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もうずいぶん前の「Web現代」の記事ですが、
もう一度考えてみたい内容ですので、ここにアップします。
取材・文:草薙厚子 取材:島田健弘
http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/vote/2003_12_10/
これも歴史的決断というのだろうか。12月9日、国民を無視し、憲法を踏みにじった閣議決定がなされた。これと前後して、批判すべき新聞・テレビは自衛隊がイラクに携行する武器、車両に焦点をあてる報道にスライドしたりもした。日本本国への攻撃といった危険状況に向けて無理やり舵を切った小泉首相は万死に値する!
■イラクでは正当防衛はありえない
とうとう、自衛隊初の「戦地」派遣が行われる。12月9日午後4時すぎにイラク復興特別措置法に基づく自衛隊派遣の基本計画が閣議決定された。計画では実際の派遣時期は空白のままだが、その際、無反動砲などの重火器も携行する。陸、海、空の自衛隊が対象で、焦点の陸上自衛隊は「ムサンナ県を中心としたイラク南東部」に派遣される。
小泉首相は閣議決定後に記者会見したが、国会答弁のように質問に正面から答えず、高邁な理念を声高に主張するばかり。なぜ戦場状態のイラクに自衛隊を派遣しなければいけないのかという根本的な疑問に対して、明快な説明はなされなかった。
「イラク特措法からみても、現状は自衛隊を出せる状況にはなっていない。特措法の第一の目的は、イラクの復興人道支援ですが、今はとても出来る状況ではありません。現状は戦争継続状態で、『非戦闘地域』(1条)や『日本政府が安全をはかる義務』(9条)といった条件を充たしているとは思えません。したがって、自衛隊の派遣という決定は無理だと思います」(高成田享・朝日新聞論説委員)
政府の専門調査団による報告書の概要では、派遣予定地ムサンナ県サマワの治安について「比較的安定している」と明記し、「イラク復興支援法に基づく陸自の活動は可能」との判断を示している。しかし、12月8日に改めてイラク入りしたフォトジャーナリストの渡部陽一氏は「バグダッドでは無法化が進んでいます。サマワでも自衛隊の宿営地と作業現場の沿道が危険です」と伝えてきた。
「PKOという形で日本が国際協力するということは、憲法に反しない日本のあり方ということで、国民的な合意もできつつあると思います。しかし、今回の派遣は、米英の占領の一翼を担うもので、戦闘に加わる可能性の大きさも含め、これまでの国民的な合意からもかけ離れていると思う。自衛隊を海外に出すというのは、慎重の上にも慎重さが必要なのに、『日本は何もしなくていいのか』といった単純な論議だけで決定してしまうのは、今後の国際協力の論議も不毛にする」(前出の高成田氏)
現地では、誰もが米軍協力者には牙を向く可能性がある。元外務省幹部のアーミル・アル・ナキブ氏はイラク国民の気持ちをこう代弁する。「私は、外務省を解雇され、今はタクシーの運転手をして稼ぐしかありません。アメリカ軍の通訳の募集はたくさんありますが、ペイが良くても応募する気はありません。ほとんどのイラク人は外国の軍隊がイラクにいるべきではないと強く思っています。抵抗者(レジスタンス)と市民激Wスタンスが商人、売人から買って反撃し、バグダッドの陥落以降ずっと無秩序状態が続いています」
たとえ陸上自衛隊の活動が病院や学校の修復、浄水・給水設備の新設・修理などのインフラ整備に重点を置いたものであっても、米軍協力者とみなされ、襲撃のターゲットとなるのは間違いないという。「(イラクを不当に占拠している外国軍隊に組する集団にとって)正当防衛などあ烽オた。つまりイラクに駐留すること自体が「正当」ではなく、「不当」というわけだ。
「先日、日本人の外交官が殺されてしまいましたが、第一等陸軍中尉、アマル・アル・サーディという友人がいうには、日本大使館に雇われているイラク人達も襲撃の恐れに取り付かれており、誰もが大使館の警備から離れたがっています」(前出のアーミル氏)
■自衛隊をオモチャにするな!
