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日本は米国の事実上の「保護領」たることを早く止めよと説く。米中心システ
ムは崩壊するからと。
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［平和立国の試練］識者に聞く／４ 歴史・人類学者、エマニュエル・トッドさ
ん
◇対欧連携の道、検討を
◇自衛隊派遣は日本の自立機運を加速する
――イラク戦争への日本の対応について。
短期的にはあまり批判する点はないと思う。ブレア英首相は「有罪」だが、小
泉純一郎首相は「無罪」だ。日本は中国とロシアとの関係が必ずしも安定せず、
安全保障面で米国に依存しているが、英国は米国に追従する理由も利益もなかっ
た。戦争は回避可能だったのに、ブレア首相はイラクの大量破壊兵器の脅威誇張
に加担した。
日本にとっての正念場は今だ。米国がさらに特異性を強める可能性は排除でき
ない。安全保障で日本は複数の選択肢を持つべきだ。冒険主義で好戦的な超大国
との同盟を唯一の選択肢とするのは無理だ。米国からの独立性を強め、自国の安
全を保障する手段を見つけなければならない。
選択肢は二つある。一つはドイツのように自国の安全保障を近隣の核保有国の
バランスに託すこと。もう一つは被爆国・日本として提起しにくいと思うが、核
武装の選択肢だ。日本人にとり核兵器はおぞましいものだが、フランス人、ドイ
ツ人には戦争を不可能にする兵器だ。
――日本の対米関係は今後どうなりますか。
米国に引きずり込まれる形で日本が自衛隊を派遣したことは、むしろ日本の自
立機運を加速することになると思う。派遣を通じて日本は米国問題を経験してい
る。イラク戦争に巻き込まれた日本は対外安保政策を問い直し、日米同盟が危険
であるとの結論にたどりつかざるを得ない。米国システム（米国主導の安全保
障）を破壊している張本人は米国なのだ。
日本人の世論動向は欧州人的だ。戦火をくぐり抜けてきた欧州人、日本人は平
和を必要としている。一方、膨大な貿易赤字を抱える米国はカネを必要とし、世
界への課徴金を正当化するために「小さな戦争」を必要とする。日欧の国益は平
和にあり、米国の国益はある程度、戦争にある。
――世界の今後は？
欧州、ロシア、中国、日本の属するユーラシアは米国よりもはるかに広大だ。
その中で和解が達成される度に米国システムはほころびる。世界が平和と団結の
利益を自覚すれば、米国の超大国としての地位は存在し得なくなる。
世界は日米欧３極と言われるが、経済を見れば欧州、日本が生産し、米国は消
費する一方だ。消費大国の米国が、今後も世界の富を吸収するブラックホールで
あるとすれば、中期的に日本は対欧連携の道を検討せざるを得なくなる。
米国が今後、正常になる可能性もあるが、多くの国々の反対を押し切ってのイ
ラク戦争、情報機関による脅威の誇張、グアンタナモ（戦争拘束者収容施設）で
の人権軽視などを見ると、米国であしき政治の形が出現している可能性がある。
日本国民が自らの道を決めるためには、米国の事実上の「保護領」としての地
位に終止符を打たなければならない。【聞き手・構成・パリ福島良典、写真も】
＝つづく
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作家ポール・ニザンの孫。パリ政治学院を経て、英ケンブリッジ大で博士号
（歴史学）取得。仏国立人口学研究所資料局長。「最後の崩壊」（７６年）でソ
連崩壊をいち早く予言した。「第三惑星」「新ヨーロッパ大全」「移民の運命」
「経済幻想」「帝国以後――アメリカ・システムの崩壊」など著書多数。５２歳。
（毎日新聞２００４年２月１８日東京朝刊から）
http://groups.yahoo.co.jp/group/nomorewar/message/12002
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。