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こんにちは、山崎久隆@たんぽぽ舎/福島原発市民事故調です。
[aml 40771]の続きの考察の4号を送ります。1〜4号とも転載自由です。
【8月15日3時14分】
関西電力原発停止作業開始
関電は保有する原発を全部止めて検査を行う作業に入りました。ただし、全て
を一度に止めるのではなく、3グループに分けて点検を行うこととして、その最
初のグループの3基を止め始めました。その3基とは、美浜2号、大飯原発4号、
高浜原発2号。
しかし停止点検には1ヶ月ほどかかる見通しといいますから、次のグループが
停止するのは一ヶ月後、さらにその先となると2ヶ月後です。そんなに悠長で良
いのかと疑問に思います。それに対しては保安院は、深刻な点検漏れが有れば直
ちに止めて点検を、という指示を出しているので、平行して点検記録を確認し、
そう言う原発が有れば直ちに止めると言うことなのでしょう。しかし点検記録そ
のものの信頼性がこんどは問題になるのではないでしょうか。
過去の事例を思い浮かべれば、配管の焼鈍記録偽造、燃料検査記録の偽造、東
電の事故隠し、ひび割れ隠し、関電火力の点検記録偽造、そしてこの間、美浜事
故にかき消されてしまったきらいがありますが、中部電力は真岡原発で、4号機
建設時に「アルカリ骨材反応検査記録偽造」というとんでもない事件が内部告発
で明るみに出ています。(アルカリ骨材反応とはコンクリート中のアルカリ成分、
主にナトリウムが、砂利や砂に含まれる鉱物成文と反応してコンクリートが膨張
する現象で、例えば海砂を使うときに洗浄が不十分だと典型的に起こります)
検査記録だけでは、安全性を確保したことにはなりません。特に過去に「前
科」の有る電力会社は信ずるに足らずとの姿勢で臨まねばなりません。
検査機関も信頼に足るものではありません。例えば国の検査代行機関である発
電設備技術検査協会は、今年5月に、建設中の北陸電力志賀原発2号機のアキュ
ムレーター(ステンレス製の弁作動用圧縮空気貯蔵装置)の液体探傷試験を実施
していなかったのに合格証を交付、製品はそのまま納品され、その後検査漏れに
気づいて、あわてて原発内で検査を行ったにもかかわらず検査記録を工場で行っ
たように偽造したという事件が発覚しています。
つまり、事業者や関連機関などだけでこうした検査をしていても、公正さを確
保することはできないわけで、特に今回のように大事故を起こした直後の検査は、
第三者機関を直ちに入れて証拠の隠滅や記録の偽造ができないような体制で臨む
必要があります。
他の原発では停止点検予定無し
関電は停止点検の方針を出しましたが、加圧水型軽水炉を有する九州、四国、
北海道、日本原電には停止点検の予定はないとしています。BWR各社も同様で
す。
これまでの減肉経過を調べても、BWRの系統では報道などが無いようですが、
だからといって起こらないということはないでしょう。
サリー原発事故(86年12月9日)の後に出された87年のNRCの文書
「告示87-01」では「給水−復水系統で起きている減肉は加圧水型軽水炉
(PWRs)の間で多く発生しているが、同様に沸騰水型軽水炉(BWRs)でも起こる
ことを示した」と記載されています。
NRCは7基のPWRと3基のBWRを調査しています。
BWR全原発が、給水系統をステンレスにしたということは聞いたことがない
ので、これは大きな問題ではないでしょうか。
221人から104人に
関電はタービン建屋にいた人数を大幅に下方修正しました。最初は210人、
そして221人に一端増え、13日になって104人にと、二転三転としていま
す。
電力会社というのは、自分の発電所施設内に何人の作業員が入っているのか何
日もたたなければ確認もできないということです。
これには、福井新聞などが詳しい状況を記事にしていますが、それによると地
元の消防が駆けつけて重軽傷者の搬送を始めようとしていたときに、内部に取り
残された人がいないかどうかを関電に確認したところ、関電は人数を全く把握し
ておらずただ「全員退避した」とだけ答えていたというのです。
消防は何度も問いただしたけれど、タービン建屋に入った人数は各下請けがそ
れぞれ確認していて、全体状況を誰も把握していなかったことが明らかになって
