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Date: 2004年2月7日 (土) 午前5時37分
Subject: [TUP速報]250号 チャルマーズ・ジョンソンのささやかな提案 2004年2月7日
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ブレア英政権の情報操作疑惑を免罪したハットン委員会の“ホワイトウォッシ
ュ(まやかし)”報告の後を受けるかのように、アメリカでも諜報の問題点を探
る“独立”調査委員会が設けられる運びになりました。アメリカ国民(および
世界の人びと)が納得できる調査を期待して、チャルマーズ・ジョンソンが緊
急に提案します。
TUP 井上 利男
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『ささやかな提案』
独立調査委員会は隠れ蓑か? 優れた究明報道記者を委員候補に推薦する!
チャルマーズ・ジョンソン
トム・ディスパッチ 2004年2月5日
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国連の同意もなく強行したイラク侵略だったが、大義名分に掲げたサダム・フ
セイン保有“大量破壊兵器”の情報はウソだったと判明してしまった。国民の
怒りに押され、ついにブッシュ政権は自己検証を行うと決定した。
政府の提案によれば、この重要な役割を担う委員会の顔ぶれは元CIA高官
(ロバート・ゲイツ、リチャード・カー)、“諜報通”の元連邦議会議員(ウ
ォーレン・ラドマン、ゲィリー・ハート)、それに先日の報告と裏切りで政府
の面目をつぶした当人、兵器調査官デービッド・ケイである。驚くにはあたら
ないが、政府の思惑どおりにいけば、調査結果の公表は11月の大統領選挙の
ずっと後になる。
なりゆき全体が“臭いものにフタ”である。まるでエンロンの重役たちに自己
総括をお願いするようなものだ。古巣の身内、仲間、それに政界コネクション
を守ることに熱心な男たちが寄り集まって、アメリカの対イラク諜報体制が
“手薄”だったと、しかるべき時に国民に告げるに違いない。(開戦は、イラ
クの大量破壊兵器に対する『国家情報分析』が発行されて2年もたってからだ
った)
今や有名になったニジェール産“イエローケーキ(粗製ウラン)”にまつわる偽
情報の責任所在にしても、わが国のCIAに相当する英国のMI6にお鉢が回
るだろう。ジョセフ・ウィルソン元大使の実態報告が無視され、次いで彼の妻
がCIA要員であると暴露された本当の理由は都合よく忘れ去られるだろう。
ブッシュ政権がイラク戦争に乗り出したのはどうしてか? またどのような経
緯でか? 本当の物語はあやふやな言葉の迷路の中で見失われてしまうだろう。
果てしのない別紙資料を添えた、果てしのない委員会報告が積みあがるだろう。
それでも結局、特定の誰かが責任を負わされることはないと断言できる。(ア
メリカの対ベトナム政策の失敗について、近ごろロバート・マクナマラが“戦
争の気運”のせいにして、自らの責任を問わないのと同じ)
私に提案がある。開戦前の対イラク諜報のどこがおかしくなったのか、ブッシ
ュ政権が本気で究明したいのであれば、一流の調査報道記者を委員に指名する
べきである。誰よりも、ニューヨーカー誌のシーモア・ハーシュ、月刊アトラ
ンティック誌のジェームス・ファローズが欠かせない。彼らは真正ジャーナリ
ストとして、ブッシュ政権内部で現実に何がおこっていたのか、私たち国民に
細大漏らさず伝えてくれた。
ハーシュ記者は、ニューヨーカー誌のいくつかの記事で、とりわけ2003年
10月27日号掲載『ストーブの煙突』[注1]で、ポール・ウォルフォウィッ
ツ国防次官、リチャード・チェイニー副大統領、ドナルド・ラムズフェルド国
防長官、その他、政権内の主戦論グループの面々が、既定路線だった対イラク
戦争推進に都合のよい情報の断片をつまみ食いした経緯を明かしている。
ジェームス・ファローズは、月刊アトランティック2004年1・2月号に掲
載された同じように優れたドキュメント記事[注2]で、アメリカがイラクを侵
略してから、何もかも最悪の展開になってしまったのはどうしてなのか、その
理由を探っている。
略奪が横行したのはどうしてなのか? ゲリラ攻撃が続発しているのはどうし
てなのか? サダム・フセインを捕まえたのに、イラクの一般大衆をアメリカ
の味方に惹きよせられないのはどうしてなのか? このような失敗のほとんど
は、ずっと以前からNGO(非政府組織)が予告していたことだとファローズは
