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米国企業のための「復興ビジネス」が復興を遅らせている(上)
連日の停電、石油不足、大量失業……
米国が主導するイラク復興が行き詰まっている。その原因は、復興よりもビジネスが目的とされていることにある。筆者は十二月にイラクを訪問した。このレポートは一月一三日付で、「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」のウェブページに掲載されたものである(原題は「復興の収支」)。
侵略から九カ月を経過して、常態化した電力不足、深刻な石油不足、大量の失業によって示される生活条件の劣悪化は米国が主導するイラク復興の失敗を際立たせている。治安の問題や行政能力の欠如もその原因の一部であるが、問題をより適切に説明しているのは、米国とその請け負い企業が戦後の報奨金の分け前をできるだけ多く手に入れようとしているという事情である。
たとえ占領が完全にうまくいっているとしても、それは間違った行為である。これが占領の失敗を強く望んでいるが、自分たちの国の復興が成功することを期待しているイラクの人々の間での一般的な意見になってきた。占領者たちがどれほど首尾よく復興を成し遂げようとしたとしても、米国と米国の企業はこの地にとどまるいかなる権利も持っていない。
しかし、イラクの人々を一層憤慨させているのは、彼らが復興を試みようとすらしていないことである。
バグダッドのダウンタウンのほとんどの地域は、今でも夜は暗闇に包まれ、警察の青と赤のライトが通りを照らし、断続的な銃声が沈黙を破るだけである。どう考えても、解放の喜びにあふれた首都の光景ではない。イラクの大部分の人々が一日十六時間(平均)も続く停電にうんざりしている。暗闇の中でパーティーをするのはちょっと難しい。電球を取り替えるために何人の米兵が必要だというのだろうか? これまでに十三万人がやってきたが、期待しても無駄だ。
市内の南の地区では、自動車が二列に並んでいる。この列は道路に沿って蛇行しながら、チグリス川の橋を越えて、三キロにわたって続いている。終着点は鉄条網に囲まれ、ハンビー(米陸軍の車両)と装甲車によって守られたガソリン・スタンドだ。営業終了時間になると、ほとんどの客は自動車を停車したまま帰る。順番を放棄して翌日にはじめから並ぶのはたまらないからだ。世界第二の石油埋蔵量を誇る国で、ガソリンのために夜通しで行列ができる。
日中は、イラクの千二百万人の失業者の一部がグリーンゾーンの第三チェックポイント前に群がる。ここは要塞化されたCPA(連合軍暫定当局)の本部である。米国人が自分たちの「タコ壺」から出てきて彼らの履歴書を受け取るという可能性はほとんどないが、それでも人々は毎日やって来る。運試しにホテルのロビーにやって来て、運転手や通訳を探しているジャーナリストやNGOの活動家に群がる人たちもいる。
職を失った多くの大学教授や技術者、公務員がタクシー運転手になったので、バグダッドは今では教育水準が高いタクシー運転手の数では世界一だろう。彼らに話しかけると、彼らはたいてい、「サダム・フセインでさえ、こんなひどい失敗はしない」と言うだろう。これはいまでは常識となっている。
彼らはフセインの復帰を望んでいるわけではないが、占領軍が電灯を付け替えるといった単純な仕事にすら完全に失敗するとは思ってもいなかった。電気が使えないことが大部分のイラクの人々の最大の不満である。このほかにも不満のリストは続く。電話回線が敷設されていない、学校の修復がいい加減だ、道路が通行できない、ゴミが収集されない、下水が破損している、行政機構が機能していない、大量の失業と貧困の拡大。イラクはいまだに、予想を越える混沌の中にある。
生活は前よりも悪くなっているというがイラクの人々の一般的な意見である。支配的な感情として、憤激と諦め、苛立ちと懐疑が複雑に入り混じっている。イラクの人々は一方では占領を苦々しく感じているが、多くの人々は毎日の生存を米国に頼らざるを得ないことを仕方がないと考えている。その一方で、彼らには、世界で唯一の超大国が、これだけの時間と金がありながら、復興プロセスを軌道に乗せられていないことを信じられないでいる。
米国はイラク人があまりに多くのことを、あまりに短期間にできると期待していると言っている。CPAのバグダッド地域調整官であるテッド・モースは「問題は純粋に時間の問題だ」と説明する。「紛争状態にあるときに、人々は、物事がすぐにできると考えがちだ。しかし、それは不可能だ」。
