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(回答先: 「富」という言葉と「財」という言葉の違いを説明してはもらえませんか? 投稿者 オニオン 日時 2004 年 7 月 10 日 01:28:20)
オニオンさん、どうもです。
>あっしらさんの文脈的に「富」や「財」とはどのような意味なのですか。何となく富
>はお金、財は物やサービスと読ませていただいたのですがこれで良いのでしょうか。
>また「富を産む」という事と「近代経済」との関係はどのようなものなのか。
用語法を統一していないことで分かりにくいものになっていて恐縮です。
「富」は、“余剰”ですから、産業資本主義経済社会では「利潤」とお考えください。
「財」は、人によって生産された有用な物で商品や換金性のある資産です。
>さらに利潤と言う言葉についても。感覚的に利潤と言うと「収入」マイナス「支出」
>という位しかイメージできないのですが、、、利潤と「富を産む」は違うのでしょうか。
「利潤」は、やっかいな概念なのでとりあえず、「収入」マイナス「支出」に近い“税引き後利益”だと考えてください。
「利潤」のわかりやすいかたちは株式配当です。
10億円を投じて取得した株式から毎年1億円の配当を得れば、10%の利潤を得たことになります。但し、この場合は、株式を10億円以上で売却できることが条件ですから、10億円以上で売却したときに初めてそれまでの累積配当が利潤だったということになります。
(6億円の配当を受得ていても、株式を売却して3億円にしかならなければ、1億円の損失をしたことになります)
A:(累積配当+株式売却額)−(株式購入額+累積諸税諸手数料)=利潤
(現金をそのまま持っているだけでは税金も手数料もかからないので、累積諸税諸手数料を考慮する必要があります)
株式配当の原資は、正常であれば株式を保有している企業が獲得した「利潤」ですから、企業の利潤について説明します。
(内部留保金を取り崩して配当する場合もあります。それは株式価値を下落させる要因ですから、株主にとってもほんとうの「利潤」とは言えない可能性もありますが売却時点にわかることです)
会計的な所得(利潤)は、営業利益に減価償却費・接待交際費(利益みなし)・金融収支を織り込んだフローの収支です。
この所得から諸税を差し引いた金額をそのまま「利潤」と考えていいのかという問題があります。
なぜなら、借入金もあり株式所有者のような投下資本額の明瞭性がないからです。
投下資本額は基本的に払い込み済資本金です。
このお金で機械設備を購入し人を雇い原材料を仕入れ生産した財を販売して経常利益を上げたときであれば、その経常利益から諸税を引いたものが「利潤」と考えても問題はありません。
但し、この場合も、それまでの累積「利潤」と会社を売却して得られる金額を加算した額が投下資本額を超えていたとき初めて「利潤」を上げたといえます。
B:(累積経常利益+会社売却額)−株式資本−累積諸税=利潤
資本家(株式投資家)も企業も、「利潤」を得たかどうかは清算してみないとわからないのです。
企業の「利潤」をめぐる厄介な問題は借入金の存在です。
というのは、経常利益というフロー収支においては、利息は考慮されても、借入金や元本返済の動きは考慮されないからです。
借入金・元本返済はバランスシートにのみ反映されます。
ですから、例えば、経常利益が1000万円計上されていても、年間1000万円元本を返済されていれば、手元剰余金はゼロということになります。(元本返済が経常利益を超えることもある。その代わりといってはなんですが、お金を1億円借りたからといって、それを利益だと言われることもありません)
もちろん、利益が計上されているのですから、計上された所得に対応して法人税を納付しなければなりません。株主も、利益が出ているのだから配当しろと迫るかもしれません。さらに言えば、借入金は資産なっていることが多いので、原資が借入金であっても資産課税も負担しなければなりません。
これが“黒字倒産”のからくりです。
借入金がある企業は、B式の会社売却額は資産・債権・債務を一括して売却した金額になり、それが確定しないと、「利潤」があったかどうかなおのことわからないのです。
借入金の恐ろしさが、利払いだけではないことが少しはお分かりいただけたと思います。
このあたりの問題も「産業主義近代の終焉」シリーズで再度取り上げる予定です。