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(回答先: タイトル 対外資産と外為会計 1 投稿者 岩住達郎 (転載) 投稿者 M 日時 2004 年 5 月 19 日 15:15:04)
余計なことかもしれませんが、転載させていただきます
タイトル 対外資産と外為会計 2
投稿者 岩住達郎
リンク(URL)
登録日 2003年10月11日3時30分
■5.日本の矛盾
今までは、毎年の貿易の黒字分以上が、海外(主として米国)へ流失しています。これは
、稼いだマネーの先端部分が、国内ではなく海外で使われてきたことを示します。蓄積さ
れた資本が、国内で使われなければ、国内の消費経済も投資も
浮揚しないは、当然です。
2つの原因があります。
(1)政府による、ドルの米財務省証券の購入
(2)機関投資家による、米財務省証券の購入
その累積は、175兆円です。GDP対比で最大の政府赤字国(GDPの8%)が、世界
最大の対外純資産国であるのは大いなる矛盾です。財布をすっからかんにして、最新の武
器をもち町の警備に当たると言う隣家(米国)に、貯蓄を貸し付けて続けている働きアリ
の世帯のようです。
海外に預けている資本余力は巨額です。このことの意味は、国民から増税で取り上げなく
ても、ある程度は、対外資産(主として米国債)があるということです。そして後に述べ
るように、このある程度の「呼び水」が、経済では重要なのです。
米国財務省からの要請を重視し、結局は通貨マフィアを富ませ、支えてきた政策は、もう
停止すべきでしょう。
米国は、真正面からの議論には、対抗意見で応える国です。「異見」を言わなければ、な
いものと見るのも米国人です。
▼主要国の対外純資産(財務省集計)
改めて着目すべきは、対外純資産です。対外純資産は、実物投資と債券投資の合計(対外
資産)から、海外からの実物投資と債券投資(=対外負債)を引いた、純額です。日本国
と民間が、海外にもつ純自己資本と見ていい。
対外純資産 (GDP比)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本 175兆円(02年末) 35%
スイス 44兆円(01年末) 137%
フランス 20兆円(01年末) 12%
ドイツ 13兆円(01年末) 6%
イタリア 2兆円(01年末) 2%
英国 −7兆円(02年末) −4%
カナダ −17兆円(01年末) −19%
米国 −304兆円(01年末) −23%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
資料 http://www.mof.go.jp/houkoku/14_g3.pdf
日本の対外純資産の175兆円は、1年間で稼ぐ貿易・サービスの黒字(02年:6兆3
607億円)の、27年分にも相当します。現在の貿易黒字の、約30年分にも相当する
額を、海外に純資産として、保有する国が日本です。(対外純資産=対外資産−対外負債
)
30年分の純貯蓄を、町内にばらま続けた働きものの世帯が、豊かな生活ができるでしょ
うか? これが日本です。
世界の先進国の国家財政史上、最悪の赤字(年GDPの8%:40兆円)を抱え、しかし
対外純資産も世界史上最大の国という矛盾の中に、巣ごもりしているのが日本です。
ドイツは、日本と同様、第二次世界大戦の敗戦国です。防衛では、冷戦時代はNATOで
あり、核の傘では、日本と同じく米軍への依存でした。
日本は日米安保条約のために、米国に資金を供出すべきであるという、ガードマンの雇用
つまり「傭兵の論理」が成立するなら、輸出大国であるドイツも、NATOで防衛をして
くれていた米国に資金供出をしていなければならない。ところが、上の表に見るように、
ドイツはそうはしてはいない。対外純資産は13兆円で日本の13分の1に過ぎません。
わが国の対外純資産は異常な額です。これは海外からの投資が極度に少ないことを意味し
ています。
日本の財務省に戦略性があるなら、ドルが$1=110円の価値を維持している間に、ド
ルベースの債券を、奪還する姿勢を見せる何らかの戦略を立てるべきでしょう。
米国は確かに軍事でダントツです。しかしこの軍事戦略も、途中からはマネー(戦費)の
勝負になる。イラクで必要になるという復興資金を、世界に求める米国を見れば、わかり
ます。
▼軍事もマネーに依存する
米国には軍事の開発技術はある。しかし軍の維持予算は、マネーです。マネーのほうが最
終的に強い。対外純資産に見るように余剰マネーを持つのは、日本です。日本政府は、米
軍を雇うスポンサーとして、もっと強い姿勢で、米軍とネオコン一派をコントロールでき
るはずです。(岩住:だから私はアメリカの金融企業に日本人の貯金(保険も含む)を預
けてはならない、というのです。日本人の貯金をアメリカの金融企業の支配下に置けば日
本人は何もコントロール出来なくなります。)
奪還しなくてもいい。貸し付けたままで順次「円ベース」に切り替えるのも方法の一つで