しかし、イラクの人々は一九九一年に、それが不可能でないことを示した。バグダッドのダウラ発電所の管理者であるジャナン・ベフマンさんによると、第一次湾岸戦争の後、国連の制裁にも関わらず、イラクの行政機関と技術者たちはわずか三カ月で発電能力を戦争前の水準まで回復できた。現在は、すでに九カ月近くになり、しかもフーバーダムをはじめ世界最大の建設工事のいくつかを手がけてきたベクテル社が関与しているにも関わらず、イラクの発電所は必要な電力(二万メガワット)の二〇%以下の三千六百万キロワットしか供給していない。
もちろん占領軍は認めないだろうが、問題の多くは、違法な占領が続く限り何もできないようにするという抵抗運動の成功によるものかも知れない。抵抗運動のために占領当局は爆弾を避けるのに精一杯で、イラクの人々の雇用を提供するといった「取るに足りない」問題のために時間を割くことができない。抵抗運動が戦闘員だけでなく、占領から利益を得ている人たちをも標的にしているために、請け負い業者たちが厳重に守られた区域の外に出ることは期待できないだろう。たとえば、ベクテルの従業員が移動するときは、必ず軍のヘリコプターか装甲輸送車を使い、各車両に最低一人の狙撃兵が配置される。
混乱の多くはまた、イラクを統治している人々の不適格さや経験の欠如に帰せられるだろう。グリーンゾーンに陣取った行政官たちが行政の経験をほとんど、あるいは全く持っていないことについて多くのことが語られてきた。関与している種々の機関の間での混乱や連携の悪さについても多くのことが報告されてきた。しかも、これまでの植民地行政がそうであったように、もっとも優秀で賢明な者たちを集めて、遠隔の地で、銃で迎えられる危険な部署へ再配置するというのは、多くの場合困難である。
しかし、治安の問題や担当者の不適格さは、全体の複合的な問題の一部ではあるが、復興活動がこれまで明らかに失敗している理由を十分に説明するものではない。
第一に、最近のギャロップの世論調査によると、米国が民主主義を確立するために介入したと考えている人は(質問された人の)わずか一%であるが、それでも大多数の人々は占領に反対する闘いに積極的に参加しているわけではない。抵抗運動は拡大しているが、まだインティファーダにはなっていない。
米国がイラクを支援するために駐留していると考えている人はわずか六%だが、復興を支援する位置にあるイラク人たちは、実際にその活動が進むことを望んでいる。彼らによると、それは占領軍を支援するためではなく、石油と電気を使えるようにするためである。イラク人たちは必ずしも米国人が好きではないが、冬の朝には熱い飲み物を飲みたいと思っている。
ダウラの精油所の所長であるダザール・アル・クシャブさんは、「これがシステムなら、従わざるをえない。これが物事を進める唯一の方法なのだから、そうするほかない」と言う。他の公共施設の管理者たちも同じように言っている。石油産業の一般労働者も、交渉を有利に進める手段として、あるいは占領を妨害する手段として精油所を閉鎖することはためらっている。
彼らは一方で、それが米国を立ち往生させるために有効であることを知っている。他方では、それがイラクの人々に及ぼす影響を恐れている。しかし、連合軍を支持するかどうかという質問に対しては、サザン・オイル社労働組合のリーダーであるハッサン・ムミアさんは明確に答えた。「月を隠すことはできない。すべての誠実なイラク人は占領を拒否するべきだ」と。
しかし、担当者の不適格さという非難は、完全には当たっていない。なぜなら、不公正な入札や疑惑に満ちた人脈についてのあらゆる主張にも関わらず、ベクテルやハリバートンがその業務についての知識がないと非難するのは無理がある。
ベクテルは全世界でプロジェクトを手がけており、世界最大の建設会社の一つであり、歴史上最も壮大な建設事業をいくつか完成させてきた。ハリバートンは、数十年にわたって世界中の油井や製油設備を修理してきた。イラクの官僚でさえ、技術的な観点から見ればこれらの米国企業と提携するべきだということを認めている。このような不本意な敬意が徐々に失望に変わりつつある時、イラクの人々はこれらの企業がどうして彼らの期待を裏切ることになったのかと、ますます当惑を深めている。
広く流布されているもう一つの有力な説明は、復興の遅れが占領軍による、イラク人を完全に従属させるための意図的で計画的な行動であるというものだ。犬を空腹にさせておけば、吠えなくなるだけでなく、どこへでも主人について行くようになるというわけである。
