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日本世界大戦〈1〉秘密工作―朝鮮の赤い虎????歴史群像新書
森 詠著
北朝鮮に極秘潜入し,拉致被害者を救出せよ!
〈著者の言葉〉私は、いま激しい怒りを覚えている。それは、北朝鮮工作員による日本人拉致事件について、まったく反省をしていない北朝鮮政府の居直った態度と、それに対して、日本政府があまりに弱腰すぎることだ。拉致事件は金正日総書記に責任がある。日本政府は被害者の家族全員の帰国と現状復帰を求めるべきだ。さらに、実行犯たちの処罰を求めるべきである。これらの要求を無視する北朝鮮へは人道援助も経済協力もすべきでない。本書は、そんな北朝鮮に対する、日本人がみな持っている苛立ちと怒りの書である。
六力国協議を行っても、北朝鮮の日本人拉致問題と核保有問題は、一向に進展する気配すらなかった。この状況を打開すべく、ついに日本は、北朝鮮に捕らわれている拉致被害者を救出するために秘密特殊工作を開始する。「朝鮮の赤い虎」と名づけられたこの作戦は、北朝鮮に極秘裏に潜入し、金正日の後継者を捕縛するという究極の任務だった。一方、アメリカは北朝鮮を崩壊させるべく「プランX」を発動し、中国と密約を結んで、中国軍を北朝鮮に侵攻させようと画策する。この動きを察知した北朝鮮は激怒し、日本に向けてテポドンを発射しようとするのだが……。
「はい、ボルトンです」『きみの報告は読んだ。いま大統領閣下や国防長官と、きみの報告について話し合ったところだ。その後も、中国の弱腰に変わりはないのだね』
国務長官の声が聞こえた。ボルトンは受話器を手にうなずいた。
「なしです。この休憩中に、中国側の態度が180度転換することは、まずないと思います」
『止むを得ないな。大統領閣下も決断された。ラムズフェルド国防長官提案のプランXでいくことになった』
「プランXでいくというのですね。待っていました。そうこなくては」
ボルトンはハンターに親指を立てた。ハンターもにんまりと笑った。
……
「休憩時間が終わりました。すぐに中国代表団が入ってきます」ボルトン国務次官は、両手をぱんと叩いた。「オーケー、イッツ・ショー・タイムだ」
正面のドアが開き、王外務次官を始めとして、陳外務第二次官、朱国防次官補の三人、随行の通訳官たちが入ってきた。
ハンター国防次官補とボルトン国務次官はゴールドバーグ大使とともに、にこやかに彼らを迎え、向かい側の席に座るのを待った。
「お待たせしました。では、引き続き、友好的に話し合いを進めたいと思いますが」王外務次官が口を開いた。
ボルトン国務次官がすかさずいった。
「それでは、北朝鮮は、即時に核兵器の開発やテポドンなど近隣諸国を脅かす大陸間弾道ミサイルの開発を中止し、核開発に対しては国際機関の査察を受け入れよ。さらに日本人拉致問題について、即刻北朝鮮は不法に拉致抑留している日本人とその家族を日本へ帰せ。そうした諸々のわが国の提案について、貴国政府はどういう答えを出すことになったでしょうか?」
王外務次官は流暢な英語でいった。
「わが国としては、朝鮮人民共和国の核開発問題については、あくまで平和目的のためであって、純然たるエネルギー不足解消のための原発を得るということを主眼としていると考えます。貴国へ核兵器を開発したという通告を行なったのは、わが国も知ってはいるが、それは朝鮮人民共和国の本意ではない、と考えています。それは朝鮮人民共和国の貴国に対する不信感の表明であり、対イラク戦争のように、貴国が朝鮮人民共和国へ侵略するのではないのか、と恐れているからだといっていいでしょう。わが国としては、改めて提案したい。引き続き六力国協議を進めていくためにも、米国と朝鮮人民共和国とで、二国間協議をしてもらいたい。条約や協約などの文書はだめだというのなら、せめて、口頭でいいから、米国政府は朝鮮人民共和国へいかなる軍事侵略も行なわないと保証していただけないか。さらに六カ国間協議では、しかるべき時期に、朝鮮半島の平和を保証する包括的な共同宣言を作成したい。それによって、朝鮮人民共和国の金正日体制の保証を行ない、ひいては朝鮮半島の平和を維持したいのですが、いかがでしょうか?」