います。
そのため消防はまだ高温の蒸気が立ちこめる中、タービン建屋二階部分も含め
て内部確認を繰り返し行わねばならなくなり、危険にさらされたことに強い憤り
を持っています。
こんな会社に命を奪われた人々の無念さを思うと、本当に怒りがわきます。
JCO事故も、核燃サイクル機構と国によって殺されたようなものですが、今
回もまた、関電によって殺されたようなものです。
そしてこんな情報さえも関西電力は「誤って発表し申し訳ない。警察の捜査に
関わる可能性があり、どこにどれだけの作業員がいたかなど詳しいことは差し控
えたい」としています。
【8月18日1時43分】
読売新聞社説は「一事が万事この調子」
自ら社説で「原発の全停止をするな」と叫んでいた読売新聞。福井県知事も中
川経産大臣まで「全停止点検」を支持したため、立場を失ったかっこうになり、
なりふりかまわない暴論を展開している。
まず題名からして「新たな不安を招く火力の稼働」というのだから訳がわから
ない。
火力の給水配管も破断するという話かと思えば、そうではない。なんと石油価
格高騰に拍車をかけるという意味らしいのである。
現在世界で起きている原油価格の高騰原因は、美浜原発事故とは何ら関係はな
い。むしろ読売新聞自身が派兵を支持したイラク戦争の影響が大きいのだ。需要
面ではなく供給面からの高騰要因の方が大きい。
米軍が止まる限りイラク戦争は終わらない。その米軍を支えているのが自衛隊
だという事実をいったいどう考えているのであろう。イラク派兵を支持し、米軍
のイラク戦争を「対テロ戦争」と支持している読売新聞に大いなる責任があるの
だ。
また、原油価格高騰は需要の増大とはほとんど関係なく、投機筋の介入も大き
な要因であると見られている。たかだか日本の一地域の原発停止による火力の稼
動によって需要の大幅な増大など起きるはずがない。いったい世界の石油需要の
分布を知っているのだろうか。
ところが題名に直接関係する記述は「関電が猛暑の中で原発を停止すれば、関
西圏の電力供給に不安が生じかねない。石油火力の稼働が、最高値圏にある原油
相場をあおるのも危険だ。」たったこれだけである。
社説でいいたい本論は別のところにある。
最も端的に示す文章はこの部分。
「ミスの責任を厳しく追及するのは当然として、「一事が万事」の論法を際限
なく広げるのは、建設的と言えない」
つまり、美浜事故と同じような点検漏れが発見された原発以外は止めるなとい
うことらしい。さらにこういう文章もある。「復水配管の破断個所には異常がな
いと確認されている他の原発を停止したり、プルサーマル計画の推進を一時凍結
するのは、理にかなったことだろうか」
もちろん「理にかなった」ことなのである。
それは、この事故をどうみるかに密接に関わる部分だからだ。
それまで何一つ欠陥もなく、誠実かつ実直に運転を続けてきたのであるならば、
この点検漏れが「たまたま」であると言えなくはないだろう。しかし、この事故
は積もり積もった関西電力の体質がそのまま現れたものである。
「一事が万事」という言葉二度も使っているが、関西電力のこれまでの歴史
を見れば、「一事が万事」という観点から厳しくチェックをしなかったことが、
今回の事故を生み出したことはあまりにも明白ではないか。
過去に何度もチェックする機会があったと、読売新聞自身が書いている。
「破断した復水配管は、一九七六年に3号機が稼働して以来、一度も検査され
ていなかった。八六年に米国で破断事故があったにもかかわらずだ。しかも、昨
年末、検査会社が検査漏れを指摘したのに、関電はこれを放置し、今月に予定さ
れていた定期検査まで、改善策を講じようとしなかった。その結果、水流で薄く
削られていた復水配管が破断し、高温蒸気の噴出で四人の人命が失われた」そう、
まさしく度重なる失策が積もり積もった結果なのだ。
しかも関電の場合は、過去に幾度と無く不祥事を起こしてきた。最も最近では
火力発電所の検査データ大量偽造という事件が発覚し、社長自ら減俸処分を行っ
た。その前はプルサーマル燃料製造データの偽造を知りながら、強引にプルサー
マルを実施しようとして、結局市民団体が差し止め訴訟を起こし、関電側が敗訴
直前に計画を撤回したではないか。
一事が万事この調子なのだ。
今回4名もの犠牲者を出して、ようやく県や国が強い姿勢で臨もうとしている
