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「5日間食料なしで戦える兵士」開発プロジェクトに取り組む米国防総省(HOT WIRED)
http://www.asyura2.com/0401/war48/msg/437.html
投稿者 シジミ 日時 2004 年 2 月 20 日 19:29:05:eWn45SEFYZ1R.
 

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20040220302.html

Noah Shachtman

2004年2月17日 2:00am PT  兵士たちの母親は、間違いなくぞっとするだろう。米国防総省では現在、兵士が、5日間にもわたって――食事を1回もとらずに――戦闘を持続できるようにするにはどうしたらよいかを研究しているのだ。

 兵士が戦場で任務を遂行している際には、食事をとる時間がないか、食事をする気にならないものだ。だが食物を摂らないと、戦場での任務遂行能力に影響がでてしまう。国防総省の先端研究機関、国防高等研究計画庁(DARPA)の科学者たちは、兵士が最高レベルの体調を持続しながら──食事をとらずに──作戦遂行ができるかどうか、解明しようとしている。

 「兵士がすでに疲れきっているとき、最後の力を振り絞れるようにするために、一時的に利用可能な生化学的方法を探ることが目的だ」と、DARPAの生命科学コンサルタントは匿名を条件にコメントしている。

 DARPAはすでに、いくつかの案を考え出している。いわゆる「ニュートラシューティカル」[「栄養-薬品」の意]と呼ばれる栄養補給食品群を配合すれば、持久力を向上できるかもしれない。また、兵士の体中心部の体温を下げることによって、過熱状態を防げる可能性がある。また、ミトコンドリア──細胞のエネルギー供給源──を活性化することで、細胞レベルから兵士の能力を高めることも可能かもしれない。

 このDARPAプロジェクトは、『メタボリック・ドミナンス』、あるいは「最高度の兵士能力」プロジェクトと呼ばれている。米国防総省では、人間なら通常持つはずの身体的要求をほとんど持たずにすむ戦闘員を生み出すために、将来を見据えた広範な研究を行なっているが、このプロジェクトもその一環だ。たとえば、睡眠の必要を減らす研究プログラムにDARPAは膨大な資金をすでに投入している。また、負傷した兵隊が──衛生兵の助けなしに──何日も戦闘を持続できるようにする技術(日本語版記事)についても、研究に取り組んでいる。

 しかし栄養学者たちは、DARPA傘下で実施されているほかの多数のプロジェクトと同様、メタボリック・ドミナンスが無謀の域に属すると述べている。一部の学者は、このプロジェクトの有効性自体を疑っている。

 ニューヨーク大学の栄養・食品・公衆衛生学部の前学部長、マリオン・ネッスル氏は、電子メールで次のように述べている。「このプロジェクトが求めている成果は、あらゆる点で空想的だと言ってかまわないだろう。カロリーはカロリーであり、熱力学の法則は依然として働いている。そして、人間が人間だという事実はどこまで行っても同じだ。彼らはロボットを使うべきだ」

 しかし、このプロジェクトの関係者は、一部の点では、メタボリック・ドミナンスの研究成果が、ほんの数年先にも実用化されるかもしれないと発言している。

 DARPAのコンサルタントは次のように説明する。「われわれが解明に取り組んでいるのは、悠久の時間をかけて発展してきた生化学的プロセスだ。だから、明日にでも臨床試験を行なおうというわけではない。しかし、この研究の一部(体内の熱を調整する技術)は、一般の予想よりも早く現実のものとなるだろう」

 メタボリック・ドミナンス・プロジェクトではすでに、いくつかの研究努力に助成金を供与している。DARPAは、助成金獲得者を明らかにしなかった。しかし同庁は、オンライン上の公募情報において、数種類の研究領域を挙げている。

 リストの上位に挙がっている研究領域に、身体の代謝作用を変化させることがある。人体は、炭水化物を燃焼させられないときは、代わりに短期間、脂肪を燃焼させることができる──人気のアトキンス・ダイエット法はこの現象を利用している。しかし、長時間にわたって脂肪を燃焼し続けると、体内に毒素がたまり、脳の受け取るエネルギー量も減少してしまう。DARPAは、このような副作用をもたらさずに脂肪を燃焼させる方法を見つけたいと考えている。

 細胞レベルでの研究も考えられる。ミトコンドリアは細胞にエネルギーを供給するが、DARPAは、このエネルギー供給量を一時的に増やせるかどうかについても興味を持っている。

 体温が上昇すると、特定のタンパク質の生成が促進され、このタンパク質がアポトーシス──遺伝的にプログラムされた細胞の死──を引き起こす。DARPAは、このタンパク質を制御する方法や、運動時の体温を下げる方法(日本語版記事)も探りたいと考えている。筋肉は、もうこれ以上動かない疲労の極に達する直前に、血液中の酸素を燃料として使用するのを止め、代謝方法を切り替える。しかし、この無酸素代謝は、乳酸を発生させる。ダンベル・トレーニングをした後で上腕の筋肉痛に襲われるのは、この乳酸のせいだ。科学者たちは、乳酸の発生を抑制したり、分解を促進したりすることが可能かどうか考えている。

 最後に、DARPAは単純に空腹を抑える方法も検討している。食料がないときに身体が必要とする栄養素を供給できるニュートラシューティカル、天然原料を使った製品、従来からある栄養補助食品などが、その研究対象となっている。

 少なくともこの最後の面では、このプロジェクトは、兵士の栄養上の要求をより効率的に満たすことを目的とした、現在進行中の米国防総省の研究と方向を同じくしている。

 「建国以来、軍にとってこれがずっと問題だった──兵士はストレスに抵抗するあまり、げっそりと痩せてしまう。また、[缶詰の]鉛中毒への強烈な恐れが、(兵士の)食欲を減退させている」とタフツ大学のジョアンナ・ドワイアー教授は語った。同教授は、米国科学アカデミーの軍事栄養学の委員会に所属している。

 陸軍兵士システムセンター(マサチューセッツ州ネーティック)では、『ファースト・ストライク・レーション(PDFファイル)』と呼ばれる糧食パッケージの試作品が開発された。調理なしで高カロリー食を兵士に供給するための糧食だ。同センターで戦闘時の食料供給を研究している科学者、ダイアン・ウッド氏によると、この糧食は、小さなサンドウィッチ、『ザップル・ソース』──リンゴをすり潰して炭水化物を添加したもの──、カフェイン含有ガムの3点セットからなるという。また同センターでは、禁煙者用ニコチンパッチと同じように皮膚を通して栄養素を供給する経皮パッチの研究にも資金を出している。

 ある種のハーブが持久力を高め意識を明敏にするメカニズムの解明についても、陸軍兵士システムセンターは研究助成金を出している。クレムソン大学のニュートラシューティカル研究所の責任者、デイブ・ギャンジェミ氏は、3年間にわたる90万ドルの助成金を受け取り、エキナセアなどの植物がもたらす効果を研究している。同氏は、ハーブからの抽出物を軍用食に加えることで、兵士にいっそうの活力を与えられるはずだと考えている。


[日本語版:福井 誠/湯田賢司]
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