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米英軍によるイラク占領を受け、中東政治に大きな地殻変動が起きている。米国にテロ支援国のレッテルを張られていたリビアが大量破壊兵器の廃棄を宣言、対米強硬派の最右翼だったシリアとイランもそれぞれ親米国トルコ、エジプトに急接近し、米国との関係改善を真剣に模索し始めた。「中東の民主化」を掲げる米国と、イラクの「二の舞」を恐れるこれら専制国家の思惑は、対イスラエル関係やパレスチナ問題にも波紋を投げかけている。【エルサレム樋口直樹】
「リビアの(最高指導者)カダフィ大佐やシリアのアサド大統領、イランの聖職者らは、米軍に捕らえられた哀れなフセイン元イラク大統領の姿に将来の自分たちの姿を重ね合わせたに違いない」。ヘブライ大学エルサレム研究所所長のバルシマントフ教授(中東政治)は、イラク戦争後のカダフィ大佐らのひょう変ぶりをこう解説する。
01年9月の米同時多発テロ以降、圧倒的な軍事力に「テロとの戦い」という錦の御旗を加えた米ブッシュ政権の前に、これを抑止する勢力は存在しない。仏独露3国でさえイラク戦争を阻止できなった現実を見せつけられ、リビアやシリア、イランは米国から「次はお前だ」と指されないよう懸命の生き残り策に打って出たというわけだ。
昨年4月にイラクの首都バグダッドが米英軍の手で陥落すると、米国はすかさずシリアの化学兵器保有疑惑やイランの核開発問題を激しく非難し始めた。これに先手を打ったのがリビアだった。カダフィ大佐は同月末にはパンナム機爆破事件(88年)の遺族補償を表明、9月には国連安全保障理事会から経済制裁の解除を引き出した。
昨年12月14日、変わり果てたフセイン元大統領の拘束の姿が世界中のテレビに映し出された直後、イランは国際原子力機関(IAEA)の抜き打ち査察を認める追加議定書に署名。リビアは大量破壊兵器の廃棄を宣言した。今年に入るとアサド・シリア大統領が同国の大統領としては初めてトルコを訪問。同じ日、イランはエジプトと25年ぶりの国交回復で合意したと発表した。シリアとイランが、親米アラブ・イスラム諸国を通じ対米関係の改善を必死に模索していることは明らかだ。
リビアやシリア、イランの対米改善の行方について、バルシマントフ教授は「これらの国の今後の行動と、ブッシュ米大統領が再選に有利になると考える選択などによって左右される」と見る。
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こうした動きは対イスラエル関係やパレスチナ問題の行方にも影響を及ぼしている。今月6日、イスラエル放送は同国の外務省当局者とリビア代表団が先月下旬、パリで極秘に接触していたことを特報した。リビアはイスラエルの破壊を叫び、パレスチナの大物テロリストをかくまっていたこともあるだけに衝撃は大きかった。シャローム・イスラエル外相は「テロ組織への支援を止め、大量破壊兵器を廃棄するなら、リビアと交渉する用意がある」と同国との関係改善に前向きな姿勢を見せている。
また、反イスラエル闘争を続けるパレスチナ武装組織やイスラム教シーア派武装組織ヒズボラを支援してきたシリアも、米国の矛先をかわすにはイスラエルとの関係改善が不可欠とみている。アサド大統領は先月初め、イスラエルとの和平交渉再開を求める考えを表明。00年1月以来途絶えている和平交渉が動き出す可能性も出てきた。
これに対し、イスラエル側の反応は真っ二つに割れている。外務省や軍情報部など積極派は「米国の圧力下にあるシリアから大きな譲歩を引き出すチャンスだ」(ネタニヤフ財務相)と主張するが、シャロン首相やモファズ国防相ら消極派は「シリアの申し出は米国向けパフォーマンスに過ぎない」と一蹴。交渉再開の条件として、シリアが同国内に拠点を置くパレスチナ武装組織を解体するよう迫っている。
シャロン首相は孤立化するパレスチナ自治政府の足元を見るかのように先月中旬、自治政府が数カ月以内に武装組織の解体に着手しなければ、ヨルダン川西岸に新たな境界線を設け、パレスチナ人居住区を一方的に分離するとの構想を明らかにした。武装組織との停戦交渉に失敗した自治政府は退路を断たれ、「かつてない苦境に追いつめられている」(パレスチナ人ジャーナリスト)。
[毎日新聞1月14日] ( 2004-01-14-23:09 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20040115k0000m030128000c.html