前駐レバノン大使の天木直人氏(『さらば外務省!』の著者)は、今回の閣議決定については憤りを通り越した気分だという。
「本当に残念で、なおかつ虚しい気持ちです。どんなに国民が反対しても、権力者は何でもできるという恐ろしい世の中になってきた。とはいえ、この際、とにかく派遣するというのなら、止められるのは国民しかありません。ただ、私は小泉さんが本当に派遣できるのか、まだ疑問です。もともと大義もありませんし、大量破壊兵器も出てこなかった。あの人の、人間としての心理状態が理解できません。アメリカ追従だけでは説明できません。権限があるからできるというのなら、さっさと発揮すればいい。責任を取らざるをえない局面が絶対に来ます。今回のような装備で自衛隊をイラクに出したら、今後、北朝鮮であれどこであれ出さざるをえなくなります」
まるで将棋の駒のように派遣される自衛官はどう感じているのだろうか。ある現役の陸上自衛隊二尉は胸の内を吐露する。
「自衛隊をオモチャにするな!といいたい。政治家は11月の衆院選の際には自衛隊派遣について一切口にしなかった。なぜ、小泉総理大臣は『アメリカに頼まれて派遣を決めた』といわないのでしょう。本当のことをいうことが国民への説明責任を果たしたといえるのではないでしょうか。自衛隊にとって、問題は山積みです。これから作る行動基準をもって若い自衛隊員の生命を守れますか?といいたい。たとえば自爆テロの自動車が向かってきて、すぐ撃てるかというとそうはいきません。それが、自爆テロとは分からないから、『止まれ!』と警告する。それから威嚇射撃をし、それでも止まらなかったら撃つということになると思いますが、そのうちにみんなやられていますよ。戦争というものに慣れていないこともあって、相手がポケットに手を突っ込んだだけで、撃っていいなどという行動基準は作れませんから」
■「自衛隊は徴兵制になる」小池氏
元防衛庁教育訓練局長で「自衛隊のイラク派遣を行わないことを求める要望書」を7月と10月に提出した小池清彦・新潟県加茂市長は、自衛隊派遣は憲法違反だと断言する。
「要望書について、防衛庁時代の上司、同僚からも激励の手紙をいただいています。まず、第一に、今回派遣するとすると明らかな憲法違反になります。憲法の歯止めがなくなってしまう。ましてや現在の世界のあらゆる戦場はゲリラ戦になっています。世界の警察官を自任するアメリカにくっ付いて、自衛隊が出るとなると、被害者が続出して志願者がいなくなり、自衛隊は徴兵制にせざるをえなくなる。
また、イラク特措法では、戦闘行為を国と国の正規軍によるものとして、不正規軍による攻撃は戦闘行為と定義していません。ここがおかしい。さらに憲法違反の海外派兵は契約違反でもあります。自衛隊法第52条(服務の本旨)には、自衛隊の使命は、『わが国の平和と独立を守る』ことだとはっきり明記してあり、外国のゲリラ戦の戦場に赴くことだとは書いていません。さらに自衛隊員は、『服務の宣誓』の中で、この条文に定めてあることに加えて、『日本国憲法を遵守』することを宣誓しておりますので、憲法違反の海外派兵に参加してはならないのです。イラクの危険地域に自衛隊員を派遣するのは人権侵害でもあります」
アメリカが派兵の一部撤収を打ち出したにもかかわらず、日本は1500億円という資金を提供しながら、なおかつ自衛隊員や文民の命を捧げることに決めた。東京もテロの標的と化すだろう。小泉首相は「テロに屈しない」と再三発言しているが、自らテロを呼び寄せているとしかいいようがない。小池市長は「アメリカから頼まれての言いなり」、「将来の憲法改正のために風穴を空け憲法を空洞化する」、「安保理の常任理事国になるために海外派兵できる国にする」という3点が小泉総理の判断の背景にあったと話す。
どうして憲法違反の海外派兵がなされるのか。自衛隊派遣決定までの経緯を振り返ってみよう。外務省関係者は自衛隊派遣問題はアフガン戦争にさかのぼるという。
