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南アジアにも「フセイン」 米国の次手をマスコミは指摘したか
2004/01/16
【ファクト】
ブッシュ米大統領は12日、米国とインドが原子力、宇宙開 発、ハイテク機器貿易、ミサイル技術の4分野で協力を拡大し ていくことで合意したことを明らかにした(米ホワイトハウス Presidential News and Speechesより)。
協力といっても米によるインドへの技術援助以外の何ものでもない。パキスタンと共に「南アジアの火薬庫」と呼ばれるインドの軍事力増強にそのままつながるものだ。
米は1980年代イラクへの軍事援助でサダム・フセインをモンスターに育てた“実績”がある。火薬庫を力で封じ込めるのか、それとも火を点けることになるのか。
【手放しで喜ぶインド】
インドの英字紙『アッサムトリビューン』は「両国関係にとって重要な一里塚である」と書き出し、バジパイ首相が「私とブッシュ大統領が共有する両国の戦略的パートナーシップは今、現実のものとなった」と手放しで喜ぶコメントを伝えた。
インドは、1人あたりのGDPが460ドル(2001年世銀調べ)と貧しく、10億余りもの人口を抱える。仇敵パキスタンにも軍事的にらみを利かせなければならない。米の最新技術は喉から手が出るほど欲しかったわけで、今回の合意は嬉しくないはずがない。
ブッシュ大統領は「我々はテロとの戦いのパートナーであり、大量破壊兵器の拡散を防ぐために手を携える」とインドを持ち上げている。
ただし米国は無条件に技術供与するわけではない、と「表向き」のスタンスを示す。米国務省当局者は「第三国への輸出規制や民生用のみに限った利用がインドで法制化されたことが確認されなければ供与しない」と話す。
【背景:米国の目論見】
米印関係は、冷戦時代インドが親ソ政権だったことなどから、もともと親密なものではなかった。1998年にはインドが核実験を行ったことで、クリントン政権が経済制裁を加えたためすっかり冷え込んでいた。それが好転したのは、2001年9月の米同時多発テロ事件がきっかけだった。
隣国パキスタンとのカシミール紛争を抱えるインドは、米同様「テロとの戦い」に力を注いでおり、それに好感したブッシュ 大統領が、シグナルを送っていた。2001年11月、「戦略的パートナーシップ」の基本路線が敷かれることになる。「9・11 テロ事件」からわずか2ヶ月後のことである。両国は具体的な技術援助分野について協議を始めた。
その後、南アジアを取り巻く情勢は一変する。アフガニスタンのタリバーン政権は倒れ、イラクのバグダッドは陥落する。
米『ワシントンポスト』紙によれば、インドのある企業はサダム・フセイン政権と取引があった、という。これがネックとなっていたがフセイン元大統領は拘束される。今月6日にはバジパイ・インド首相とムシャラフ・パキスタン大統領が、和平に向けての共同声明を発表した。米国とインドが合意にまで達した背景には、こうした流れがあった。
英『フィナンシャルタイムズ』によれば、米は中国をけん制するためインドに技術供与する、と分析している。だが、それは 一面に過ぎない。
パキスタンのムシャラフ政権は、米国の意向を受けタリバーン、アルカイーダの掃討作戦を繰り広げている。作戦の的になっているのは、タリバーンの聖地でありビンラーディンが潜伏していると見られているアフガニスタン国境地域だ。こうした 強硬政策の報復で、ムシャラフ大統領は何度もテロ攻撃に遭っている。いずれも辛くも切り抜けたが、いつ暗殺されてもおかしくない。
「ムシャラフ政権に何が起きても、パキスタンをイスラム原理主義の国に後戻りさせてはならない」。こうした米国の強い意向が、イスラム原理主義に対抗するインドへの支援を決めた。
【米は南アジアでモンスターを育てるのだろうか】
核実験に成功したとは言え、それを兵器として使うには先進国の技術を要する。まして敵国を攻撃するためにはミサイルも開発せねばならない。インドのミサイルは射程距離が短く、精度も悪い。パキスタン以外の周辺国にはさして脅威ではない。そこに米国のミサイル技術が供与されたらどうなるか? 結果はアジアの軍事バランスは一変させることになる。
1980年代、米国はイランを抑えるためイラクのサダム・フセインを支援する必要があり、軍事援助を惜しまなかっ た。「サダムというモンスターを育てたのは米国だ」と指摘されるゆえんである。
米を代表するミサイルメーカー「レイセオン社」の重役が、バグダッドの王宮でサダムと握手する場面(アーカイブ映像)が、時々テレビで紹介される。今度はインドで同じ場面が再現されるのだろうか。マスコミはイラクにばかり目を捕らわれていて「米国が南アジアでモンスターを育てるおそれがある」と指摘することを忘れてはいまいか。
前段の米ミサイルメーカー「レイセオン社」の重役とは、ラムズフェルド米国防長官である。
◆参照
米『ニュヨークタイムズ』、『ワシントンポスト』
英『フィナンシャルタイムズ』
インド『アッサムトリビューン』
パキスタン『ネーション』などの各紙より
(田中龍作)