す。円ベースなら、ドル安という方法で、米国が借金を減価させることはできないからで
す。(岩住:私が昔から輸出と対外投資は全て円建てにせよと云ってきましたが、日本政
府自身が弱腰で、世界に日本の強さを見せるのを極度に怖れるから実行できないのです。
これは日本人の遠慮、謙遜、に具現されている「和の精神」を尊ぶという国民性から来る
ものです。私が主張してきた、政治家と官僚の意識を変える訓練を強制しない限り将来も
変わりません。更に、輸出を円建てにするだけでは駄目で、前にも書きました様に、日本
企業は異常に競争力がありますから、輸出税を掛けて相手国の市場を攪乱しないようにす
る必要があります。)
ドル債券はドル安になれば、ドル安の分だけ減価します。減価分は日本人の富の、米国人
への移転になります。これを、繰り返してきたのです。輸出の黒字の果実は、国内還流せ
ず、対外資産として増えるだけだったのが日本です。
▼当たり前に考えれば・・・
分かりやすく例えれば、日本は隣家(米国)がペーパーマネーで作った数字の借用証をも
らい、売った商品代金をそっくり貸し付けて来た。米国が発行した手形を、外為会計とい
う金庫にしまいこみ、決済は求めなかったのです。人のいいお旦那が、日本です。隣家は
、5年か10年くらいの通貨戦略のサイクルで、借用証の金額を、一方的に減価させてき
た。これが、円高・ドル安です。
機関投資家も財務省もサラリーマンです。為替介入を含んでドル債を購入し、ドルの切り
下げを受けて富を減らしても、減ったのは国民の富ではあるが、自分のお金ではないと思
っているかのようです。年間で6兆円はある貿易黒字という国民の富を預かる、財務省の
運用に、無責任の体制があります。
他の国で、こうしたことが許されるでしょうか? 米国人、英国人、フランス人、ドイツ
人、中国人なら、絶対に許さないでしょう。政府への抗議が殺到するはずです。
米国財務省におだてられ、いい気分で、財布を開くのが日本の財務省でしょうか。このと
き、頭から消えているのは、日本国民の富でしょう。(岩住:日本の政治家と官僚はおだ
てられているのでは無く、恫喝されているのです。やくざに恫喝されて長い物には巻かれ
ろ、と云うのは日本人の国民性から来るもので、これを断ち切る勇気を奮い起こさない限
り、日本人は永久にアメリカの奴隷から抜け出すことは出来ません。貴方にはやくざに骨
の髄までしゃぶられても「仕方がない」と諦観する無気力な日本人が立派にみえるのです
か。)
▼60兆円の外貨準備
日本政府の金庫で、もっとも潤沢なものは、財務省管理の外為会計であり、その結果とし
て増えてきた$5551億(約60兆円:03年8月末)の外貨準備です。↓
http://www.mof.go.jp/1c006.htm
外貨準備の、80%($4434億:50兆円)は、$の現金や預金ではなく、証券であ
り、大半は米国財務省証券(米国債)です。
【日本の外貨準備の総額(03年8月)】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
証券 $4434億(50兆円:主として米国債)
預金 $ 921億(10兆円:海外銀行)
IMF預け $ 78億( 9兆円)
SDR(特別引出権)$ 25億( 3兆円)
ゴールド $ 92億(10兆円:FRBの金庫に預託)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計 $5551億(62兆円)
今の外貨準備は、国際通貨であるドルを、輸入代金支払いのために準備するという、戦後
復興期の性格ではなく、ドル債の購入残です。
【外貨準備の増加】
00年 $3615億
01年 $4015億
02年 $4962億
03年8月 $5551億
ここ3年で、$1936(22兆円)の、円の流失(=外貨準備増加)です。これは、同
期間の貿易黒字を上回ります。
外為会計の運用は、財務省の管轄です。よく言われるような日銀の意志によるものではな
い。ドル買いや円買いの為替介入は、日銀が行うのではなく、財務省大臣の決定で、行わ
れます。為替介入では、日銀は、財務省の政策で動く代理人に過ぎない。
(注)「外国為替資金特別会計法」は、財務大臣は、外国為替資金の運営に関する事務を
、日本銀行に取り扱わせることができると規定しています。(第6条第1項)
財務省が、国家財政の困窮と、財政の破綻を言うのなら、ドルの米国債を買って、結果は
ドル安で失う方法は、もうやめた方がいいでしょう。政府を、貯まった外貨を有利に運用
する委託機関としてとらえる視点が、この国には欠けています。一体、為替介入やドル債
券買いは、だれが、どんな責任で、決定しているのか。国会でも、これを追求しない。変
な国です。
対外純資産を見れば、世界でどこがもっとも富んでいる国かわかる。しかし、それは今の
日本にとっては数字上のことです。還流先は、米国だからです。
■6.ここ数ヶ月の株価上昇は、6兆円で果たされた
実は、日本の株の03年4月末からの30%の上昇は、オフショアを含む海外からの、累
計で5兆7600億円(月間平均1兆円)の買い越しによるものに過ぎないのです。そし