のだが、これなども何テンポも遅いのである。
読売社説は「地域住民の信頼を回復するため、調査にウソや偽りがあってはな
るまい」などと書いているが、これも市民や第三者の監視があってはじめて担保
される。これまでウソや偽りにごまかされ続けてきた国や県にその能力があると
誰が信じるというのだろう。
「書類を調べ、これまで検査がきちんと行われていることが確認された設備は、
稼働の続行を認めるべきである」というのも、机上の空論も甚だしい。これまで
の検査結果が正しいとどうして保証できるというのだろう。これまで繰り返され
てきたデータ偽造は、過去の記録の話である。事故が起きてからの記録さえ偽造
されるかもしれないと危機感を持って臨むべき時に、過去のデータなど何の信頼
性があるというのか。そんなことを言い出せば、検査で合格した設備で事故など
起きるはずがないではないか。しかし現実はどうだろう。事故続きではないか。
いうに事欠いて何という暴論だろうか。
「関電は、稼働中の八基の原発をすべて順次停止し、配管の厚さなどを点検す
る方針を決めた。この中には、問題の復水配管を既に丈夫なステンレス製に切り
替えてあるものも含まれている」だからどうだというのだろう。ステンレス製が
全て安全だとでもいうのだろうか。どうも、応力腐食割れという現象さえ知らな
いらしい。あきれたものである。
「知事はまた、関電が二〇〇七年から同県の高浜原発で始める予定だったプル
サーマル計画の先送りも示唆した。プルサーマルを凍結すれば、原爆の材料とな
るプルトニウムが行き場を失い、諸外国からあらぬ疑いを抱かれかねない」西川
知事はもちろんのこと、原発事故で一番最初に被災する地元住民の誰もが、原発
の使用済燃料からプルトニウムを取り出してくれと頼んだわけではない。
読売はどうしてそんなプルサーマルに命をかけさせるのか。イラクに自衛隊が
派遣される時も煽った読売は、ここでも市民の命を危険にさらすことを何とも思
わないらしい。これが報道機関のすることか。
結論は「「一事が万事論」の副作用は極めて大きい。是正させるべきことと、
受け入れても問題のないことを区別し、後者については冷静な行動を取るよう住
民を説得するのも、知事の使命ではないか」と、知事にかみつく。これは本来は
以下のように書かなければならない
「一事が万事この調子というのは、原子力全体に言えることだ。昨年の東電不
祥事に続き二年も連続で、日本第一位と第二位の原発保有会社が、その電力会社
所有の原発を全部止めなければならない事態となった。再処理工場でもひどい不
正事件が起きたことは記憶に新しい。JCO事故の教訓が生かせなかった。是正
すべきは、無理な原子力推進という国策の方ではないか。ここで立ち止まって、
核燃料サイクルも含めて日本全体で冷静な議論をすべき時だ」
【8月19日15時37分】
あらたに「危機管理体制」?
NHKによると「政府は、美浜原子力発電所の蒸気噴出事故のように、「放射能
漏れ」を伴わない原発事故が起きた場合の危機管理体制が明確でないとして、今
回のような深刻な事故が発生した場合には、ただちに情報の収集などにあたる
「官邸連絡室」を設置する規定を定めるため検討に入りました。」
つまり、これまでは放射能漏れがなければ重大事故と思っていなかったわけで
すが、まさしく想像力の欠如、原発の危険性について何ら理解をしていないこと
の証拠です。
95年12月に起きた「もんじゅ」事故でも放射能は環境中に出ていませんし、
人身事故にもなっていません。しかしこの事故が与えた影響がどれほど大きかっ
たかを国が認識していないとすれば、その無責任さはあきれるばかりです。
もう忘れてしまったことにでもして、運転再開をしたいのでしょうが、そんな
ことが許されるわけがありません。
いまさら「危機管理」として位置づけ直さなければならない背景には、危機的
原発事故の定義を「放射能漏れ」を前提として固定化して考えているからでしょ
う。重大原発事故という概念を机上でだけ考えていることの証明で、原子力の専
門家ほど陥る落とし穴です。
こういう構造が変わらないままいまから「検討」をしたとしても、けっきょく
またその定義をすり抜ける事故が起きるだけです。
初めて関電が地元報告会
事故が起きたのは8月9日。初めて美浜町丹生地区の公民館で地元説明会を開
