ。核燃サイクル自体、当初考えられたようなものではなかったのである。それにもかかわらず日本は再処理をすすめる。あまりにも無理がある政策だ。
再処理工場が稼動すれば、再処理の化学プロセスが複雑であるため、多数の液漕と長大な配管から放射能が漏洩することは避けられない。原発の200倍規模で、海と空にむかって放射性物質、甲状腺癌の原因となる放射性ヨウ素や染色体に異常を起こすトリチウムを排出する。再処理工場が運転されるだけで環境汚染を引き起こすのだ。こんな事が許されていいはずはない。
日本原燃は一刻も早くウラン試験を中止し、再処理、核燃サイクル政策をやめるべきだ。原発も運転を止めざるをえなくなるが、それも当然である。東海地震の危険性がいわれる中浜岡原発が焦点になっているが、地震に弱いのは六ヶ所の再処理工場も同じである。六ヶ所村の再処理工場の敷地内には2本の断層が走っている。燃料貯蔵プールが大地震によって破壊されればメルトダウン事故を起こす可能性が高いのだ。EUのような再生可能エネルギー(自然エネルギー)への転換がはかられていく以外ないのである。
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http://www.bund.org/opinion/20050225-3.htm
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