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日経新聞より:「強い農家に重点補助」農水省指針原案←実際のところは農業の規制緩和原案
日経新聞2004年7月22日(木曜日)に「強い農家に重点補助」という見出しの記事が掲載されたのであるが、それによれば、農水省が21日に「農業政策の改革のあり方を示す指針の原案」という物をまとめたという事である。
内容を要約すると、その趣旨は
「農業の生産性を高め、競争力を強化したりする為」
という事である。その元にあるのは、そのまま引用するが
「年内に合意を目指すWTOの新ラウンドでは、米国や途上国などが日本に農作物の関税を削減するよう求めている。農水省は新ルールで米など一部の農作物は引き続き保護される事になっても、他の農作物の関税削減は避けられないと見ている。これまでの保護行政を転換し、国際競争力のある強い農家を育て、弱い農家の退場を迫る必要があると判断。農政改革への指針作りに着手した。」
ということであるらしい。
そして具体的には以下の2つをやるらしい。
@一律に分配していた“バラマキ型の”補助金を廃止し、単位面積当たりの収穫量が高い農家(大規模農家)が補助金を受けられる見通しとなる。
A農地法を改正し、株式会社の農地賃借を全国展開できるようにする。
(引用:「また、農業参入を規制する農地法を見直す。現在は、農業従事者が役員の半数を占める農業生産法人や、構造改革特区で一部認めた株式会社などに限って、農地を借りたり保有したりできる。この規制を緩和して、株式会社の農地賃借を全国展開できるようにするほか、農地の取得条件を緩めて、生産意欲がある事業者などに農業の参入を広く認めるとした。」)
またこれに付属する形で「農村の環境を保全する農家に補助金を出す」という漠然とした項目があるが、これは上の新条項とバランスした付属物であるので無視してもいいと考える。
新聞の見出しは「強い農家に重点補助」となっているが、よく読んでみれば実際の内容は農業の規制緩和についてである。なぜならば明確に「農地制度(農地法)を改正し株式会社の参入を認めること」が主体となっており、また補助金に関しても、「幅広い農家に補助金を配分するのではなく、生産性が高い農家に限って補助金を重点配分するよう求めた。単位面積当たりの収穫量が高い農家(?)が対象になると見られ、主に大規模農家が補助金を受けられる見通し。補助金の支給方法も、価格補填型ではなく、所得を保証する制度の導入を提案した」という事であるから、残念ながら自分は専門家ではないので完全に事実を把握する事は難しいが、
要するに「WTO新ラウンドに備えて農業の国際競争力を高めよう。→そのために規制緩和を行おう」という事である。
果たしてこの事がどのような結果を齎すのだろうか?
自分は何度でも言うが、http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20030310MSDokUchihashiBassui.htmにあるような事実は本当にあるだろうと確信している。要するに、規制緩和、というのは、夢の改革法などとは全く異なり、弱者の切り捨てによる、大企業のための一人勝ちシステムであるという事である。
いずれにせよ、日本で規制緩和の実際の事例についての研究というのが取りざたされたというのを聞いた事がない。つまり、理由は何にせよ、農業であれ郵政民営化であれみんないきあたりばったりでやっているという事である。
関税を掛けられない農作物は最早保護に値しない、という事であるらしい。
予算配分から見れば確かにそうかもしれない。ただ、そうすれば、現在では意識に上る事の少ない、日本国内における食糧自給量がさらに低下する事は目に見えている。つまり、農業を純粋に単なる産業の一つと見做し、「国内農業の保護」という路線を放棄する事になる。
「原案はまず、農家の過疎化や高齢化が進み、農地面積の減少など農業の生産活動が停滞していると指摘」(B)し、それの解決策として「農業の生産性を高めたり、競争力を強化したりする政策が急務」(C)と判断したということであるが、BがCの結論になるという時点で既に支離滅裂な話になっているし、さらにそのCのために上述の@Aをやるということになるとこれはただの規制緩和のための言い訳を述べたに過ぎないだろう。
Bなら、既に強者である株式会社の参入を促すのとは関係なく、一般人の農地への敷居を低くするべきである。
さらにはっきりと言ってしまえば、農業は仮に産業の中にあって赤字を出すようであっても、いくら補助金を出してでもまずは保護すべきである。産業と同一のように安易に規制緩和していいものではないだろう。現在様々な危険リスクが存在する中、単純に産業規模の縮小による貿易収支の赤字転落でも、ハイパーインフレーションでも何でもいいが、今後日本全体としての輸入力が低下した場合に、日本政府は本当にhttp://www.kanbou.maff.go.jp/www/station/fusokuji.pdfのようなプランで凌げると考えているのか。
そもそも不測の事態に対応することを全くやっていないというのを置いておいても、このような事態に陥る前に、食糧自給率は上げておくべきである。これは何にもまして優先されるべき事項である。
またこの一点から、非常に重大な事が分かる。阿修羅を眺めていても、実際に、現在日本政府がよくやっているのか、それともやっていないのかという点に関しては非常に分かりにくいものであり(実際は色んな人間がいるのでモザイク状にいい事と悪い事をやっているだろうが)、また副島隆彦が属国日本論を超えてという本の中で述べていたように、「我々は何か意見を表明した瞬間に操られる可能性がある」のであり、どんな事態が起きようが容易く流れに乗ってしまってはいけないという事を我々は経験上理解している。
