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NORTH KOREA
North Korea Nuclear Crisis Update
以下は、米朝関係について米外交問題評議会(CFR)がまとめたQ&Aの一部。邦訳文は、英文からの抜粋・要約。なお、Q&Aの一部は、最近のCFRリポート、ガーズマン・インタビューシリーズを資料に、フォーリン・アフェアーズ・ジャパンで作成し、全体を再構成した。参考文献については文末を参照。
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ワシントンの対北朝鮮路線の真意はどこに
北朝鮮の核開発問題は現在どのような状況にあるか。
二〇〇四年一月六日、北朝鮮側は、アメリカが制裁を解除して経済援助を提供し、米国務省のテロ支援国家リストから北朝鮮を外すことに合意するのなら、原子力の平和利用を含むすべての核開発計画を凍結し、核兵器の生産もやめるという「大胆な譲歩」案を示した。翌日、コリン・パウエル米国務長官は、この提案を「前向きなステップ」として歓迎すると表明し、これによって、危機解決のための六者協議の再開の見込みはいくぶん高まった、とコメントした。
現在の米朝関係はどのような状態か。
全般的に決してよい状態ではない。元駐韓米大使で、現在コリア・ソサエティーの会長を務めるドナルド・グレッグは、「双方の不信感は非常に大きい」と指摘している。例えば、ハーバード大学ケネディ・スクール教授のアシュトン・カーターは、「北朝鮮はどの国も信用していないし、一方で、北朝鮮を信用している国も皆無だ。北朝鮮の発言は、敵意あるものも和解的なものも、話半分に聞いておいたほうがいい。実際に事が起こってみないと北朝鮮が何を意図していたのかわからない」と述べている。
ジョン・ボルトン米国務次官も、二〇〇三年十二月二日の講演で、「北朝鮮の核開発は単にアメリカと北朝鮮の間の二国間の問題ではない。地域の安定、地球規模の核不拡散体制に対する脅威だ」と述べている。
核不拡散体制に対する北朝鮮の脅威とは何か。
北朝鮮が、米朝枠組み合意を踏みにじり、NPTの抜け穴を利用して、核開発計画を進めたことだ。しかも、北朝鮮は核開発で得た物質や兵器を輸出することも辞さないと公言している。
NPT体制の抜け穴とは何か。
NPTは条約に参加する非核保有国が、電力の生産など、原子力を平和的に利用することを認めている。しかし、北朝鮮もイランも、保有しているのは民生用原子炉であると主張しつつ、一方でこれを抜け穴として、軍事目的に利用してきた。
米朝間の交渉を再開する上での最大の争点は何か。
北朝鮮は、核開発計画を凍結する代わりに、ワシントンが北朝鮮をテロ支援国家のリストから外し、経済援助を提供することを求めている。一方、ブッシュ政権は、相互主義的な取引に応じるには、まず、北朝鮮が核開発計画の凍結ではなく、計画を解体する必要があると主張している。「この表現が何を意味するか、ワシントンはもっと具体的に示す必要がある」とカーネギー国際平和財団のジョセフ・シリンシオーネは語っている。
北朝鮮は何を望んでいるのか。
北朝鮮はアメリカから、北朝鮮を経済・軍事的に痛めつけないという言質を取り付け、それを明文化して、条約に盛り込みたいと望んでいる。北朝鮮は経済援助を取り付け、経済制裁を解除させ、外国からの投資を呼び込みたいと考えている。北朝鮮の交渉者は、アメリカがこれらを約束すれば、北朝鮮は核開発中止に向けて努力すると主張している。
なぜ北朝鮮は先に折れるのをためらっているのか。
アメリカを恐れているからだ。「何も与えていない段階で、北朝鮮にばかり、後戻りできない行動をとることを求めるアメリカの要請は不合理だと平壌は考えている」とグレッグは状況を分析し、「不可侵条約はすぐにでも破ることができる。一方、アメリカの北朝鮮に対する要求は、受け入れてしまえば元に戻すのに十年はかかる」と北朝鮮の高官が語ったことを明らかにした。
だが、こうした北朝鮮側の主張を、平壌が得意とする相手の裏をかく策謀の一環だと指摘する専門家も多い。カーターは、「北朝鮮は核能力をできる限り保有しつつ、一方で望むものを手に入れたいと考えている」とコメントしている。
アメリカは具体的に何を望んでいるのか。
北朝鮮が核開発計画を明確に放棄・解体することを求めている。カーターは、これまで北朝鮮がアメリカを欺いて核開発計画を進めてきたことを踏まえて、核開発計画の解体プロセスをしっかりとした査察手続きを踏んで検証していく必要があると語っている。
北朝鮮へのアプローチをめぐってワシントンにコンセンサスはあるのか。
ブッシュ政権内には北朝鮮へのアプローチをめぐって依然として対立がある。「北朝鮮と取引をする価値が本当にあるかどうか。北朝鮮を孤立させ、締め上げて、政権を崩壊させるべきかどうか」をめぐって論争がある。つまり、危機を外交的に解決すべきだという意見と、北朝鮮の政権交代を目指すべきだという二つの意見が存在する。
米外交問題評議会(CFR)のエリック・ヘジンボサムは、「ブッシュ政権はどちらの政策をとるべきなのか、非常に迷っている」と状況を分析している。
ワシントンは北朝鮮の政権交代を望んでいるのか。
ブッシュ政権の一部は、金正日政権が崩壊すれば、現在の北朝鮮との危機だけでなく、世界的な核拡散の潮流をせき止める助けになると考え、政権交代策をとることを主張している。
