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ＯＢは手紙、現役は笑顔で「共感」
― 自衛隊員や防衛庁職員にとって大先輩でもある小池さんのイラク派遣反対行動は防衛庁関係の方々にどう受け止められていますか。
小池 同感だ、頑張ってくれという激励の手紙が実にたくさん届いていますよ。私と一緒に防衛庁で働いた内局の上司や同僚ばかりでなく制服組の幹部ＯＢ達からも、「よくぞやってくれた」とたくさん共感の手紙が届いています。これはどういうことかわかりますか。
自衛隊員はそもそも命をかけて国を守るために入隊して訓練に励んでいる人達なんです。決してイラクへ行って命を危険にさらすために入隊した人達じゃないんですよ。だから現在は自衛隊の中は小泉総理への怨嗟の声でいっぱいになっているということです。
現役の隊員や職員からの手紙が来ないのは「形」になって残ったらそれが格下げや解雇の理由にされて家族が路頭に迷うことを恐れるからむしろ当たり前で無理もありません。
そのかわり私が会う隊員達は皆ニコニコしてますから、表向き口に出せないけれど私の言う通りだ、とその表情で私に気持ちを伝えているのがわかります。みんな人間なんですから命はたったひとつしかありません。これから死ぬかもしれない所へ行かされる人の感情がどんなものか、同じ人間として想像してくだされば十分わかることだと思います。
◇北朝鮮対策の米国頼み派は弱虫
― 一般国民からの反応はいかがですか。首相の繰り返す「国益上必要」という反論は届きませんか。
小池 一般国民の方々からは手紙やメールやファクスなどで本当にたくさんの声が届いていますよ。大多数は共感と激励の内容なんですが、ごくわずかながら「お前の意見はけしからん」と書いてくる人がいます。その反論の中身は判で押したように「日本は北朝鮮に対応するのに米国の支援が必要なんだから米国に協力するイラク派遣は必要」という考え方です。私はこの考え方こそけしからんと言いたい。
よく考えてみてください。米国に助けてもらわなきゃ北朝鮮に対応できないから自衛隊員を犠牲にしてでもイラクの戦場で米国に協力した方がいいと言ってるんですよ。なんと弱気な考えでしょうか。北朝鮮に対しては独力で対応するだけの防衛力をこそ日本は持つべきだと思いませんか。その防衛力は憲法の精神に基づいて絶対に外に向かって使ってはいけません。そうしない限り北朝鮮から「なんだ、日本人は自衛隊を犠牲にしてまで米国に助けを求めて我々に立ち向かうような連中か」となめられるだけです。
◇犠牲者出たら志願者減り徴兵制に
― すでに先遣隊などが派遣されている現状をどう見ますか。
小池 小泉首相は「非戦闘地域だ、武力行使はしない」と苦しい説明を繰り返していますが、仮にイラク特措法の定義に正確に基づいて言うとしたら「イラク全土が非戦闘地域だ」と言うべきなんです。イラクの現状に対してそんな説明をしたら世界中の笑いものになるからごまかしているだけでしょう。 つまりイラク特措法は国と国との正規軍同士の戦いしか戦闘行為と見なしていないんです。ゲリラなどの不正規軍がいくら激しく攻撃してきてもその法律上は戦闘行為にならない訳です。こんな、戦時国際法の常識とかけ離れたとんでもなくでたらめな法律だから廃案にすべきだと最初の要望書を全国会議員に送ったんです。 事実上のゲリラ戦場へ武装自衛官を送ったらいやでも武器を使わざるを得ませんから、憲法が禁じる海外での武力行使そのものをやれと首相は私の後輩達に命令したことになります。私は黙って引き下がる訳にはいきませんから昨年の10月にイラク派遣をやめるよう首相や防衛庁長官、外務大臣をはじめ防衛庁の課長級以上の全幹部に要望書（資料参照）を送りました。 現状の自衛隊派遣が続けば犠牲者は避けられないでしょう。もし一人でも尊い命が失われたら間違いなく自衛隊の入隊志願者は激減するし少子化現象もありますから政府は徴兵制を敷かなければならなくなるでしょう。そして世界の警察官として米国の行く世界中の戦場に派兵されることになる。そんな事態こそ先の大戦で散華された英霊が最も望まれなかった国民の不幸そのものじゃありませんか。
http://www.26cluster.ne.jp/news/sp_iraqi031.asp
派遣止し止め訴訟は歴史的意義
― 箕輪登元郵政相が先週、小泉首相を相手に「イラク特措法とそれに基づく政府の自衛隊派遣基本計画は憲法と自衛隊法に違反する」として札幌地裁に派遣差し止めを求める国事訴訟を提起されましたが、この行動をどう見られますか。
