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http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20040127k0000m010141000c.html
イラク復興特別措置法の成立から半年。復興支援の中核となる陸上自衛隊の本隊に２６日、派遣命令が出たが、イラク南部サマワで自衛隊を待ち受けるのは本来の派遣目的とは異なる雇用創出の期待だ。陸自にとっては安全面の不安も依然としてつきまとう。米英軍と一線を画す人道復興支援を強調した結果、現地に過剰な雇用期待が生まれ、これを裏切れば、かえって陸自への反感からテロの危険が増しかねない矛盾を抱え込んだ。
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「現地は依然として深刻な失業問題を抱えており、住民の不満が反連合軍活動に結びつく可能性には留意が必要」
２３日に帰国した陸自先遣隊の一部はイラク南部の治安情勢について「比較的安定」と報告する一方、雇用不安が自衛隊などへのテロ活動を助長する危険性を指摘した。自衛隊と文民による復興支援がイラク復興特措法の２本柱だが、民間人やＮＧＯ（非政府組織）などの文民派遣は治安悪化で困難な情勢が続き、大幅な雇用拡大につながる経済復興支援の見通しは立っていない。
そこで政府が検討してきたのが（１）給水、医療、学校復旧という自衛隊の復興支援活動に外務省の政府開発援助（ＯＤＡ）を絡めて雇用創出を図る（２）住民を味方につけることでテロの標的となる危険を軽減する――という「一石二鳥」の対策。具体的には▽外務省がサマワ市に給水車を寄贈し、陸自が宿営地で配給する水を市街地に届ける配水事業に住民を雇用▽外務省による医療機材の供与と陸自の医療技術指導によってサマワの病院を再建し、医師や看護師を雇用▽陸自が行う学校など公共施設の復旧作業に住民を雇用――などを想定している。
政府は２６日、これらを含む「サマワに対する経済・文化協力」策を陸自本隊への派遣命令に合わせてまとめた。（１）自衛隊による緊急人道支援（２）雇用対策（３）文化協力（４）環境対策（５）市場経済化・女性支援――の５本柱からなるが、雇用創出効果については１日５００〜６００人として「限界がある」との文言を盛り込み、応急措置であることを認めた。国連開発計画（ＵＮＤＰ）を通じ電力施設の再建を図るほか、フセイン政権下で荒廃したメソポタミア湿原の回復に協力することも検討しているが、長期的課題という位置づけだ。
防衛庁幹部は「期待値と現実の差があるほど自衛隊への反発を増幅しかねない。実効性のある経済復興策が必要だ」と不安を隠さない。【宮下正己】
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陸自先遣隊の到着（１９日）後、現地では雇用創出への期待が一層高まっている。サマワ市総務部には陸自が生む雇用についての問い合わせが殺到。バッシム・ヌア総務部長は「６００人程度といううわさが市内に流れているが、全然足りない。最低でも４０００人分は必要だ」と指摘する。
定職のある人も給与水準の低さに苦しむ。地元紙「アル・サマワ」のアリフ・シェヒド記者（３１）は「テレビ局の仕事を掛け持ちしても月給は１２０ドル（約１万２７００円）だけ。自衛隊の支援で経済が回復することを期待している」と話す。
７０％ともいわれる失業率は社会不安に容易に結びつく。今月３日には失業者のデモで６人が死傷した。ムサンナ県警警ら隊のカリッド・ムセン隊長は「深刻な失業問題は犯罪を招く。今のサマワは危機的な状況。自衛隊が事態を打開すると信じる」と語った。
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陸自先遣隊は「サマワは比較的安定している」と日本政府に報告したが、この１週間内で市内でイラク人警察官が射殺され、周辺でスペイン兵が撃たれて重体になるなど「治安の真空地帯」（地元警察幹部）の存在が明らかになった。いずれもサマワ北部が現場で、治安の評価には依然として疑問符がつく。
サマワ地方警察署は、２４日に起きた警官殺害について北部一帯を根城にする盗賊集団の犯行との見方を強めている。周辺では、ここ３カ月間内で役所の車が数回襲われた。同署幹部は、古代の盗賊物語を例えに「武装したアリババだ」と話す。２２日未明にスペイン兵が頭を撃たれた事件も、盗賊のリーダーによる犯行だった。
盗賊に対抗するには警察力の強化が必要だが、装備や人員は貧弱なままだ。同署の警官は「パトカーは２台だけ。小銃では相手にかなわない」と明かす。警察の目が届くのは市の中心部だけで、周辺部まで「手が回らない」と言う。同署によると、イラク国軍を解雇され、盗賊となったリーダーが複数おり、サマワ北部の隠れ家を転々としているという。「盗賊をかくまう住民が犯罪の温床だ」と捜査官は苦々しげに言う。【サマワ斎藤義彦、成沢健一】
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