ボルトン国務次官は、頭を左右に振った。
「その内容では、この実務者会談が始まって以来、一歩も前進していないですな。これまで何度もいいましたが、わが国は、文書はもちろん、口頭でも金体制の安全を保証するわけにはいきません。わが国は北朝鮮を侵略するつもりは毛頭ないが、核拡散防止のため、開発した核兵器や大量破壊兵器をテロリストの手に渡らないようにするために、先制攻撃を行なう権利を保有している。そのためには、予防的に再処理施設など原子力関連施設を攻撃して破壊することはありうる、と申し上げておきましょう」
王外務次官は顔をしかめ、隣の席の陳外務第二次官や朱国防次官補と、こそこそと内緒話をした。
「王外務次官、どうです?そろそろ、本音で話しあうことにしませんかな」
ボルトン国務次官が口を開いた。
「われわれは、いつも本音でお話ししているつもりでしたが」
陳次官が応じた。
ボルトン国務次官はにんまりと笑った。
「では、ざっくばらんにいいましょう。わが国のブッシュ大統領は、独裁者が大嫌いなのです。だから、金正日体制が一刻も早く自壊することを望んでいる。なんなら、北朝鮮の自壊の手伝いをしてもいい」
王外務次官たちは、みな目を丸くしたまま黙り込んだ。ボルトン国務次官は重ねていった。
「貴国の最高指導者江沢氏中央軍事委員長や胡錦濤国家主席は、金正日の独裁体制をどう見ているのですか?本音を聞きたい」
「それは、どういうことですかな?」
王外務次官は首を傾げた。
「江沢氏中央軍事委員長も胡国家主席も口にこそ出していないが、独裁者金正日には不快感を抱いているのではないですかな?できれば金体制が崩壊し、新しい政権に誕生してもらいたいと」
「ほほう。なぜ、そんな風に思われるのですか?」
王外務次官はやや戸惑った表情をし、陳外務第二次官や朱国防次官補と顔を見合わせた。
ボルトン国務次官は続けた。
「北朝鮮政府は、あなたたち中国政府に対して、これまで何度も核兵器の開発は行なっていない、核兵器は持たないと確約していた。それが、突然、貴国政府の頭越しに、わが国に向けて、核兵器の開発を行なっていると明言した。しかも、すでに何発かの原爆を保有しているなどということを、ぬけぬけといいだしている。これは明らかに中国政府の信頼を裏切る背信行為ではないですかな。そんな北朝鮮の金正日総書記を、黙って見過ごすのですか?そのような金体制を、このまま放置しておくのは貴国の利益にならないと思うが」
「……事実はともかく、それでアメリカ政府は何をいいたいのですか?」
ハンター国防次官補が、ボルトン国務次官に代わっていった。
「はっきりいいましょう。わが国の大統領は金正日が嫌いだし、この際、イラクの独裁者サダム・フセイン体制を崩壊させたように、北朝鮮の独裁者・金正日体制を崩壊させたい。それが、米中両国の利益になるのみならず、極東の平和と安全に繋がるではないか、と考えている。金体制のように、親子三代にわたって、独裁政権を世襲交代させようというのは、貴国の信じる社会主義の原則にも反するのではないですかな。独裁者・金正日の非民主的政権が続く限り、北朝鮮の人民は飢え、自由や人権を制限され、貴国への脱北者があとを絶たない。この際、北朝鮮に最も影響力がある兄弟国の中国が武力を使ってでも、金正日体制を終わらせるべきではないか。もし、貴国にできないとあらば、わが国が北朝鮮の金正日体制を崩壊させるため、軍事行動を起こしてもいい。だが、その場合は、貴国の了解なしにはやりたくない。事前に核施設などを攻撃し、独裁国家の牙を抜く措置を取ることにも、貴国の了解を得ておきたいのです。どうですかな?」