例えば北朝鮮への援助問題。みな薄々感づいているように、おそらくイラクと同じで北朝鮮に大量破壊兵器はないし、侵略能力も兵站維持能力もないので、仮に金正日がどんなに強気な発言をニュースでしていようが、またこちらが何をしようが日本を攻撃する事はない。勿論、やけくそになって援助欲しさにミサイル攻撃してくるなんて馬鹿な事ができる筈もない(やっても風船爆弾程度の被害だろう)。アメリカの本気で戦略を研究している研究所なら、ゲーム理論の応用等からそんな事は最早分かりきっているだろう。また旧ソ連と同様、兵糧攻めにしておいてじきに降参するのを待てば、闘わずして勝利できるというのも理解しているに違いない。
だが敢えて言うがそれを援助で延命させていても構わない。アメリカから日本の公共施設の破壊を仄めかされているのならば仕方がないだろう。全ての面において、アメリカと日本の差は圧倒的である。特に情報戦において、日本は完全に敗北している。日本人(世界)は911のテロが嘘だというのも見抜けていないし、オウム真理教事件がおそらくその予行演習であったという事も全く信じられない。
という事は彼らはやり放題である。東京中のターミナル駅を同時爆破してもいいし、原発を一つづつメルトダウンさせていってもいい。これは冗談ではなく、原爆を落とし、またニューヨークの自国民を殺してそれを正当化できるような人間供であるから、日本人に対してはこれ以上の事をやるだろうと考えた方がいい。そうして日本人がそれを見抜けないというのは分かっているだろうから、エージェントに宣言させておいて対テロ戦争に強引に引きずり込むぞと脅されているかもしれないし、米軍の「対テロ」戒厳令下に置いてみたりするかもしれない。まあ日本は現在「栄養満点のエサ」なのでもっと経済活動を痛めないようなやり方をするだろうが。ビンラディンが日本をテロの標的にしているというのはアメリカからの暗黙の脅しだろう。
だから共倒れを望まない限りアメリカに400兆円を援助していても構わないし、日本が規制緩和の結果としてプランテーション工業国になろうが構わない。そこに至るまでのどこかの間できっとアメリカの覇権は息切れするだろう。日本経済をハイパーインフレで駄目にして、アメリカの戦争の後方支援をやめさせようという戦略でも構わない。我々は他に仕様がなかったにせよ、どこかで世界中の人間を殺して回ったアメリカを助けた罪を償う必要があると強引に納得してやる。そうしてさっさと節操なく「水に流して」反省して前向きになれるのが日本人の美徳(汚点)だ。
ただ、全ての事情を考慮しても、それでもどうしても譲れないのが自国の食糧に関してである。
http://www.asyura2.com/0403/dispute18/msg/453.htmlの途中の文章を転載するが、
【あっしらさん】
>日本が食糧自給率30〜40%であることへの“恐怖心”が希薄すぎると思っています。
>ご指摘のように、それでも飽食とも言える生活をおくっている人が多いのは、貿易収支が黒字だからです。さらに言えば、対日食糧輸出国が余剰農産物を生産しているからです。(なかには、自国民のなかに満足な食生活ができていない国も対日食糧輸出をしています)
>人が最後にこだわるのは生存です。生き続けることができてこそ、快楽や精神的充足も果たせるものです。
これは、自動車は国内購入者を割り当て制にして輸出に回すことはできても、食糧は自国優先で扱われることを示唆しています。
>中国の対日食糧輸出を増加させていますが、中国の経済成長が進んでいけば、13億人もいる中国人の食生活も豊かになっていくことは、日本の“伝統”(歴史)に照らしてもわかります。(今は、外貨獲得やより高値で売れるから対日輸出をしている)
>生存条件を外国に委ねている国の支配層は、どんな言い訳をしようとも亡国の輩です。
それが自動車を1台でも多く輸出したいための政策であるとしたら、悲劇を通り越して喜劇になります。
必需品→利便品→奢侈品という財の優先度さえ理解できない支配者が、経世済民を達成できるはずもありません。
失業者が増大し休耕地も拡大している今こそ、農業基盤の再生に国をあげて取り組まなければなりません。
(極端に言うと、生産した農産物をホームレスにただで配ったり廃棄するかたちであっても、将来に備えるために農業の再生に国費を投入しなければならないと考えています)
生存条件を外国に委ねている国の支配層は、どんな言い訳をしようとも亡国の輩である。
これはマキャベリ語録にあってもいい位の、歴史を貫く真実ではないだろうか。
古代から現在に至るまでの紛争というものの根本は、衣服、住環境、食糧の衣食住の基本的生存条件、及びそれらから切り離された状態にある人間にとっては、それらを充足させるための貨幣の欠乏にある。みんな大好きなユダヤ人にせよ、「住環境」が不足しているが為に好戦的にならざるを得ないのだろう。為政者が生存条件の衣食住の確保を放棄すれば、容易に紛争状態に陥る可能性を生じることになる。
即ちこの一点、日本の為政者が自国の農業を守ろうという気がないという点から、彼らが単なる、自己の既得権益を守ろうとするのに必死なだけの愚か者であり、売国奴であるという事が分かるのである。もし規制緩和で本当に世の中がよくなると信じているのなら全くの愚か者であり、規制緩和にそった案を提出すれば自分の出世が早まると考えているのなら、臆病者、愚か者かつ売国奴である。
日本はこのままだと本当に、「外貨を毎年10兆円も稼いでいるのに、さらに稼ぐために自国の食糧供給体制を壊してしまった」という悲劇を通り越して喜劇のような事態に突き進むことになるだろう。
自国でも40%しか食糧を自給できていない国が、途上国と同じ思考で輸出用の食糧を生産しようと弱者切捨ての農業の規制緩和を進めるべきではない。食糧を輸出用の「生産性の高いもの」に切り替えて株式会社が畑を経営するようにし、規制緩和で農業を破壊する前に、既存農家を保護し、同時になんとかして大量の失業者を農業に誘導するべきであるし、農家の高齢化を嘆くのなら早急に若者に対して農業への門戸を開くことをするべきだ。