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【請一読 】人道に対する犯罪 ジョン・ピルジャー Zネット、03年4月10日 荒井雅子・訳
http://www.asyura2.com/0403/bd34/msg/613.html
投稿者 どさんこ 日時 2004 年 3 月 26 日 01:20:21:yhLXMcSQdrkJ2
 

ジョン・ピルジャー
人道に対する犯罪
Zネット、03年4月10日
www.kcn.ne.jp/~gauss/jsf/pilger.html
荒井雅子・訳、03年5月5日


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BBCテレビのプロデューサーが、18人の死者を出した米軍戦闘機の 「友軍誤射」 で負傷する直前に、衛星電話で母親と話しをしていた。頭上を飛ぶ米軍機の音が聞こえるように、受話器を高く掲げて彼はこう言った。 「聞いてごらん。自由の音だよ」 。

このシーンは、戦争の恐怖を皮肉なユーモアで描いた 『キャッチ22』 で読んだのだったか? それなら、このプロデューサーがおそろしい皮肉を込めていたのは確かだけれど、あの小説の話だったはずがない。同じように、先週の日曜日に英オブザーバー紙の3ページ目を編集したのが誰であれ、作家ジョゼフ・ヘラーの手法を意識していたとは思えなかった。

「このときオマール少年は戦争の代償をはじめて知った」 という見出しはまやかしだった。この卑劣な言葉の横には、15歳のオマールを慰めようと手を差し伸べる米海兵隊員の写真があった。兵士はオマールの両親と、妹ふたり、弟ひとりを皆殺しにしたばかりだった。この家族の祖国はいわれのない侵略のさなかにある。こうして、野蛮人ならいざ知らず、人として最も基本的であるべき法が踏みにじられた。

この英紙はリベラルなことで有名だが、オマールの家族に対する心からの哀悼の言葉はなかった。 「この海兵隊員が少年の家族を殺害した」 という真っ当な見出しも、自動機関砲でずたずたにされた血まみれの父親や母親、妹、弟の写真もなかった。オブザーバー紙が掲載したようなプロパガンダ写真は、侵略が開始されてから、英米の新聞にいろいろな形で採用されている。手を差し伸べ、あるいは跪いて、 「解放された」 犠牲者に仕える麗しき米軍兵士の姿。

だがフラート村の写真はどこにあるのか? 80人に上る男、女、子どもがロケット砲で殺されたのだ。ブッシュの殺し屋たちが家族を道に這いつくばらせている横で、恐怖のあまり両手を挙げている子どもたちの写真や映像も、英ミラー紙を除けば、どこにあるのか? 同じことがイギリスの大通りで起こったとしたらどうだろう。ファシズムが見え隠れしている。私たちには、はっきりと目にする権利がある。

ナチス指導者に対するニュルンベルク裁判で 「侵略戦争を始めることは、単に国際法上の犯罪であるだけではない」 と判事たちは言った。 「それは、戦争の中で重ねられるあらゆる悪をそれ自体の中に内包している点で、他の戦争犯罪とは異なる国際法上最大の犯罪である」 。判事たちは、国際法の指針となるこの原則を示して、他国への先制攻撃が必要だったとするドイツの主張を退けた。

ブッシュもブレアも、クラスター爆弾を落とす兵士たちも、あるいはマスコミのお歴々も、今さら何をしたところで、イラクで犯した大罪の真実は変わらない。真実は書き残され、みなの知るところとなる。知ろうとしない者がいるとすれば、 「われわれ」 の代弁者を標榜する連中だけだ。デニス・ハリディがイラクに対する英米の経済制裁について、 「歴史書の中で、犯罪者たちは断罪される」 だろうと述べた通りだ。ハリディは、国連事務次長として 「石油食料交換プログラム」 を1996年に立ち上げたが、すぐに国連がイラク社会全体に対する集団虐殺攻撃の道具と化してしまったことに気づき、抗議の辞任をした。後任のハンス・フォン・スポネクも、 「一国の国民に対する非人道的な恥ずべき制裁」 と発言し、ハリディに続いて辞任した。

私が二人のことを何度も取り上げてきたのは、二人の名前もその証言もほとんどのメディアからきれいさっぱり消されているからでもある。ジェレミー・パックスマンが、テレビ番組 「ニュースナイト」 で、辞任後間もないハリディに噛みついたことを良く覚えている。 「それじゃ、あなたはサダムを擁護するというわけですか」 。こうしたことも手伝って、真の報道とは似ても似つかぬ浮ついた調子がメディアで幅をきかせ始めた。今や連日、はしゃがんばかりに、犯罪的な戦争をスポーツ番組のように扱っている。リークされたメールによると、BBCテレビニュースの最高責任者であるロジャー・モーゼイは、BBCの戦争報道を 「非常にすばらしい。ウムカサルから他へ戦争の舞台が移り、戦闘場面があちこち入れ替わるのは、ワールドカップのような感じだ」 と評している。

