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「一本の鎖」:地球の運命を握る者たち‥‥米軍はイラクで一体何をしようとしているのか
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投稿者 エンセン 日時 2004 年 4 月 28 日 10:09:24:ieVyGVASbNhvI
 

 
米軍はイラクで一体何をしようとしているのか


米軍、というよりホワイトハウスがイラク人に主権を渡さないよう骨折ってきた理由は、非常にはっきりしている。イラクを民主化すれば、選挙によってたちまち反米国家に戻るからである。

アメリカのイラク戦略の実態は何であろうか。大量のニュースの洪水のなかで見落とされていることは、9.11事件からわずか5日後の2001年9月16日に、イスラエルの“ハアレツ”紙が伝えた小さな記事である。

それはアメリカが9.11事件の報復攻撃をする場合、イラクが含まれる可能性を示唆したイスラエル軍の情報であり、「第一波をアフガン攻撃とし、第二波としてイラク攻撃がおこなわれる」という筋書きだった。その日を思い返せば、2003年3月20日のイラク攻撃開始の実に1年4ヶ月前に、すでに正確にイラク攻撃を予測していたことになる。早くもこの時点でイラク攻撃を予測したのは、アメリカ政府のペンタゴンではなく、不思議なことにイスラエルであった。しかしそのような遠い先のアメリカの政策を、他国の人間が予測できるはずはないので、ホワイトハウスのイスラエル人脈がそれを決断し、結果としてそこに導いた、と断定して間違いない。というのは9.11事件の2日後に、ネオコンの頭目であるユダヤ人国防副長官ポール・ウォルフォウィッツが次のように発言しているからである。

「火曜日(9.11)の攻撃に責任のある奴や犯人をかくまっている政府に対しては、広範かつ長期的攻撃をおこなう。犯人をつかまえるというような単純なものであってはならない。こやつらの隠れ場所をこの世から抹殺し、その支援システムを抹消し、テロリズムに資金を送る国家を全滅するのだ。1回の攻撃で終わらせてはならない。米軍のすべての力をもって戦うのだ」と。そしてたびたびイラクへの攻撃を示唆した。

これを裏付けるのが、大統領選に民主党候補として名乗りを上げたウェズリー・クラークの言葉である。彼によれば、アフガン攻撃の真っ最中(2001年11月)、国防総省の高官が「5年をかけて、イラクに続いて、シリア、レバノン、イラン、ソマリア、スーダンに武力行使をかける計画が立てられている」とクラークに語ったという。アフガン攻撃の最中に、イラク攻撃作戦が始動していたのである。

クラークは先に述べたように、NATOのヨーロッパ連合軍最高司令官として99年のユーゴ空爆を指揮した軍部トップだから、この種の話に関してこれほど確実な話はない。7カ国を攻撃する計画だったとは、イスラム諸国にとってアメリカは恐怖の国家である。勿論、現在はイラク占領政策が混乱しているため、アメリカはそれどころではないが、ペンタゴン内部ではその計画が生き続けているはずである。

これら攻撃目標にされた7カ国に共通するものは何か。シリア、ソマリア、スーダンは、原油の埋蔵量で見ると、シリアがサウジの120分の1しかなく、スーダンも現在は統計に出ないほどで、数のうちに入らない。ソマリアとレバノンもゼロと言ってよい。

この一連の事実が意味しているのは、巷の噂でしばしば語られてきた「アメリカは石油欲しさにイラクを攻撃した」という陰謀論が先を読みすぎた思い違いだということである。イラク攻撃をおこなったアメリカとイギリスの石油メジャーは、ひと昔前までセブン・シスターズと呼ばれたが、現在はエクソンモービル、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、シェブロンテキサコの4グループに統合されている。しかもこの経営幹部はセブン・シスターズ時代に色濃かった財閥系の遺産相続人と違って、テクノクラートと呼ばれる技術系の人間が主流を占めるように時代が変ってきた。

