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IT奔流:2004/6/16 読売新聞
ベンリ(ユビキタス)社会の行方 本格普及目前「IC タグ」
沖縄本島で昨年秋、200匹以上の飼い猫が首筋に1本の注射を受けた。注射器の中には、長さ約1センチ、直径はつまようじほどのカプセル状のマイクロチップが入っており、注射によって皮下に埋め込まれた。
絶滅の危機に瀕している国の天然記念物・ヤンバルクイナの“天敵”は、野生化した捨て猫だ。おの注射は捨て猫対策として、環境省の補助事業で実施されたものだった。
チップが埋め込まれた猫の首筋に、テレビのリモコンと同じくらいの大きさの読み取り機を当てると、チップに記憶された十数桁の数字が瞬時に液晶画面に表示される。それをインターネットでデータベースに接続・照会するだけで、飼い主を割り出すことができるため、簡単に猫を捨てないマナーアップの効果が期待されている。
IC(集積回路)などの電子回路の小型化が、社会を大きく変えようとしている。中でも注目されているのが「IC タグ」(電子荷札)と呼ばれる、バーコードに代わる次世代技術だ。
ICタグを開発している日立製作所(本社・東京都千代田区)。小さなガラス瓶を振ると、コショウほどの黒っぽい 粒が瓶の中で舞い上がった。「これがIC たぐいの本体です。38桁の異なる数字をそれぞれが記憶しています」と、同社の社員が説明した。
「ミューチップ」と名付けられ、大きさはわずか0・4ミリ角。この“粒”を、髪のように薄い特殊なアンテナと組み合わせれば機能を発揮する。単価は一個10数円にまで下がった。昨年秋には同じ0・4ミリ角の本体にアンテナまで組み込んだタイプも誕生している。
今年1月から二月にかけて、京急ストア(本社・東京都港区)の三店舗の野菜売り場で、「食品トレーサービリティ(履歴管理)」の大規模な実験が行われた。ICタグ付きのシールが貼られた野菜を、店の一角にある読み取り機に近づけると、液晶画面に、野菜の生産者名、使われた農薬や肥料の履歴など消費者の知りたい情報が表示された。
紙幣に埋め込んで、偽札防止に役立てようという動きもある。市販薬に取り付ければ、成分や効能の詳しい情報を服用者に知らせることができるほか、危険な飲み合わせに警告を発することも簡単だ。
将来のユビキタス社会を支える“万能”の技術と見込まれるICタグだが、その一方で、プライバシー問題も懸念されている。
米国のある衣料品店では、ICタグを値札のように洋服に付けた。その洋服を買い物かごに入れた客が、店内の売り場をどのように移動するかを把握することで、商品配置などの参考にしようとしたが、消費者団体から「プライバシーの侵害」との猛反発が起き、導入断念に追い込まれた。
ICタグ研究を続ける坂村健・東大教授 (52)(情報工学)は、「素晴らしい技術であることは間違いない。しかし、本格的に普及する前に、問題点をきちんと議論し、法整備なども検討する必要があるだろう」と指摘する。
情報技術(IT)の進歩は、いつでも、どこにいても快適な生活を実現しようとしている。ケータイやインターネットの進化に先にある究極の「ベンリ社会」は、私達に何をもたらすのか。その行方を探った。