モーゼイは[殺人と言わずに]殺人について話している。米軍のやっていることは人殺しに違いないのに、だれもそれを人殺しとはいわない。記者が殺されている時でさえそうだ。米軍は、人種差別と殺人を意図して、ほとんど無抵抗の無力な人びとを一方的に攻撃している。人種差別と殺人の意志は、米軍の海外における戦争を常に貫いているし、亀裂を抱えたアメリカ社会をも貫いている。私はベトナムで同じものを目撃した。当時米軍が行っていた殺戮の一大プログラムは、フェニックス(不死鳥)作戦と呼ばれていた。

今回の殺戮劇から、どの場面を選ぼうか。先週末、米軍の戦車隊がバグダッドに堂々と進軍し、堂々と引き上げていった。その途上で殺戮が行われたのだ。彼らは女性の手足も子供たちの頭も吹き飛ばした。放送されなかった未編集のビデオで声を聞いてみてほしい。 「撃ちのめしてやった。ボコボコよ。ぐうの音も出やしねえ」 。犠牲者は遺体安置所や病院にあふれた。病院では薬も鎮痛剤も底をついているというのに。安保理で認められイラクが買い入れた54億ドルの人道物資を、アメリカがわざと押さえたからだ。最低限の麻酔で切断手術を受ける子どもの泣き叫ぶ声が、BBCプロデューサーの言う 「自由の音」 というわけだ。

ヘラーなら、ちょっとしたエピソードも大いに評価してくれるに違いない。たとえば、英軍ヘリ・パイロットが、危うく自分を撃ち落とすところだった米軍兵士に殴りかかり 「知らないってのか? イラクに空軍なんてもんはないんだ」 とわめきたてたこと。このパイロットは自分が口にした真実について考えてみたことがあるだろうか。弱体化した第三世界の国に対する卑劣な企てのすべてが何を意味しているのか。その犯罪の中で自分が果たした役割は何なのか。まず考えてはいないだろう。英軍は、真実の糊塗と欺瞞にかけては誰にも負けない。

英米軍のハイテク兵器を前にしたイラク軍の抵抗は誰が見ても壮烈だった。旧式の戦車・迫撃砲・軽火器と決死の待ち伏せ攻撃だけで、米軍をパニックに陥れた。うろたえた英軍上層部は、虚勢を張って優位をよそおうという奥の手を繰り出す羽目になった。

闘うイラク人はいつでも 「テロリスト」 「暴徒」 「バース党に忠誠を誓う分子」 「カミカゼ」 「サダム挺身隊」 だ。教養ある真の人間ではない。やつらはアラブ人だ。この類の恥ずかしい言葉を、おもしろがってオウム返しに口にしている放送席の輩がいる。 「バスラはどうです?」 。番組トゥデイのキャスターがスタジオに埋め込まれた将軍に尋ねる。 「きわめて順調じゃないかね」 。双方、興奮ぶりといい、上流階級風の声音といい、名コンビだ。

同じ日、英ガーディアン紙の通信で、元BBC中東特派員ティム・リウェリンが、 「きわめて順調」 の本当のところを示す証拠を教えてくれた。番組スカイ・ニュースのほんの短い映像だった。バスラで英軍兵士が民家に押し入り、女性に銃を向け、若者たちに手荒に袋をかぶせて拘束した。若者の一人は恐怖に震えていた。 「英軍がバスラを"解放"するというのは、政治犯を捕まえることなのか。そうだというなら、どんな情報に基づいているのか。英国は長い間この国のことも人びとのことも何も知らずにいたのに。見るに堪えないこの映像によって、世界中のアラブ人とイスラム教徒は、英米のダブルスタンダードを嫌でも思い知るだろう。そっちが捕虜になって屈辱的立場に置かれているのをこっちが映すのは構わないが、こっちが捕虜になったら映したりしないだろうな」 。

ロジャー・モーゼイはウムカサルの苦難を 「ワールドカップのようだ」 と言った。ウムカスルの人口は4万人だ。うちひしがれた難民が押し寄せ、病院は人であふれている。こうした惨状はすべて 「同盟軍」 の侵略と英軍の占領が引き起こしたものに他ならない。国連は人道援助スタッフの撤退を余儀なくされた。

ウムカスルに救援チームを送っていたCAFOD(カトリック海外開発機関)によれば、非常時に一人一日あたり最低限必要な水の割り当ては20リットルなのに、病院にまったく水がなく、人々は汚染された井戸から飲んでいる。世界保健機構によると、イラク南部で150万人が水の供給を断たれ、伝染病発生は必至だ。そして 「我らの兵士たち」 がこの状況を改善するためにしていることといえば、幼稚っぽく格好つけて大統領宮殿を占拠してみせ、軍と無関係の町に携行ミサイルを撃ち込み、クラスター爆弾を落とすことだけだ。それ以外にいったい何をしているというのか。