エクソンモービルとシェブロンテキサコの現会長は化学エンジニア出身、シェル現会長は地質探査のエキスパート出身である。実際の世界中の油田・ガス田の採掘権交渉を知っている人であれば、カスピ海であれ中東、アフリカ、中南米、サハリンであれ、彼らが国際コンソーシアムの幹事会社となって産油国と話をつける手順が常識である。石油メジャーにとって、世界の石油支配はとっくの昔に終っているのだ。そこにロシアのユコスが出てこようとすれば、丸ごと買収してしまうほどの資金力を持っている。

アメリカの石油会社はイラクの原油を好きなだけ購入してきた。軍事力でわざわざイラクの石油を奪うなどという無謀な発想は、現在の石油メジャー幹部には微塵もない。むしろ逆である。ホワイトハウスがイスラム諸国に対して制裁を加えるたびに油田採掘権がとれなくなり、パイプラインの敷設が面倒になり、コスト高になるので、「制裁をやめて友好的な外交をしてくれ」と申し入れてきたのが、石油会社の幹部である。ネオコンが嫌うイランは、石油メジャーにとって石油と天然ガスの宝庫であり、カスピ海からのパイプラインの絶好の通り道なのに、ネオコンのスピーチライターの口車に乗せられたブッシュがイランを“悪の枢軸”呼ばわりしたことで困惑しているほどだ。

(略)

では、目的が石油になければ、7カ国攻撃の目的は何か。

米軍が狙いをつけた国に共通するのは、石油ではなく、反米感情である。

現在の米軍は、それを叩きつぶすための行動を目標に動いてきた。石油利権よりはるかに危険な、慈悲をかけないイスラム叩きである。「衝撃と恐怖」と銘打った国防総省のイラク攻撃戦略は、イスラム圏に圧倒的な恐怖を与え、中東全域の軍事的な覇権を再構築することに真の狙いがある。感情的には、ネオコン集団のイスラエル人脈が煽るイスラムへの報復である。しかも世界貿易センタービルとペンタゴン・ビルを崩されたことへの復讐心を抱いているのが、軍部、ネオコン、閣僚、メディアだけでなく、過半数のアメリカ国民だというところに、イラク攻撃の危険な本質がある。

ネオコンの具体的な戦略は、イラクをパレスチナ化する作戦だった。それはイスラエルのシャロンが進めてきた手法である。米兵がイラク人を挑発して怒らせ、反撃を待って国内を混乱に導き、ますます米軍の駐留が必要になるような状況をつくり出してゆくのである。これが今や、「武装勢力を根絶する」という口実のもとに、イラク人の生活破壊と農地破壊に進んできた。

民主化のためのイラク占領統治などという言辞にまどわされてはいけない。彼らは、はるかに野蛮な弱肉強食の軍事思想で動いている。米軍の民主化の証明をしようと、日本をはじめとする国際メディアは、イラクの復興事業が進んでいるというニュースや統計をしばしば報道する。ところがその数字は、いずれも、アメリカのイラク攻撃前との比較である。このような比較は、根本的に間違っている。湾岸戦争後の91年からの国連制裁によって、イラクの復興はアメリカ政府によって妨害され続けてきた。水を飲めるという当たり前の生活さえ認めず、国連制裁のために5年足らずで56万7000人の子供を死に追いやるほど、次々とイラク市民に残忍ないやがらせをおこなったアメリカ人脈は、ほとんどが“イラクの大量破壊兵器”という嘘を攻撃前に煽った同じグループである。

憎しみを持って普通のイラク市民と子供を平然と殺した人間たちが、今度は彼らを助けるなどということがあろうはずがない。彼らが、現在のイラク占領軍の主体である。現在のように大金を投入すれば、もともとイラク人の生活はずっとよくなっていたのだから、それを「米軍がサダム政権を追放したから生活が改善された」と報道するのは、若き記者たちの大きな勘違いである。生活水準の比較をするなら、90年を基準にしなければならない。