指摘する。NGOはペンタゴンに協力しようと努めていたが、せっかくの助言
が故意に無視されたのである。
情報の問題について、おそらくファローズの功績で特筆すべきは、長年にわた
り連邦士官学校の教官を務めた退役陸軍大佐で、アメリカの攻撃が“首尾よ
く”終わった後に予測されるイラクの姿の「正味評価」をまとめたサム・ガーデ
ィナーの発掘である。
戦後の社会基盤についてのガーディナーの予測は、驚くほど正確であるだけで
はなく、すべて無料でインターネット検索できる情報だけを用いてまとめられ
ている。30億ドル以上もの大金をかけた諜報機関はまったく必要なかった。
もちろん、ガーディナーの警告はほとんど注意を払われなかった。政府はすで
に戦争しか頭になくて、他人の意見に聞く耳をもたなかったからであり、まだ
先の「戦後」イラクに関する情報などはなおさらのことだった。
ウソに頼った無謀な決定の責任を回避したい政府は、一方では非難をすべて中
央情報局に振りむけようと策謀しながら、他方では、その矛先がすべてCIA
に集中しないように配慮して、身内に甘い“OB(先輩)”を慎重に選んだ委員
会を目論んでいる。
イラク情報を捻じ曲げ、でっちあげ、さもなくば、もてあそんでいたのは(ま
た、今も疑いなく同じことをしているのは)誰なのか、本気で知りたいなら、
独自の“ディープスロート”[訳注:ウォーターゲート事件の内部告発者]を掘
り起こせるぐらい優秀な報道記者が必要である。ジャーナリストは万能ではな
いが、一流となれば、情報提供者を守るためならブタ箱入りも厭わない程度に
は筋金がとおっている。
政府ご用命の委員会が問いただそうとする相手は、ポストが大事、家族への報
復が恐い、そんな官僚たちだろう。まともな資料が出てくるとはとても考えら
れない。大統領、議会、最高裁判所が三権なれあい関係の危険領域に入って、
アメリカの国益を損なってしまっている。それでは、“第四権力(報道言論
界)”が私たち国民を救い出せるかどうか、お手並みを拝見しようではないか。
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[注1] The Stovepipe by Seymour Hersh
New Yorker, October 27, 2003 issue
http://www.newyorker.com/fact/content/?031027fa_fact
[注2] Blind Into Baghdad by James Fallows
The Atlantic, January/February 2004 issue
http://www.theatlantic.com/issues/2004/01/media-preview/fallows.htm
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[チャルマーズ・ジョンソン著作(帝国シリーズ)]
○新刊『帝国の悲哀―軍国主義、秘密主義、共和制の終焉』(仮題・未邦訳)
"The Sorrows of Empire: Militarism, Secrecy, and the End of the
Republic," Metropolitan Books, Jan.,2004
○既刊『アメリカ帝国への報復』(鈴木主税訳・集英社刊 2000年6月第1刷)
"Blowback: The Costs and Consequences of American Empire"
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A Modest Proposal by Chalmers Johnson
posted at Tom Dispatch, February 5, 2004
http://www.nationinstitute.org/tomdispatch/index.mhtml?emx=x&pid=1236
Copyright C2004 Chalmers Johnson TUP配信許諾済み
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翻訳 井上 利男 / 監修 星川 淳 / 協力 TUPチーム
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萩谷 良 hagitani ryo
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