この説の難点は、復興プロセスが比較的非集権的なプロセスであり、数十の企業や請け負い業者が関与しており、わざと失敗するようにはっきりと指示することがほぼ不可能だという点である。しかも、抵抗運動の拡大に直面して、この戦術は非常に危険である。なぜなら、それは「イラク人の心をつかむ」ための努力を無に帰してしまうからである。犬を空腹にさせておくと、絶望的になって、どう猛になってしまう可能性もある。
なぜ復興がこれまで失敗してきたかを解明するカギが、バスラ(バグダッドの南にあるイラク第二の都市)のナジビヤ発電所にあった。二基の老朽化したタービンの間に、真新しい大型の空調設備が置かれていた。オクラホマ州のヨーク社から遠路はるばる運ばれてきたものだ。各装置の片側に、「メード・イン・USA」のマークを誇らしげに示した華やかなステッカーが貼られている。(星条旗の)星と縞もあしらわれている。
これはこの時期にイラクには必要のないものである。イラク電力相の南部地域の責任者であるヤールブ・ジャシムさんはベクテル社に対して、老朽化したタービンの交換用部品が緊急に必要であり、至急送るよう要請していた。「私たちはベクテルに、電力の需要が非常に大きく、この需要を満たさなければならないから、助けてほしいと何度も頼んだ。本当に何度も頼んだ」。
二週間前に、ベクテルがやっと来た。しかし、ジャシムさんが要請したものではなく、ベクテルが送ってきたのは空調設備だった。それは六カ月後の夏まで、全く無用である。
「たとえ空調設備がいつかは役に立つとしても、他の交換用部品のほうがはるかに重要だ」と発電所の所長のハマド・サレムさんは強調する。サレムさんによると、空調設備はベクテルに提出した設備や部品のリストにも含まれていない。
ジャシムさんによると、理想的には交換用部品は製造国から入手するのが適切だ。なぜなら、入手しやすいし、技術的にも適合しやすいからだ。不幸なことに、イラクの発電所はフランス、ロシア、ドイツ、日本の企業から供給されたものだ。日本を除く三国は先週、米国国防総省から、イラクにおける契約受注を拒否された。一見すれば、タービンに星と縞をあしらったロゴが付いていないことは明らかである。たとえば、ナジビヤ発電所の老朽化したタービンは、いまだに「ソ連製」と書かれたプレートが誇らしげに貼られている。
では、なぜ要請した交換用部品が送られてこないのか? ジャシムさんは、そっけない言い方で、あたかも答えは自明であるかのように、「米国政府によってベクテル以外の企業の関与が許されていないからだ」と語った。
他の取引を禁止されている企業と違って、ベクテルは必要な要件を満たしている。創業以来、ベクテル社の役員は現在数十億ドルの契約を分配している政府の内外に、永年にわたる親密な縁故関係を築いてきた。たとえば、ベクテルの役員であるジョージ・シュルツはニクソン政権の財務長官、レーガン政権の国務長官、そして(偶然にも)イラク解放委員会の会長を務めている。また、元CIA長官のジョン・マッコーンや、元国防長官のカスパー・ワインバーガー、元NATO連合最高司令官のジャック・シーハンもベクトル社の元役員である。(つづく)
http://www.jrcl.net/web/frame040126d.html
イラク現地報告 かけはし2004.02.02号
米国企業のための「復興ビジネス」が復興を遅らせている(下)
連日の停電、石油不足、大量失業……
フランス、ロシア、ドイツ、日本製の発電設備が緊急の復旧を待ちながら、徐々に解体している。発電所では、労働者たちがタービンを最大限に活用しようと、錆びついた高熱用パイプに鍋を載せてコメを炊いている。発電所を早急に復旧しなければ、修理しても使えなくなるとジャシムさんは警告する。
イラクの深刻な電力不足を解消し、タービンが完全に修理不能になるのを防ぐために、ベクテルは速やかに、必要な交換用部品を自社で製造するか(これは非常に多くの時間とコストを要する)、ロシアの企業から直接に購入するか、またはロシアの企業を下請けとして採用するべきである。それとも彼らは解体しつつあるタービンが完全に使用不能になるまで放置するつもりなのか。そうすれば彼らは新規の、総工費数十億ドルの発電所の建設に入札できる。
皮肉なことに、ベクテルが受注した契約の中には、「将来の長期的なニーズおよび投資に関するロードマップの作成」が含まれる。つまり、ベクテルは現在、イラクと米国の納税者が納めたカネを使って、イラクの人々が将来何を「必要とする」かを決定する仕事を請け負っている。独立的な機関が行った推定によると、ベクテルは今後数年間に、最大二百億ドルにのぼる復興関連の契約を受注できる立場にある。
