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2004年05月26日
SCIENCE : アンドリュー・クロス - 生命を創り上げた男
【Dimensions + etc】人類は生命を創りあげる事が出来るのだろうか?これは決して技術的可能性に関する問いではない。今日のクローン技術、人工授精技術といったバイオテクノロジーがその問いに応えられぬまま禁じられた生命創造というプロセスへの道を闇雲に探っていることは周知の通りである。しかし現在から遡ること凡そ170年前、世界にただ一人、生命を創造し、今日尚答えられぬその問いに直面した男がいたことをご存知だろうか。男の名はアンドリュー・クロス。それは神に最も近づいた、あるいは悪魔に魅入られた男の名である。英国はサマセット州の裕福な邸宅に生まれたクロスは、小さな頃から電気に魅せられていた。彼は両親から相続した財産の多くを奇天烈な実験につぎ込み、連日連夜、孤独な電気実験を繰り返していたのだ。
周囲の人々はクロスの事を「稲妻と閃光の男」と呼んで恐れていたが、実際のところ、クロスは信心深い良識的な人間であり、単に純粋な科学的好奇心、そしてそれを可能にする膨大な財産が彼を「狂気の科学者」などと呼ばせていたのかもしれない。
しかしクロスはあくまでも正規的な科学の教育を受けた事もないアマチュア科学者であったため、彼の行なった様々な実験がその他の科学者達にまるで相手にされなかったこともまた事実である。
しかし、1837年のある日の事、ガラスの結晶を生成する実験を行っていたクロスは、とんでもない事態に遭遇する。顕微鏡を覗いたクロスの眼に映ったのは、決して存在してはならないものだったからである。
生命を創造した男
その実験の内容とはいかなるものだったのだろうか。現在伝えられるおぼろげな内容は以下のようなものである。
クロスはその実験において、おそらく天然ガラスの結晶を作ろうとしていたと言われている。彼はまず、炭酸カリウムとフリント石を用いてガラスを生成し、それを塩酸で溶解した。そしてバッテリーで予め帯電した多孔性石に先に生成した溶液を少しづつ落として乾燥させ、結晶が形成されるかどうかを調べようとしたのである。
しかし、実験は失敗に終わった。結晶は形成されなかったのだ。しかしその時、クロスはある不思議な副産物に気がつくことになる。滴を落とした多孔性石の上に白い小さな何かが張り付いていたのだ。彼はその物体が気になり、ひとまず実験を続行することに決めた。そして、一週間後の事である。彼は更に奇妙なものを眼にした。その白い物体から何か、か細い小さな突起状のものが生え始めていたのである。そして更にその後、白い突起状のものは足のような形に成長した。それはまるで昆虫のようにも見えたが、まさかそのような事が起こりえるはずがないとクロスが考えたのは言うまでもない。
しかし、それから更に4週間後の事である。顕微鏡を覗き込んだクロスはいよいよその眼を疑った。その物体は完全にダニのような生き物の姿となって、繁殖し、顕微鏡の下でゾロゾロと蠢いていたからである。
そこえクロスは一旦考えを振り出しに戻した。ひょっとしたらこの虫の卵は予め多孔性石に張り付いていたものだったのではないか。可能性は低いが、それ以外に思い当たる理由はない。そこでクロスは再び別の清潔な石を用意し、周囲の環境に慎重に注意を払って再度同じ実験を行なうことにしたのである。
クロスはまず気密性の容器を用意し、実験に用いるあらゆる器具をアルコールを使って丁寧に殺菌した。更に電線は鉄を溶かす温度で生成されたガラス栓を通して容器に繋げられ、蒸留水を用いて鉄、硫酸鉄、硫酸銅、硝酸銅を混合した。そして最後にバッテリーが電線に繋げられ、ゆっくりと滴を落とすプロセスを始めたのだ。
そして2度目の実験開始から数ヶ月後のことである。クロスは再び、その虫が容器の中に発生していることを確認した。その虫は徹底的に管理された、無菌環境下においても尚、発生することが確かめられたのだ。
クロスは愕然とした。その生物が - 例え偶発的な産物であるにせよ - 自らの手によって「創造」されたという事実を認めぬわけにはいかなくなったのである。
クロスはもちろん、この実験の成果が完全に偶発的なものであったことを認めている。そして彼はその一連のプロセスを詳細に書きとめ、ロンドン電気協会に報告することにした。
当時のロンドン電気協会といえば、かの有名な電気科学者マイケル・ファラデーが在籍していた事で知られている。そしてクロスからのレポートを受け取った協会の科学者らは直ちにクロスの説明する通り、同じ実験を再現し、驚くべき結果を得る事になる。そこには確かに、クロスが言う通りの生命が姿を現したのである。またこの実験はファラデー自身も行ない、その成果が本物であることを認めたため、クロスは一躍英国中にその名を轟かすことになる。
しかし、それは決してクロスにとって、幸福な運命ではなかった。彼は決して天才科学者と世間の賞賛を浴びる事にはならなかった。彼は英国中の人間に気味悪がられ、「神の冒涜者」、「平和を破壊する者」などとたちまち最悪のマッド・サイエンティストとして認識されることになってしまったのである。
神か、悪魔か
その後のクロスの人生は文字通り悲劇であった。彼はヨーロッパ全体から憎まれ、教会は彼をあたかも神を冒涜する悪魔の手先として扱い、彼の家の側を訪れては悪魔払いさえ行なった。街の人々は彼の姿が見えるだけで扉を閉じて彼を拒絶し、商人すらも彼と取引することを拒んだのだ。その後、クロスは世間に対して、自分の信心深さを話しては理解を求め、また彼の悪評に耐えかねたファラデーはクロスを弁護するため、同じ実験を行なって自分も生物を生み出し、それが単なる科学的成果であることを公表したが、世間は一切耳を貸す事はなかった。
生命を創り上げた男に神の賞賛はなかった。彼は、悪魔の如き存在になってしまったのである。
こうして世間に絶望し、絶望されたクロスは理解を諦め、沈黙を守ったまま一切外部世界との関係を絶つこととなる。そしてクロスはその18年後、静かに、そして孤独と失意の中で息をひきとるのである。晩年、彼は妻に対し、こう話したという。
「この世は地獄だ。前世の罪が私をこの世に再び運んだ。」
人類は生命は創造できるのか
今日、このクロスの行なった実験とその成果について我々が知る事が出来るのは凡そ以上の出来事である。記録によれば、その後残されたクロスのレポートに従って何度かの実験が行なわれ、そのいくつかは成功したとされているが、多くの場合が失敗に終わったとされている。また実験に成功したものの記述によれば、その小さな生き物は「ダニ」のような姿であったとされ、一部ではその生物をクロス(Crosse)の名になぞらえ、新種のAcari Crossii(クロスダニ)と名付けようとした者もいたと伝えられている。
また否定論者達は口を揃えて、実験の最中にある種の汚染が起こり、不純な環境で実験をおこなったことが原因であり、そうした理由から生物は新種などではない、一般的な虫のはずであると主張している。
しかし、この出来事は時と共に、そして彼の存在とともに歴史の闇に葬られ、現在ではクロスがいかなる方法を用いてその実験を行なったか、そして本当に生物は誕生したのか、その真実を知る術は残されていない。
アンドリュー・クロス、その男は噂通りの悪魔だったのか?あるいは生命の起源ともいえる原始スープを偶然発見してしまった「現代のプロメテウス」だったのか?いずれにせよ、彼が生命を創造した可能性は決して否定しきれるものではない。現在の進化論者とて、その起源を明確に説明できるものは未だ、いないのである。
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