てこの資金の元をたどれば、財務省による6兆円のドル買い介入
です。
これは、何を意味しているか? 年間の貿易黒字(6兆円)にも相当する額が、海外債券
の購入(国外流出)だけではなく、国内の株買いに向かうなら、以下の表に示すように、
10倍以上(71兆円)の、評価増(信用の増加)を生むことです。この評価増は、経済
の全体を、活性化させます。
(注1)日本人の個人と金融機関は、いずれも、今までの期間中は、ほぼ売り越しです。
買っているのは、日本資本のオフショア+外人です。オフショア(off-shore)は、海の向
こうの租税回避地(タックス・ヘブン)に預けられた、日本資金です。
(注2)日本人のオフショア資金は、03年9月の総額で45兆8000億円、負債を引
いた純額で、12兆円に増えています。オフショア資金については、別稿で解説の必要が
あるでしょう。
↓
http://www.mof.go.jp/offshore/1507.htm
03年4月28日の株価の底値以降、債券を売って、買い続けたのは、外人の年金等を運
用するヘッジ・ファンドと、日本人のオフショア資金です。
日経平均 東証1部時価総額
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
03年4月平均 7909円 236兆円
6ヶ月で約6兆円の資金流入→→→ ↓ ↓
03年9月26日 10318円 308兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
株式では、東証1部で1日10〜15億株(1兆円〜1.2兆円)の売買です。東証1部
の全上場株数は3145億株です。1日当たりで500億円(月20日で1兆円)の程度
の買い越しが入れば、株価は8月までのように、1ヶ月10%の速度で上昇します。1日
あたりでは0.3%〜0.5%の売買率に過ぎない。年間でやっと1回転しかしないくら
いわずかな資金です。こうしたマネーが呼び水になれば、経済は自動的に変わって行きま
す。
▼新たなリスクが発生
しかし、株価上昇と、裏腹の関係にある長期金利の上昇(0.5%→1.5%)は不気味
です。金利の上昇は、米国債と日本国債が売られていることを示します。低金利とデフレ
時代の終焉を示すものかどうか、予断を許さない緊張が、債券市場に走っています。
財政赤字のため、合計で年100兆円の国債を増加発行する日米の政府当局は、なにがな
んでも、金利高騰を阻止しなければならない。他方、国債を持つ投資家は、国債価格の下
落(=金利上昇)にリスクを感じています。金利が不確定要素になって浮上しています。
株価の上昇、金利の高騰、債券価格の下落には、相互依存の関係がある。
以下、次号で。see you next week!!
1.経済の4つの領域
2.企業、個人のミクロ経済
3.国家のマクロ経済
4.ストック経済
5.長期金利とは何か?
6.債券価格と金利の関係
7.債券価格の原理
8.国内と国際金融を支えるアンカーは何か?
9.根元を更に言えば・・・
【要約】
日本企業は3つに分かれています。
・バブル期からの負債が大きすぎ、資産・設備・雇用の整理を迫
られている「バランスシート破壊」のグループ
・肥大していた公共投資の削減により、整理を迫られている公共
投資関連産業
・利益の追求で借金を返済し、フリー・キャッシュフローが超
過しているリストラ後のグループ
世帯も3つに分かれます。
・住宅ローンと地価下落によって家計のバランスシートが毀損(き
そん)されている、主として30代、40代のグループ(これが、個人消費に盛り上
がり がない原因)。
(岩住:だから私は個人住宅買い替えの際に生じる含み損を日銀が引き受け、それを銀行
の不良債権償却に使わせる方法を提案しているのです。このグループを救済すれば日本の
景気は一挙に向上します。)
・所得額は伸びていないが負債がなく、預金を増やしたグループ
・成果主義賃金で、所得を増やしたグループ
数年のスパンで確定していることは以下です。
・日本の国債の新規発行は、40兆円以上を続ける。
・米国の財務省証券発行も、60兆円規模を続ける。
日米で年100兆円の国債残高の増加です。世界金融の焦点は、だれが、この100兆円
の赤字をファイナンスし続けるか、です。
(1)日本国債を多額に100兆円規模で日銀が増加購入しても、世界からの日銀信用が
まだ厚ければ、金利上昇(債券の下落)を抑えることができるでしょう。
(2)日銀による国債の増加購入に対し、世界が危惧を感じれば、日米は同時に高金利に
なります。通貨価値の下落、国債を含む債券価格暴落、そして物価上昇が起こって、西欧
にまで波及しハイパー・インフレの様相が濃くなります。
(1)か(2)が岐路と判断します。果たしてどちらに向かうか?
日本政府によるドル債券買いと、外人投資家の6兆円の日本株買いは、ほぼその金額が見
合います。
外人投資家は、手もち債券の下落を防ぎながら、債券を売って代わりに株を買った。その
1部が、日本にも流れてきました。