政権交代策とは具体的に何を意味するのか。
軍事力を用いた政権交代策、あるいは、北朝鮮が崩壊するまで封じ込めと孤立策を続ける路線のことだ。
ワシントンは軍事的解決策を放棄していないのか。
ブッシュ大統領は外交的解決を目指すと明言している。軍事的選択肢をとれば、朝鮮半島全体が戦場と化し、多くの犠牲者が出る恐れがあり、現実的ではないと考えられているからだ。
しかし、核開発計画の放棄を迫るには、要請を拒否した場合にどうなるかを相手に真剣に考えさせるために、武力行使も辞さないという裏付けが必要だという声も聞かれる。カーターは、北朝鮮への路線を、軍事作戦か外交的解決かという図式、つまり、「軍事作戦のことを外交の代替策とみなすのではなく、強制的外交の一部とみなすべきだ」と主張している。専門家のなかには、軍事的強硬策に出ても、北朝鮮が反撃してくる可能性は低いとみる者もいる。
封じ込め政策はどうとらえられているのか。
封じ込めを通じて北朝鮮の政権の弱体化と政権交代を模索しても、それが実を結ぶには年単位の時間がかかるが、これに対して、核開発計画のほうは月単位で進行していく。よって、実効的でないと多くの専門家が考えている。ウィリアム・ペリー元米国防長官は最近の演説で、「外交・経済圧力を通じた政権交代策では、北朝鮮の核開発問題には対処できない」と発言している。
交渉が再開されなかったり、あるいは交渉が決裂したりした場合、どうなるのか。
強制的な外交政策を通じても答えが出ず、北朝鮮が核開発計画を解体するのを最終的に拒絶したとしても、軍事攻撃に韓国政府が反対している以上、それは選択肢とはなり得ない。「かなりの悪影響を伴うが、北朝鮮の核武装を受け入れるしかないだろう」とペリーはコメントしている。一方で、カーターは、北朝鮮の核施設を攻撃しても、北朝鮮が反撃してくるとは限らないとし、軍事的選択肢を温存することを主張している。さらに、たとえ攻撃されても、「負けることがわかっている全面戦争」に北朝鮮が踏み切るとは限らないと指摘している。
東アジア諸国は政権交代策をどうみているのか。
ワシントンが、北朝鮮を核拡散問題上の脅威とみなし、核武装を何としてでも阻止すべきだと考えているのに対して、北朝鮮の近隣諸国は、北朝鮮を潜在的な経済パートナーととらえている。それだけに、スターリン主義的な警察国家から市場経済国家への移行プロセスは極力慎重に管理しなければならないと考え、北朝鮮に政権交代策をとることに反対している。特に百万人規模の貧しい難民の流入、経済混乱、全面戦争のシナリオを恐れる中国と韓国は、政権交代策に反対している。
韓国は何を望んでいるのか。
韓国の尹永寛前外交通商相は、二〇〇三年十二月十七日のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、「韓国市民は(朝鮮半島の)急激な変化は望んでいない。われわれには北朝鮮の政治状況の急激な変化を受け入れる用意はまだできていない」と述べている。むしろ、韓国は、北朝鮮に経済開放路線をとらせることを重視している。これによって、過去二十年間に中国が歩んできたような、ゆっくりとした政治的変化が実現することを期待している。近隣諸国のなかには、「韓国が求めるアプローチがうまくいく可能性があり、アメリカにも考慮してもらいたい」と考えている国もある。
北朝鮮問題は、アメリカと東アジア諸国との関係にどのような影響を与えているか。
ブッシュ政権内のイデオロギー対立が北朝鮮に対してどのような路線をとるかにも影を落とし、米政府の一貫した対応が阻害されている部分がある。当然、こうした状況が続けば、一刻も早い問題の解決を望む東アジア諸国との関係が悪化する危険がある。「現在の手詰まり状況が続けば、アメリカと東アジア諸国の関係は大きなダメージを受けるだろう」とグレッグは指摘している。特に交渉による解決を目指して莫大な時間と政治的コストを投入してきた中国とロシアは、もし状況が進展しなければ、アメリカを非難する側に回るかもしれない。
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*このQ&Aは部分公開中です。邦訳文の全文及び、参考文献1エリック・ヘジンボサム Issue Brief North Koreaの邦訳文はフォーリン・アフェアーズ日本語版・日本語インターネット版2004年2月号及び論座2004年3月号に掲載いたします。日本語版、日本語インターネット版のお申し込みはこちら
参考文献一覧
1 エリック・ヘジンボサム Issue Brief North Korea(2004.1)
2 エスター・パン(CFRのスタッフライター) CFR North Korea Q&A
3 ガーズマン・インタビューシリーズ
・ジョセフ・シリンシオーネ「北朝鮮との協議はなぜ進展しないのか」(2003.12.10)
フォーリン・アフェアーズ日本語版2003年12月号
4 CFRリポート
・ ウィリアム・ペリー、リチャード・ホルブルック、アシュトン・カーター
「核拡散の脅威と北朝鮮問題」
フォーリン・アフェアーズ日本語版2004年2月号及び「論座」2004年3月号
1−4の英文はwww.cfr.orgからアクセスできる。
http://www.foreignaffairsj.co.jp/source/NorthKorea/NKToday.htm