現地の米兵は、自分たちが他国に攻め入った不法な侵略者だということを認識していない。世界中のメディアも、イラク攻撃に関して、国際法とイラク人の人権をほとんど無視した立場で、イラク人が殺されても「ここは戦場だ」という認識で、人間の良識を欠いた報道を続けてきた。「大量破壊兵器とアル・カーイダへの支援によって、アメリカには危機が切迫している」と主張して、ブッシュは米軍に1万人を超えるイラク人を殺させたが、大量破壊兵器はない。アル・カーイダとサダム・フセインは水と油の関係だった。そこで、日本をはじめとする国際メディアは、「アメリカがイラクを攻撃した大義はどこにあったのか」と疑問を投げかけるにとどまっているが、イラク民衆にとっては大義などという生やさしい言葉で表現できる出来事ではない。

その占領軍の冷酷さと、攻撃の背後でブッシュを操ったユダヤ人集団のネオコンと、世界のメディアへの反発が原因となって、米兵とその協力者に対する燃えるような憎悪がイラク人のあいだに広がり、米軍への反撃が続いてきたのである。2003年6月にはバスラで国営石油会社の社員たち数百人がデモ行進した事件は象徴的だ。米軍との契約で石油パイプラインを補修するハリバートン系下請け企業が、インド人などアジアから出稼ぎ労働者を導入したので、怒ったイラク人が「外国人労働者を追い出せ」、「われわれの国の再建はわれわれに任せろ」と叫んでバスラ駐留軍本部前で抗議の声をあげた。石油が本当に欲しければ、イラク人を使うのが、べクテルたち石油プロの常識だ。これはイラク人へのいやがらせ以外に考えられない。

ジェーン・ボンド事件が実証したように、米軍を指揮するアメリカ政府──閣僚と取り巻きネオコンの頭脳レベルはひどく低い。CIAで優秀な調査能力を持つ情報部員は、イラク攻撃の根拠となる「大量破壊兵器」の脚本が間違っていることに気づき、異議を唱えた。サダム・フセインが国連の査察に抵抗してきたのは、イラクが大量破壊兵器を持っているからではなかった。むしろ逆である。強力な武器を持たないので、まわりのアラブ諸国やイスラエルから弱いと知られると軍事的に不利になる。そのイラクが国を守るために、軍事的な秘密を保つことによって、イラク軍を実力以上に強く見せることができる。幻想の兵器戦術であることを、情報部員は知っていたのである。ところが、ウィルソンたちの意見と事実は、ホワイトハウスによって握りつぶされた。ブッシュたちはCIA報告を読んで、イラクには生物化学兵器も、もちろん核兵器もないことを知っていた。したがって米軍がイラクを攻撃した理由は、ただ殺戮のための殺戮であった。

アメリカ政府は、アル・カーイダをはじめとするイスラムの武装組織が攻撃してくる時には「攻撃して来ない」と安心して、国防上あってはならない恥ずべき9.11大惨事を招いた。ところが今は、イラクがアメリカに対する攻撃の意志も、能力さえ持っていない時に「攻撃する危険が切迫している」と根拠もなく断罪し、罪もないイラク人を殺戮した。今度の戦闘で、イラク軍から生物兵器や化学兵器が米軍に対して飛んできただろうか。あれば、もうとっくに使われているはずである。いくら探しても、ないものは出てこない。


「一本の鎖」:地球の運命を握る者たち 広瀬隆著
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/144.html
投稿者 たくげん 日時 2004 年 4 月 20 日 15:09:50:ZeS7i/LK.kz92

「一本の鎖」:地球の運命を握る者たち‥‥あとがき
http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/149.html
投稿者 エンセン 日時 2004 年 4 月 20 日 19:29:57:ieVyGVASbNhvI

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