「……少々、お待ちを」
王外務次官と朱国防次官補は鳩首し、急いでぼそぼそと話をした。陳外務第二次官も加わり、小声で話し合っている。
……
「しかし、わが国が国連安保理決議もなく、単独で武力を行使したら、国際的な非難を受ける。それに、内政不干渉のわが国の国是にも反するし、国際法にも違反している。貴国ならともかく、そんなことはわが国にはできません」
王外務次官は頭を振った。
ハンター国防次官補は呆れた顔をした。
「王外務次官、意外なことをおっしゃる。貴国はかつて一九七六年に、同じ社会主義国のベトナムがガンボジアヘ侵攻したことを非難し、ベトナムに懲罰戦争をしかけたではないですか。中国はあの時、国連安保理を無視して、国際世論の反対を押し切り、国際法も破って、単独でベトナムヘ大軍を送った。あれなど内政干渉の最たるところであり、貴国の国是にも反するのでは?」
「当時とは時代も違う。政府の考え方も違うので、なんとも……」
王外務次官は目を白黒させた。
ボルトン国務次官が畳み掛けるようにいった。
「わが国政府の考えは、北朝鮮に関しては、貴国の責任において対応してもらいたい。貴国は兄弟国の兄として、弟の北朝鮮を諌めてほしいのです。わが国が対イラク戦争を起こし、独裁国家を打倒したように、貴国も武力を使ってでも、北朝鮮の金体制を崩壊させてほしい。もし、貴国が対北朝鮮戦争を行なうなら、わが国は軍事的に協力することもやぶさかではない。
国際世論がどう動くにしても、わが国政府は貴国を支持するでしょう。近隣の日本や韓国も必ずや貴国に感謝をするでしょう。そして、わが国は貴国へ協力する証として、台湾への軍事援助を順次削減するのもやぶさかではない」
「貴国は台湾問題を朝鮮人民共和国問題にからめるというのですか?」
朱国防次官補が脇から発言した。
ハンター国防次官補がこれに応じた。
「台湾問題をからめようとは思っていない。だが、貴国が北朝鮮を武力成敗すれば、分離独立を志向する台湾政府は次は自分たちだと考え、軍事力を増大させようとするだろう。それに対して、わが国は貴国のために、台湾政府を押さえ込むという引き換え条件があるというのです。もし、貴国がこのまま北朝鮮の核武装を放置するなら、極東アジア情勢は、米中にとって好ましからざる方向に進むだろうと危倶するのです」
「といいますと?」
王外務次官が訊いた。
ハンター国防次官補は、うなずいていった。
「北朝鮮が核武装すれば、極東アジアの軍事バランスは崩れる。日本は独自に核武装を考えるでしょう。韓国も対抗して核武装を求めるはずです。台湾も核武装を考えかねない。もちろんわが国としては、核拡散防止のため、日本や韓国、台湾の核武装に対しては、説得して止めさせるつもりです。だが、わが国としても、戦略的に中東を正面として戦力配備をしているので、極東アジアについては、日本や韓国に自主的な防衛を考えてもらわねばならず、ある程度の核武装は許さざるを得ないだろうと考えている。貴国が日本や韓国に核武装をさせてもいいということであれば、致し方ないが」
「いや、わが国としては、アジアの潜在的軍事大国である日本が、これ以上、軍備拡張することは望ましくないと思っています。ましてや、核武装などとんでもない」
王外務次官が頭を振った。
「だとしたら、貴国は責任をもって、核武装をしている北朝鮮をなんとかしてもらいたい。その代わり、わが国は責任をもって日本、韓国、台湾を押さえ込むつもりです」
ボルトン国務次官は明言した。
ハンター国防次官補が、後から付け加えるようにいった。
「北朝鮮の防備は、対韓国、対日本、そして対アメリカに向いている。北朝鮮の北に位置する中国に対しては、ほぼ無防備の状態だ。貴国の軍隊が北朝鮮へ侵攻するとしたら、背後から攻め込むことになる。それは容易なことでしょう。金正日総書記たちは、よもや兄弟国の中国が攻め込んでくるとは夢にも思わないでしょうからな」