「2001年9月15日、アフガン空爆前にアーミテージ国務副長官が柳井駐米大使(当時)に言った“Show the flag”が尾を引いています。アーミテージ氏はそんな発言はしていないと否定していますが、外務省としては人的貢献をしろと受け取りました。旗幟を鮮明にしろという意味なのでしょう。さらにアメリカは9・11以降敵と味方をはっきりさせたがっています。今年の夏ごろから“Boots on the ground"という言葉が独り歩きをしています。アフガン空爆前から人的貢献という呪縛はあって、今回に至ったのでしょう。それに財政難なので『人を出すからお金は少なくてもいいだろう』という考えだと思います」
■ 野党は国会の開会召集要求をせよ
ジャーナリストの斎藤貴男氏は小泉首相の隠された意図が恐ろしいと指摘する。
「(亡くなった外務省の)奥(克彦)さんは論文で"国連の協力を期待している"と書いていたという記事が毎日新聞に掲載されていました。ですから、国連決議を無視した小泉が"遺志を受け継ぎ、イラクの復興に取り組む"なんて言ってはいけないんです。命をかけて戦場に赴くことが遺志であると、二人はまるで軍神扱いです。小泉らにとって"日本を軍事力を持った自立した国"にするために利用できるものはなんだっていいんです。自衛隊が行けば、今度はもっと悲惨なことになることは間違いありません。国内だって必ず攻撃されるし、それで何人も死亡すればそれこそ治安維持の名目で、大喜びで警察力、軍事力の増強を行うでしょう。最悪の場合、戒厳令だってあり得ます。また、徴兵制度復活。徴兵制度には失業対策という側面もあります。国民はいまだに一億総中流の時代だと考えていて、まさかそんなふうになるわけないと思っており、仮に自衛隊員が死んでもそれで終わりだという意識しかないでしょう。一挙に総動員令のようなものにいくわけがないと思っていると、とんでもないことになります」
この閣議決定を覆す方法はないのだろうか。国会でも野党の無力さばかりが目立っている。
民主党の平野貞夫参院議員は、イラク特措法成立の過程が悔やまれるという。
「今年の7月に衆院の民主党がイラク特措法に実質的に賛成してしまったことが、そもそもの間違いです。民主党が本当に抵抗していれば潰せた法案なのです。アメリカのイラク攻撃には大義はないし、イラクの復興支援といいつつも、実際はアメリカ軍の後方支援です。今回の特別国会(11月19日〜27日)でも少なくとも民主党の国対は自衛隊派遣について、小泉総理にキチンと所信表明させるべきでした。それもできなかった。1月末の通常国会の開幕までに2ヵ月の空白期間を作ってしまったというのは、野党第1党民主党の責任です。小泉政権にはまともに国会運営をしていこうなんて気持ちはなく、その空白期間に内閣で決定された自衛隊派遣は、今後の日本の安全保障をどうするのかという根本的な問題をはらんでいるのです。それを閉会中に進められ、それでも開会召集要求もしないというのは野党の怠慢にほかなりません」
国会議員の4分の1の要求があれば国会は召集できるのだ。さらに平野議員は続ける。
「国会が始まったら、まずは派遣を決定した小泉内閣に安全地帯、国連決議などさまざまな疑問点をぶつけることです。今のイラク情勢で自衛隊を派遣するということそのものが、イラク特措法の範囲を逸脱しているからです。また、派遣中止の決議案を提出するとともに、イラクの事態をどう解決するのかという具体的な提案を民主党からしなければなりません。イラクに行く自衛隊も、送り出す家族もみんな大変ですよ。国会議員ですら、ほとんどが行ったら、必ず大変な目に遭う(死亡)と思っています。そこまでして、ブッシュに義理立てする必要はないと思います」
アメリカがきっと何とかしてくれるに違いない――というのは幻想にすぎない。現在では軍事超大国アメリカこそ世界平和を脅かすガンになりつつあるのだ。日米安保条約のもとで、アメリカとの蜜月を演出したい小泉・日本政府の暴挙を見過ごしてしまえば、日本国民は取り返しのつかない大変な過ちを犯すことになってしまう。
憲法違反と断言する元防衛庁局長小池清彦さん
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