しかし、ベクテルがイラクの電力部門についての壮大な計画を持っているとしても、彼らはイラクの人々にはそれを知らせていない。私がインタビューした発電所の管理者たちは、イラクの戦略的エネルギー計画に関して何の相談も受けていないと語った。ベクテルの幹部たちは、必要な部品を納入するのになぜこんなに時間がかかっているのかを説明しようとすらしない。「彼らは書類を集めているだけだ」とジャシムさんは言う。
電力部門と同じ問題が、他の分野でもっと大きなパターンを描いている。
イラクの人々がガソリンのために五時間も並ばなければならないのは、パイプラインが破壊されたためだけではない。精油所を稼動させるために必要な電力が制約されているためでもある。精油所は、石油関連施設の復旧を請け負っているハリバートンの子会社、ケロッグ・ブラウン・アンド・ルート(KBR)社の迅速な行動を強く求めている。KBRが復旧を請け負っているバスラのサウス・オイル社の労働者たちによると、KBRが実際に修理を行った形跡はない。
イラクの精油所が復旧を待つ間、イラクは国内消費を満たすために十分な量の精製を行うことができない。代わりに米国はイラクの原油を輸出して、KBRを通じて隣国のトルコやクウェートからガソリンを輸入している。KBRとの間で、入札なしで経費プラス固定利益率という内容の契約が結ばれている。
十二月末に、国防総省の正式の調査によって、KBRが米国政府に対して、ガソリンの輸入代金として他の業者の二倍の金額を請求していることが明らかにされた。しかし、石油関連施設の復旧とガソリン輸入の両方をKBRに委託することによって当然にも発生する矛盾した利害については語られていない。イラクのパイプラインと精油所が早期にフル稼働できるようになり、イラクが必要な石油の全量を精製できるようになれば、KBRのガソリン輸入ビジネスでのボロもうけは終わりである。
KBRが意図的に精油設備の修理を遅らせているという証拠はないが、修理を急ぐことをためらわさせる明らかな動機がある。精油所の復旧を委託された企業が同時に、この産業が壊滅的な状態にあることによって利益を得ていることから生じる矛盾は、重大であるにもかかわらず見過ごされている問題である。
CPA(連合軍暫定当局)の本部の周りには、前政権の職員の小さな、無秩序なグループが群がり、「いますぐ給料が必要だ」と書かれた横断幕を広げていた。彼らは十カ月分の未払い賃金の支払いを要求していた。彼らの代表格のカリム・ハシンさんは「私たちはあなた方がサダムから私たちの命を救ったことに感謝する。しかし、私たちは生きたい。だから、あなた方は私たちを支援するべきだ」と憤りを込めて、CPAを防御している高さ三メートル余の無言の壁に向かって語った。「ポール・ブレマーは私たちに給与を約束した。私たちはそれを直接に聞いた。この約束はどうなったのか」。
国防総省によるKBRの調査報告が公表された翌日、米国によって設立された新イラク軍(兵員七百人)の兵士三百人が不当な低賃金を非難して離隊した。離隊者の大部分はフセインの旧軍から徴募された。
彼らは月給わずか五十ドルで忠誠の相手を占領軍に切り換えた。彼らは軍創設を請け負ったヴィンネル社による訓練を受けた。彼らが新しい主人に要求したのは、月百二十ドルへの賃上げだけだった。これによる追加支出は月四万九千ドルにすぎない。米国がイラクに投じている月四十億ドルの軍事費と比べれば小さな額であり、KBRが過剰に請求した六千百万ドルと比べても、取るに足りないカネの額である。
このような状況について聞くと、あたかも占領軍が非常に厳しい予算でイラクを解放しようとしているように見えるかも知れない。米国によって確立された官僚機構に協力することを選んだイラクの人たちの常套文句は「カネがない」だ。たとえば、イラクのアエム・アル・サマレー電力相は、電力省が発電量の大幅増強に失敗している理由の説明を求められた時、しぶしぶと「電力省には全くカネがない」と認めた。
実際、バグダッドの表面だけを見て、補修されていない道路や老朽化した機械、憤りを露わにした労働者たち、信じられないほどの長さのガソリンを求める行列から判断すれば、イラクの復興の問題をそれによって説明するのは、非常に説得力があるようだ。復興努力がはかどらないのは金がないからだという説明は、非常にもっともらしく聞こえる。
しかし、事実はそうではない。(〇三年)十一月に米国議会は、ブッシュの八百七十億ドルのイラク復興支援費を、わずか一人の反対で、最終的に承認した。それまでに米国はすでにイラクとアフガニスタンに約七百九十億ドルを使っている。その上に、米国は国連によって承認されているイラク開発基金(DFI)を完全に管理下に置いている。DFIは前政権の全資産と、イラクの石油輸出による過去および将来の収入(国連石油食糧計画からの繰越金を含む)を含んでいる。
