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【イスラマバード西尾英之】パキスタンの核開発技術漏えい疑惑で、漏えいを認めたアブドル・カディル・カーン博士(67)を赦免することが5日決まった。あくまで軍、政府の関与を否定し漏えいを個人の行為としたうえで、国民の人気が高い博士に恩赦を与えるという今回の措置は、内外の圧力の間で微妙な均衡を保ってきた同国のムシャラフ大統領の苦心のシナリオであった可能性が強い。大統領は国内的には「就任以来最大の危機」を乗り切りつつあるが、核拡散の実態を明らかにせずに疑惑の幕引きを図ったことで、同国の核管理に対する国際社会の不信感は逆に高まったといえる。
■「国の尊厳」守る
「博士への疑惑はパキスタンに対する侮辱。赦免は当然のことだ」。イスラムの休日の金曜日の6日、礼拝のためにイスラマバードのモスクを訪れた男性(41)はそう語った。
パキスタンを「イスラム世界初の核保有国」に導いたカーン博士に対する国民の人気は絶大だ。イスラム原理主義勢力も博士を英雄扱いしており、大統領が疑惑処理を誤れば反ムシャラフ感情が一気に高まって国内は激しい混乱に陥る可能性があった。
5日夜の記者会見で大統領は、「博士は今も国の英雄だ」と強調。外国人記者の質問に感情をあらわに「我が国は主権国家だ。調査の資料を渡すことも、国連に核施設を調べさせることもしない。国益に反して核開発を後退させることもない」と言い切った。
だが同国のあるジャーナリストは「米国などから圧力を受ければ、記録や施設開示には応じざるを得ない。大統領の強硬姿勢は国の尊厳を維持し国内世論を抑えるための『リップサービス』だ」と指摘する。
■実態は未解明
同国の核開発は宿敵インドへの対抗上、国を挙げて取り組んだもので、科学者個人が技術を持ち出したとの説明は説得力に欠ける。だが軍の関与を認めれば長年軍中枢部にあった大統領自身の責任を認めることになり、政権の崩壊を招きかねない。大統領は政権の動揺を嫌う米国の一貫した支持のもとに「個人の行為」との結論を貫いた。
これまで核に関する独自報道がタブー視されていた国内でも「博士の漏えい告白は強要されたものだ」と指摘する記事も出た。「軍、政府は博士をいけにえにして保身を図った」との疑念は内外で強い。政府と博士の間で、博士が漏えいを認める代わりに政府が赦免に応じるとの裏取引があったとの見方も根強い。
漏えいの詳細を明らかにせずに事件の幕引きを図ったことで、同国の核管理に対する国際社会の疑念は逆に高まったといえる。
大統領は会見で核に関する「ブラックマーケット」の存在を認め「闇市場の根は広く、その中心地は(アラブ首長国連邦の)ドバイだ」と語った。また同国の核兵器開発が一部闇市場を通じて行われたことも明らかにした。これらの「闇市場」がどこまで解明されるかは、パキスタンやイラン、リビア、北朝鮮など今回の疑惑にかかわった各国がどこまで国際的な調査に協力するかにかかっている。
[毎日新聞2月7日] ( 2004-02-07-01:58 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040207k0000m030137000c.html