英軍大佐が、自分の部隊に 「埋め込まれている」 記者団に向かって、 「現在も戦闘が行われている地域に救援物資を運ぶのは困難だ」 と嘆く。彼は自分の言葉がはまり込んでいる論理のおかしさに気付いていない。イラクが戦闘地域でなければ、英米軍が国際法を公然と犯すことさえなければ、救援物資を届けるのに何の困難もなかったはずだ。

広報活動をとことん仕込まれたこういう英軍将校のどぎついプロパガンダには、とりわけ醜悪なものがある。将校たちはイラクやイラク人のことなど、まったく何も知らない。いま自分たちがもたらしているのは、世界最悪の圧政からの 「解放」 であり、どんなことであれ、たとえクラスター爆弾や赤痢による死でさえも、 「サダムの下で生きる」 よりはましだと言う。だが都合の悪い事実がある。ユニセフによると、バース党は中東で最も近代的な公共医療サービス制度を築いていた。

フセイン政権が過酷な独裁であったことに議論の余地はない。しかしサダム・フセインは石油による利益を利用して、宗教色のない近代的な社会を作り、豊かな中流層を厚く育てた。アラブ諸国の中で90%の上水道普及率と教育の無料化を達成したのはイラクだけである。これらはすべて英米による制裁でぶち壊された。1990年に経済制裁が課されたとき、イラク行政は食料配給制度を整備した。この制度について、国連食糧農業機関(FAO)は 「効率性の手本ともいうべきで、間違いなくイラクを飢餓から救った」 と言ったが、これもまた侵略の開始とともに一挙に破壊された。

米軍による 「友軍誤射」 を受けた車両から死傷者を救出する英軍部隊が、なぜ防護服を着なければならないのか。それを英軍は説明するべきだ。理由は、米軍が ウラン塊 を仕込んだミサイルや戦車砲弾を使っているからだ。私がイラク南部を訪れたとき、湾岸戦争で米英軍が劣化ウラン弾を使用した地域では、がんが7倍も増えていると医師たちは見ていた。クウェートと異なりイラクには、戦後の制裁下で、戦場の汚染を除去する装置の輸入が許されなかった。バスラの病院には、1991年までは見られなかった様々ながんに侵された子どもたちで一杯の病棟がある。鎮痛剤などなく、アスピリンがあればいい方だ。

わずかの例外(ロバート・フィスクやアルジャジーラに敬意を表したい)を除けば、こうしたことはほとんど報道されていない。メディアは予め定められた役割を演じている。アメリカ帝国にとって[軍事力がハードな権力なら]メディアは 「ソフトな権力」 である。 「われわれ」 の犯罪を指摘することはめったにない。犯罪を犯罪といわずに、善意から思わぬ悪が具現してしまうことがある、そのせめぎ合いが問題だという偽のイメージを伝える。職業的にも倫理的にも許されない見下げ果てた怠慢行為だ。そのせいで、こういった仰々しい物語や見せかけの勝利につきものの危険がいつの間にか招き寄せられつつある。イランでも、北朝鮮・シリア・キューバ・中国でも同じことが繰り返されかねない。

ジョージ・ブッシュは 「命令に従っただけだ――というのは言い訳にはならない」 と言った。彼は正しい。ニュルンベルク裁判でも、違法な侵略戦争において良心に従う権利が一般の兵士にあることを明確に認めている。ふたりの英軍兵士が勇気を示し、良心的軍務拒否者となることを敢えて求めた。彼らは軍法会議にかけられ、有罪になれば収監される。メディアは、この二人の兵士について何の問題提起もしていない。ブッシュと同じことを主張したジョージ・ギャロウェイは非難され、下院のタム・ダリエル長老とともに、労働党院内幹事からはずすと脅された。

下院議員を41年務めたダリエルは、ブレア首相は戦争犯罪人としてハーグの国際法廷に送られるべきだと言う。これは根拠のないことではない。今ある証拠に基づけば、ブレアは戦争犯罪人であり、どんな形にせよ犯罪に手を貸した者もまた国際刑事裁判所に通報されるはずだ。彼らは、今となっては真に受ける者もない口実で、見え透いた茶番劇を押し進めたあげく、イラクにテロと死をもたらした。

世界の法曹界にしだいに広がりつつある認識は、ブリストル大学のエリック・ヘリング教授が指摘した通り、新しい裁判所には 「フセイン政権に関してだけでなく、イラク国民の人権を大規模に侵害した、国連による爆撃と制裁に関しても」 審理する義務があるということだ。そこにこの収奪戦争も加えよう。この戦争の真に恐るべきことは、アラブ民族主義とイスラム武闘派を結びつけたことだ。ブレアとブッシュが引き起こした嵐はまだ始まったばかりだといえるほど、彼らの犯罪は巨大である。

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原文  http://www.zmag.org/content/print_article.cfm?itemID=3426§ionID=15

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