(〇三年の)年末までにDFIが占領軍に提供した基金は総額百億ドルに達すだろう。占領軍はさらに、十月にマドリードで開催されたイラク支援国会議で提案された百三十億ドル(推定)の供与・借款からも数十億ドルを、その間接的な管理下で使うことができる。
書類上は、ベクテルなどの請負企業に支払われるカネには、米国の納税者が納めた税金が使われる。しかし、実際にはイラクの復興のために使われるすべてのカネは、米国と他の連合国からの援助と、イラク自身の基金がミックスされたものである。
だから、カネはある。それが行き渡っていないだけである。そして、おそらくはここにこそ世界の超大国と世界最大規模の企業群が九カ月近くもかかって、イラク復興の端緒にもついていないのはなぜかという謎の答えがある。復興は、復興そのものが目的ではなく、最大限のカネ儲けが目的とされているのである。
レイソン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなどの企業は、米国が毎月イラクで軍事予算として使っている四十億ドルの分け前を得るだろう。しかし、新イラク軍に徴募された兵士のためには、追加の予算はない。ベクテルがオクラホマで製造した無用の空調設備には、六億八千万ドルの入札なしの契約から支払いが行われるが、ナジビア発電所が緊急に必要としているロシア製の部品のための予算はない。ハリバートンとその請負企業はクウェートから石油を輸入することで六千百万ドルをかすめ取ったが、イラクの精油所の労働者の賃金が引き上げられることはない。
米国にとって、占領のための基金を確保するのはますます難しくなっているが、復興の最も緊急を要する分野に取り組むには十分なカネがある。しかし、復興から利益を上げている企業は、可能な最大限の分け前を確保しつづけることを決意している。その収支決算が、復興をめぐる大混乱である。
KBRに業務を委託した米陸軍技術部隊の広報担当のリチャード・ダウリングは、「利益という動機こそ、企業を危険な場所に赴かせる。しかし、それが資本主義というものだ。企業に困難な仕事を引き受けさせるためには利益が必要だ。確かに利益が動機になっているが、結果は、遂行された業務によって判断される」と説明する。
問題は、ベクテルとKBRの例が最も端的に証明しているように、業務は半分も遂行されていないということである。利潤の極大化は、電力と石油生産の最も効率的な復興をもたらさなかった。逆に、それは復興を効率的に進める妨げになっている。発電所はいつかは建設されるだろうし、精油所は操業を再開するだろうが、それはイラク人たちに不要な苦しみを与え、ベクテルが最大限の利益を手にした後のことだろう。
「イラクを解放するための戦争」はイラク人たちを解放するためではなかった。同様に、復興ビジネスがイラクの復興のためではないとしても、驚くことではない。この占領における米国とその同盟国の第一の目的は、彼らが破壊したものを再建することではない。それは大もうけをすることである。
ベクテルやKBRのような請負企業は、何が起ころうとも支払いを保証されている。発電所が最終的に建設されるかどうかは二次的な問題なのだ。それはカネもうけの口実を正当化するためにすぎない。戦争は必要だったし、破壊されたものは再建されなければならない、というわけである。
ベクテルの創業者であるステファン・ベクテルが以前に明言したように、「われわれは建設やエンジニアリングのビジネスに携わっているのではなく、カネもうけのビジネスに携わっているのだ」。イラクの復興は、第二次世界大戦以降の最大の復興計画として打ち出され、占領期間にもよるが、総額千億ドル(二千億ドルという説もある)を要すると予想されている。請負企業にとっては、復興ビジネスですらなく、千億ドルの「つかみ取り」である。
復興プロセスがイラクの人々を幻滅させつづけている中で、米国がイラクの人々を助けるために来ているという神話は徐々に崩壊しつつある。電灯も、ガソリンも、給料も手に入らない状況で、ますます多くの人々が、暗闇を呪うだけでは治まらなくなっている。CPAのゲートの前で抗議していたハシムさんは、「米国人たちがもし平和に暮らしたいなら、私たちの賃金を支払え。そうでないと、次は武器を持ってくるぞ」と警告した。
(フォーカス・オン・ザ・グローバルサウスのホームページから)
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