小池 箕輪先生は私も防衛庁在職中に国防関係の温厚篤実な議員として印象深い方ですから、あなたのインタビュー記事（本シリーズ２回目）を読んで正直驚きました。こんな激しい行動を、しかもおひとりで起こされたことに胸を打たれました。箕輪先生のおっしゃることは私もずっと同じことを考えていますから全く同感です。
ただ心配なのは、これまでの安保政策や自衛隊関係の憲法裁判では最高裁が「統治行為論」を盾に「判断しない」と言って結果的に原告が敗訴していますから、時間がかかったとしても最終的には敗けるかもしれません。それでもこの裁判の過程でイラク特措法という急ごしらえの法律のいい加減さが多くの国民に知らされて今の自衛隊イラク派遣がいかに愚かな政府の誤りであるかが明らかになることは歴史的な意義がある訴訟だと胸を張って支援したいですね。
◇米国の圧力から隊員の命守れ
― 最後に首相を含めた日本人に小池さんからのメッセージを。
小池 日本国憲法下で自衛隊は「わが国の平和と独立を守るため」（自衛隊法52条・服務の本旨）にあります。さらに「服務の宣誓」で「日本国憲法を遵守する」ことを誓っている自衛隊員は憲法違反の海外派兵に参加してはいけないのです。
祖国防衛のために入隊してきた隊員達に外国でのゲリラ戦場で犠牲を強いることは政府による契約違反行為であり甚だしい人権侵害です。国民一人ひとりの幸福を離れた「国益」なんてありません。
私達日本人は小泉首相も含めて８・15の原点に戻り、憲法９条の持つ意義を十分わきまえて海外派兵中心の防衛政策から祖国防衛中心へ切り換えるべきです。24万自衛隊員の命とその家族をいつくしみ、渾身の勇を振るって米国の圧力から彼らを守ってこそ真の為政者であり大和もののふだと言えるんです。小泉首相に捧げた私のつたない歌が私の今の心境です。我が国の平和と国民の幸せが首相の誤った判断によって無惨に壊されないことを心から願うのみです。
敷島の
大和心を
人問わば
イラク派兵は
せじと答へよ
― お忙しい所、長時間ありがとうございました。
http://www.26cluster.ne.jp/news/sp_iraqi032.asp
資料
◇自衛隊のイラク派遣を行わないことを求める要望書
２００３年10月22日付けで小池さんが小泉首相などに送った要望書の主旨は次の通り。
①イラク特措法は憲法違反。②国家間の武力紛争における戦闘のみを「戦闘行為」と定義するイラク特措法は戦時国際法にも違反。③同法の定義で言えば「イラク全土が非戦闘地域」となる。④国会で非戦闘地域はどこかと問われ「私にわかるかけがない」と答えた小泉首相はイラク特措法にも違反。⑤外国のゲリラ戦場で自衛隊員の命を危険にさらすのは憲法違反であり政府の契約違反の人権侵害。⑥イラク復興のお金を政府が初回分として１５６５億円出しただけで米国を十分満足させるもの。人まで出すのは我が国の存亡と国民の幸せに極めて重大な結果を生む。⑦イラク派兵が強行されればもはや憲法の歯止めはなくなる。世界の戦場のほとんど全てが不正規軍とのゲリラ戦場であり米国の行く世界の戦場のほとんどに派兵されることになる。自衛隊入隊者は激減し徴兵制が必要になり、現在の自衛隊の明るく民主的な気風もやがて荒れすさんだものに変わることを危惧する。（以下略）
解説
◇全国の法律家が注目の箕輪訴訟
自民党の国防族議員の大物だった道産子元開業医が一人で原告となって１月28日札幌地裁に提訴された自衛隊派遣差し止め訴訟に早くも全国の法律家が熱い視線を注ぎ始めている。このほど講演で紋別を訪れた前駐レバノン特命前権大使の天木直人さん（今シリーズ１回目に登場）が紋別集会の報告で知った箕輪訴訟の動きを全国に発信しながら支援と連帯を呼びかけたところ全国の市民平和運動グループや法律家から「画期的で具体的な問題提起であり連帯して同主旨の訴訟をこちらでも起こしたい」という反響が続々届いているという。天木さんは「日本人の良識の行動の広がりが世界に報道されることの意義は計り知れない。アルジャジーラなど中東の報道機関が大きくこの訴訟を取り上げてくれたら中東の諸国の人々の対日不信感が元々の厚い信頼感に変わる可能性もあり、レバノン大使として職をかけて外務省に国連中心外交を訴えた私としてもできる限りの協力と連帯の行動を取りたい」と語っている。日本の主権者が憲法違反で現職の首相を裁判に訴えたというニュースは世界中の日本人観を変えるほどの衝撃力を持つと言えるかもしれない。
http://www.26cluster.ne.jp/news/sp_iraqi033.asp
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。