いたのが17日。それも一箇所だけの説明会なので、住民約50人が集まっただ
け。これ以後の説明会を開く予定はないということで、あきれた姿勢に批判が集
まっているのかというと、そう言う報道がほとんどありません。もちろん報道さ
れていないだけで、批判は強まっています。
関電は「強制捜査が入った」などという口実で、まともな説明をする気がない
うえ、ちゃんとした説明もしないので、事実は隠されたまま。
しかも美浜町丹生地区といえば、原発の建っているその場。つまり美浜町の中
でも発電所の地元で大きな批判をしづらい地域だけで説明会を開くというやり方
です。
美浜原発は敦賀半島にありますから、ここで事故が起これば、美浜町だけでな
く敦賀市、半島対岸の三方町、その先の小浜市、敦賀市を超えた対岸の河野村、
武生市、越前町などに直接影響が及びます。まず一週間以内にこれらの市町村で
少なくても一度以上の説明会が開かれてしかるべきです。
関電がしないのだったら県がさせなければだめでしょう。
停止した3基の超音波検査始まる
停止点検の第一弾で、止められた美浜原発2号機、高浜原発2号機、大飯原発
4号機の超音波測定が始まりました。この点検には福井県や美浜町の職員が立ち
会い、適切な手順に基づいて検査されているかを確認しているとのことです。県
によれば「関電の自主基準に任せるだけでなく、県民の立場で見守る必要があ
る」と、今後停止して点検する他の原発でも立ち会いを続けることにしています。
しかしこの点検場面の写真を見たのですが、どうもよくわからないのですが手
で超音波探傷装置のアンテナを当てながら目視で計器の数値を読み取っているよ
うに見えます。現在では配管に超音波測定用の連続自動計測器を付けるなどとい
う方法があるはずです。人間が手でアンテナを操作するという方法は、測定する
人の経験や測定場所などにより大きく誤差が出ると思います。
それから、点検は二次冷却水のオリフィスの下流部分が中心で、それ以外の場
所を行っていないようです。オリフィスの下流何メートル以内を測定しているの
か報道ではわかりませんが、同じ場所を検査する場合の国の指針では、配管直径
の2倍程度ということなので、1メートル程度ではないかと思われますが、これ
も十分ではありません。
測定結果の速報値によると、肉厚の最小値は美浜2号機が10.3ミリ、大飯
4号機が6.9ミリ、高浜2号機が8.0ミリだということで、いずれも必要最
小肉厚を上回り、問題はないとしています。しかしこの配管初期値は約10ミリ
ということですから、最大3.1ミリ薄くなっているということになります。
これでも取り換える必要はないというのですから、これは事実上の「維持基
準」ではないでしょうか。
火力でも減肉破断
火力でも減肉破断が起きました。福島県新地町にある新地発電所2号機(石炭
火力100万キロワット)で15日に給水加熱器ドレン配管で破断、美浜3号機
と同様の事故が起きていたことが17日に発表されました。
この事故そのものは、火力の話であり従業員などにも被害がなかったので、一
般的な機器の損傷だという認識だったようですが、美浜3号機の事故と同様の原
因であることから発表したようです。
10.3ミリあった配管の肉厚が破裂部で1.4ミリになっていたというのも、
美浜に非常によく似ています。配管内部は200度ということですから、圧力も
おそらく16気圧程度の高圧だと思います。
この事故を考えるときに重要なのは、この火力が95年営業開始の比較的新し
い発電所で、減肉が9年足らずで破断にいたるまで進展したこと、破断部分は炭
素鋼ですが内径は30センチに対して、破裂部の66センチ手前側にドレン水位
調整弁があるため、内径が15センチにくびれた構造になっているというとです。
国がオリフィス部の2直径範囲を危険部分としてきたのに対し、この発電所は
2直径を超えたところで減肉が起きており、従来考えられてきた調査範囲が不十
分であることが明らかになったことと、前回調査から数年たっていれば十分危険
な減肉にいたっていると考えて対処すべきであるということも示しています。
04/8/19(Thu) 04:32pm SDI00872@nifty.com Yamasaki Hisataka
http://www1.jca.apc.org/aml/200408/40810.html