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2004年05月21日
SCIENCE : 宇宙空間における宇宙飛行士の糞尿問題
【Space.com】宇宙空間において宇宙飛行士が排泄した糞尿は一体どこへ行くのだろうか。暗黒の宇宙空間に放出され、黄色くきらめく彗星の如く宇宙の果てを彷徨い続けるのだろうか。否、これまで行なわれた有人宇宙飛行においては、宇宙飛行士が排泄した糞尿はきちんと回収袋に収められ、大事に地球に持ち帰られていたのである。しかし、現在予定されている火星有人宇宙飛行計画は搭乗員六人、飛行期間凡そ2年間というまさに人類未体験の大規模なものとなる。そして試算によれば、彼ら宇宙飛行士が宇宙飛行中に排泄する糞尿の量は凡そ6トンに上るという。これは由々しき事態である。狭いロケットに6トンもの糞尿を搭載し、抑えがたい性欲に苛まれながら、彼らは人類を代表する重大なミッションを果たすことができるのだろうか。しかし、この度NASAはそうした疑問に答えるべく、現在予定される火星有人飛行計画において、こうした膨大な糞尿はそのまま貴重な資源に変換するシステムの開発を行なっている。発表によれば、溢れんばかりの糞尿を利用して飲料水や栄養剤、そして更には電力までも生成するというのである。
この画期的な糞尿リサイクル、そして糞尿発電というアイデアは比較的最近になって発見されたバクテリア(Geobacteraceaeの一種)が可能にしたものである。このGeobacterと呼ばれるバクテリアは1987年、ポトマック川の泥の中から発見され、研究の結果、このバクテリアが有機物を分解して電力を生み出す能力、更に電子を鉄の中に移動させるといった未知の能力を持っていることが明らかになったのである。
そして現在、NASAが資金提供するノースウエスタン大学ブルース・リットマン博士率いる研究チームはこのバクテリアを利用した糞尿リサイクルシステム「The Right Conditions」の開発を進めている。
このシステムは電子を発生させ、その流れを制御することで恒常的に電力を提供するシステムである。このシステムの試作品はかつてスペースシャトルなどにも搭載された過去を持つ。しかし、当時のシステムは膨大な量の水素をその燃料としていたため、その運用には多くの困難が付きまとっていたのである。
しかし、現在研究チームが開発を進めるこの燃料電池システムは人間の糞尿をその直接の資源とするため、非常に安定した電力供給が期待されている。システムの中心部にはバクテリアが存在し、安定して排泄=供給される人間の糞尿をバクテリアが摂取、分解し、電力を生み出すという正にドリームマシンなのである。また更に素晴らしいことに、このGeobacterは電力を生み出すだけでなく、あたかも彼ら自身が回路の一部であるかのように、糞尿から生み出した電力を直接燃料電池の電極に送る能力を持っているのだ。
またこれまでにもこうした微生物発電自体は様々な実験が行なわれている。一例として米ペンシルバニア大学では大学から出る排水とこうしたバクテリアを利用し、電力発電を行なう実験を行なっているのである。
しかしリットマン博士によれば、こうしたシステムを限られた宇宙生活空間の上で実現するには非常に効率が高くてかつ、コンパクトなシステムが要求されるだろう、と話している。いくら技術的に可能性があれど、これまでの実験で用いられているような巨大なシステムを作る空間的余裕は宇宙船の中にはないからである。その為、博士らはこの燃料電池システムを繊維を用いたコンパクトなシステムとして開発を進めている。
博士によれば、繊維はそれぞれ陽極、電解膜、陰極の性質を持つ三本のストローのような管が、順に内包される形で構成され、最外部の層に注入された糞尿をバクテリアが分解、電子を陽極に渡し、最内部の陰極に送るという算段である。
しかしまだ現在の段階では、電子の移動に時間がかかり過ぎるといった問題が発生しているため、博士らは今後いかにしてバクテリアが電子を電極に送るのか、その仕組みの徹底解明に取りかかっていると話している。「今、我々が必要としているのは多くの電力供給を可能にする、電子の移動速度です。その為にはいかにしてバクテリアが電子を電極に運んでいるのか、その仕組みを徹底的に解き明かさなければなりません。我々の推測ではバクテリアは電子を送る際、彼らは実際に電極に物理的に触れなければならないのではないか、と考えています。しかしそこに問題があります。確かに。バクテリアは非常に小さな生物です。しかし、それが電極にくっついているだけで、それ自体が電子の移動の妨げと成りうるのです。」
また博士は電子の移動遅延に関して、別の推論も挙げている。それは電極の電圧である。博士のこれまでの推測によれば、このバクテリアが電子を移動させる時は即ち、彼らが高い電力に惹き付けられているのではないかと話している。「このバクテリアが移動する時というのは彼ら自身がエネルギーを得ようとしているときであると考えられます。その為に最適な電力は一体どの程度なのか、それは現在我々も探っている最中です。」
この微生物発電システムはまだ現在開発段階である。しかし、もしこのプロジェクトが成功すれば、この成果は決して宇宙飛行士のものだけではない。我々の生活全てに適用可能なシステムであると言えるだろう。糞尿は決して宇宙飛行士だけのものではない。
「いずれにせよ、糞や尿を大切にしないといけません。人類がエネルギー問題の勝者になるか、敗者になるか、糞尿の利用がその鍵を握っているわけです。このバクテリアは我々の糞尿を浄化するだけでなく、より経済的に電力を生み出す力を持っているわけです。それだけではありません。このバクテリアの存在は我々の思考さえも変えようとしています。我々が普段無駄だと思っているもの、それが資源になりうる可能性を示唆しているわけです。」
博士は語った。
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