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イスラエル・タカ派の反攻 [田中宇の国際ニュース解説]
http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/1085.html
投稿者 のらくろ 日時 2004 年 2 月 13 日 20:54:17:lijcWyS1gzuJk
 

(回答先: アラファト議長夫人を資金洗浄疑惑で捜査、仏検察 [CNN] 投稿者 あっしら 日時 2004 年 2 月 13 日 19:32:21)

http://tanakanews.com/e0212israel.htm

イスラエル・タカ派の反攻

2004年2月12日  田中 宇

前回配信した記事「イスラエル・パレスチナのEU加盟」では、中東を安定させたい「中道派」と不安定にさせたい「タカ派」とのアメリカ中枢での戦いが、イスラエルをEU加盟させることによって中道派の勝利に終わるのではないかというトーンで分析した。だが、その後分析を続けたところ、タカ派は対抗的な作戦を展開しており、両者の抗争はまだ決着がついていないことが分かってきた。

 タカ派の作戦をひとことで言うと「ハマスやヒズボラといったパレスチナの原理主義的な過激派をイスラエルがわざと力づけることで、穏健派のパレスチナ自治政府(PLO)を相対的に弱体化させ、パレスチナ人を内部分裂させ内戦に陥らせて、EUや中道派がパスレチナ人国家を作れないようにする」というものだ。

 その作戦例の一つは1月30日、ヒズボラが4人のイスラエル人捕虜と人質(兵士3人、ビジネスマン1人)を釈放するかわりに、イスラエルが拘束していた400人以上のパレスチナ人を釈放するという捕虜交換をイスラエル主導で行ったことだ。

 この交換作戦は3年前からドイツが仲裁して交渉が進められていたもので、その意味ではタカ派の新しい作戦ではない。だが、イスラエルは4人を得るために400人を手放したわけで、この著しい不均衡をめぐり、イスラエル国内から疑問視する声が出ている。(関連記事)

 パレスチナ側との和平交渉を推進してきた中心人物の一人であるイスラエルの元司法相ヨッシ・ベイリンは「400人のパレスチナ人を釈放して引き渡すべき相手は(民間組織である)ヒズボラではなく、(国際的にパレスチナを代表する政府として認められている)パレスチナ自治政府であるべきだった。シャロンは、ヒズボラに続いてハマスに対しても捕虜交換交渉を進め、パレスチナ人を釈放しようとしているが、これもパレスチナ自治政府に対して釈放すべきものだ。これらの動きは(アメリカからテロ組織として指定されている)ヒズボラやハマスを強化し、パレスチナを内戦に陥れ、ますます自爆テロを頻発させてしまう」と批判している。(関連記事)

▼行き詰まるパレスチナ自治政府

 捕虜交換と並んでベイリンは、シャロン政権がガザの不正入植地から一方的に撤退すると決めたことも、同様にパレスチナの穏健派を弱体化させるためのものだと指摘している。入植地からの撤退そのものは、中道派的な動きに見えるが、その一方で、撤退の仕方を派パレスチナ側との和平交渉(ロードマップ)の枠組みの中で行わず、イスラエルが一方的に撤退するやり方を採ったことは、パレスチナ自治政府の権威を弱める方向に働いている。

 パレスチナでは「ハマスやヒズボラが自爆攻撃でイスラエルを窮地に追いやった結果、シャロンは入植地を撤去せざるを得なくなったのだ」という考え方が広がっている。(関連記事)

 2月7日には、アラファトが仕切ってきたPLOの中核組織である政党「ファタハ」のメンバー350人以上が、連名で脱退を宣言するという事件も起きた。(関連記事)

 パレスチナ人の間では以前からアラファトに対し、腐敗しているとか、イスラエルとの交渉をうまく進められないといった批判があり、それがだんだんと強まっていたが、もはやアラファトが支配するパレスチナ自治政府は矛盾が大きくなりすぎて、存続が危うくなっているという指摘も出ている。今後、イスラエルによってハマスやヒズボラが強化される事態が続くと、パレスチナ自治政府は内部崩壊する可能性もある。(関連記事)

▼フランスによる政治作戦か、イスラエルによる中傷攻撃か

 こうした動きに対し、EUは止めに入っているかというと、そうでもない。フランス当局は、アラファトが、イスラエル軍による攻撃を避けてフランスに滞在している妻に向けて送金を行って不正蓄財をしている疑惑があるとして捜査を開始した。これがもし事実だとすれば、純粋な不正取り締まりではなく、パレスチナ自治政府の崩壊に手を貸す仏当局の政治的な意図があるように思われる。フランスの内部には、EUが中東にまで覇権を拡大することに対して否定的な勢力も多いと思われるので、そうした勢力がアラファトたたきに手を貸しているのかもしれない。(関連記事)

 とはいえ仏当局は「捜査を開始するかどうかを調べている段階」だと言っており、この件を最初に報じたフランスの風刺雑誌の報道が誇張であり、それを各マスコミのタカ派系の編集者が鵜呑みにして報じた可能性もある。BBCはそれを示唆している。(関連記事)

 当事者であるアラファトの妻は「お金はパレスチナ自治政府の活動資金として合法的に送金されている。フランス当局から何の連絡もなく、捜査が始まっているというのはシャロンが流したウソにすぎない」と述べている。タカ派は誇張を流すのが得意なので、報道内容が事実であるかどうか、しばらく様子を見ないと分からない。誤報だったことが、あとで小さく報じられたりする。(関連記事)

 パレスチナ自治政府に対しては、クレイ首相の親戚が経営する生コン(セメント)製造会社が、イスラエル側が構築している「防御壁」の建設に生コンを供給している、という疑惑も出てきたが、おそらくこれもイスラエル側がパレスチナ側を攻撃・中傷する目的で流した情報だろう。(関連記事)

 一方、イスラエル側でも怪しげな事件が起きている。イスラエルの軍事機密が何者かによってインターネット上に公開され、そこにイスラエルが保持している核兵器についての情報や、「アメリカは最新型のミサイルをEUの某国には売ったのに、政治的な理由からイスラエルには売ってくれない」とか「アメリカから買ったF16戦闘機のレーダーは最低水準の性能を満たしていない」といった反米的な主張が載っていたと報じられている。(関連記事)

 これは、イスラエル中枢の政界・軍・諜報機関の内部で、中道派とタカ派との暗闘があり、その一環として機密漏洩にあたるハプニングが画策されたのかもしれない。アメリカ、EU、イスラエル、パレスチナのいずれの陣営でも、激しい政治抗争が展開していることがうかがえる。

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